【町中華】ガツンと響くラーメンと感動の鴨ごはんを味わえる店/大塚・世界飯店(東京)

文=昼間たかし
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 大塚は不思議な街である。駅ビルもリニューアルされてしばらく経ったというのに、いまだに駅前には昭和の香りが漂っている。都電が走っているからだろうか。山手線の駅なのに、どこか時代に取り残された空気が安心感を与えてくれる。

 夜も賑やかな通りからは少し離れた都電に沿った細い道。地元民でもなければ歩かないような道に面して「世界飯店」はある。

 この店はいわゆる町中華とは、少し赴きが違う。まず看板が派手派手しい。町中華というと大抵は看板が赤か黄色の一色というところが多い。それが常識だとするとここはカラフル過ぎる。もしかして町中華ではなく、そこそこの値段のする中華料理店なのではなかろうか。そんな不安もよぎって、おそるおそる扉を引く。

「いらっしゃいませ」

 間違って、勝手口から入ってしまったのか? 目の前のテーブルから立ち上がって声をかけてきたのは、店員ではなく制服姿の少女。向かいにはチェック柄の長袖シャツを着た中年男性が座っている。机の上には乱雑にペットボトルや、なにかのプリントが置かれている。

【町中華】ガツンと響くラーメンと感動の鴨ごはんを味わえる店/大塚・世界飯店(東京)の画像2世界飯店
東京都豊島区北大塚2-14-8 日米ビル 1F
営業時間:11:00〜25:00

 あたりを見回すと、やっぱり乱雑に積もった箱。どう動けばよいのか迷っていると奥から中年女性が「こちらへどうぞ」と案内してくれる。うなぎの寝床のようになった奥が広めの客席になっていた。先客は1名のみ。広々とした4人掛けテーブルへ案内してくれる。

町中華だと思ったら、ベトナム料理も!?

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 さて、なにを注文しようかと思いメニューを拡げる。二冊に分かれたメニュー。なるほどアルコールのメニューも多いのかと思いきや、片方は中華料理ではなくベトナム料理。フォーであるとか、スタンダードなメニューとアルコールが一通り揃っている。

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 なるほど店の名前は「世界飯店」。世界の料理をメニューに加えることを目指そうとしているのか。とはいっても、メニューは中華とベトナムだけ。なら「亜細亜飯店」とかにしたほうがよさそうだが。

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 中華料理のメニューも興味深い。メニューの表紙には、さっきのチェックシャツの男性が料理人姿で北京ダックを手にばっちりとポーズを取っている写真が。店内にいる男性は控えめに見えるのに北京ダックを手にした姿は自信満々、そのギャップが極めて興味深い。

 迷った末に注文したのは「世界ラーメン」。店のあちこちに大きくアピールされているし、野菜増しが可能だの「ラーメン二郎」のようなスタイルが気になったからだ。そして、プラスでライスは「鴨ごはん」という、これまたほかでは見ないものをセレクト。なお、「世界ラーメン」の横には真冬にも拘わらず「冷やし中華」と書いた紙も貼られていたり情報量はとにかく多い。

 注文を聞きにきたのも、やっぱり先ほどの少女。厨房に注文を伝えると、筆者が入ってきた時とは別のテーブルに座る。そこには参考書やノートが拡げられている。なるほど、下校後はこうやって両親を手伝いながら勉強も欠かしていないということか。とはいえ、両親を手伝わなければならないほど混雑しているわけではなさそうなのだが。

 厨房からはなぜか、揚げ物の音。それが止んでからしばらくしてラーメンと鴨ご飯が運ばれてきた。

「揚げ物の音」の理由が判明

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 ラーメンは想像の斜め上をいくものだった。パッと見は中華からは縁遠い「ラーメン二郎」風。ところがスープを一口飲むと動物性の出汁に魚介が混じったような複雑な味。ガツンと響く味のスープは麺によく絡む。麺は太麺と細麺を選べたので太麺にして正解だったが、それにしても量が多いのも嬉しい。

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 ここにさらに感動を与えるのは鴨ご飯。鴨肉を焼いているのではなく油で揚げている。以前、台湾を旅行した時に現地の屋台で売っていた鴨肉そのままの味である。なるほど、ここは東シナ海一円の味を制覇できる店なのか。そうと思うと「世界飯店」の名前も過剰ではないと納得する(余談であるが、入居しているビルは「日米ビル」である)。

 ラーメンを啜りながら、あたりを見回すとひと仕事を終えた少女は熱心に机に向かって勉強をしている。店を出るときにふと机の参考書に目がいったが、そこには大学の文字が。両親の店を手伝いながら、懸命に働く姿を見て大学に進む少女は、同年代と比べてもお金のありがたみや勉強ができることの幸せを感じることができるだろう。

 娘を大学にやって、それから、この年季の入った店はあと何年続いていくのだろうか。なぜか誰かの家に来てしまったような感覚は、入口の席が一家のリビングっぽくなっているからではない。

 ご馳走さまでした。

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