槇原敬之を「人生もう終わり」「反省していない」と断罪する意義を問う

文=wezzy編集部
【この記事のキーワード】
槇原敬之を「人生もう終わり」「反省していない」と断罪する意義を問うの画像1

「GettyImages」より

 槇原敬之が覚せい剤取締法違反の疑いで逮捕され、またも薬物依存者への偏見や誤解を助長する報道が増加している。

<息子の人生も私たち一家ももう終わり…>

 こう煽るのは、「女性自身」(2020年3月3日号・光文社)だ。槇原敬之の父親・博之さんを取材し、槇原の社会復帰は絶望的だと強調するものであった。

<博之さんはいま、槇原容疑者への“深い失望!に打ちひしがれている>
<「もう息子の人生は終わりだと思います。私らもここには住んでいられなくなりそうです……」 “一家離散の危機”に無念の思いを明かす博之さん>
<父を一転して絶望の淵にたたき落とした2度目の逮捕>

 さらに「反省が感じられない」と猛批判したのは、18日放送の『バイキング』(フジテレビ系)。

 槇原敬之逮捕について大々的に特集したが、スタジオ出演者らは「反省が感じられない」と口をそろえる。逮捕された槇原の曖昧な供述に、坂上忍は罪を軽くするためではないかと示唆。

坂上<常習している方って、法律的なことも詳しくなっちゃっているから、ぼやかしといた方が、この場に及んで少しでも罪を軽減できるんじゃないのかっていう知恵がついてるんでしょ? という見方もあるんですよ>

 また高橋真麻も次のように憶測を述べている。

高橋<薬に対するハードルが高くないのかな? これがいけないものだってわかってたら、きちんととどのくらいの期間でどのくらい使ったかは覚えてると思うんですよ>

 番組では、槇原が起訴されても執行猶予がつく可能性が高いとし、586人を対象としたアンケート調査「薬物事犯の厳罰化は必要か」を発表。結果、65%もの人が「厳罰化は必要」と答えたそうだ。

 「厳罰化は必要」とする理由としては、「厳しくすることで薬物使用の抑止力になる」「最初に薬物に手を出した責任は当然本人にあるもので罰則を厳しくするには社会の規律のためにも必要」といった意見が紹介された。

 番組出演者も7人中6人が「厳罰化は必要」と答え、高橋真麻は刑務所の居心地も悪くすべきだと語気を強めた。

高橋<刑務所内が居心地良かったら意味ない>
高橋<(受刑者が)「こんな思いするくらいだったらもう二度と犯罪は起こさない」っていうぐらいの環境にしといてくれないと>

刑務所でつらい思いをすれば薬物を断ち切れるか

 しかし薬物事犯の厳罰化は、薬物使用の抑止にはならないという意見もある。出演者の中でただひとり厳罰化に反対した国際弁護士の清原博氏は、治療にコストをかける社会にシフトしていくべきだと説明した。

 刑務所では根本的な治療をしないため、出所後に再び薬物に手を出す可能性が高い。抑止の効果が期待できない厳罰化にコストをかけるのであれば、根本的な治療に税金をつぎ込むことに集中した方がよいという趣旨だ。

 後述する「薬物報道ガイドライン」の作成に携わっている松本俊彦氏(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長)も、再犯者が出る背景として「薬物依存に陥った人たちの“回復”に、刑罰は役立っていない可能性がある」と指摘している。

薬物犯罪で逮捕された芸能人へのバッシング、薬物治療を妨げる危険性/松本俊彦先生インタビュー

 2019年の上半期、芸能人が「薬物」の使用や所持により逮捕される事態が相次いだ。3月に逮捕されたピエール瀧さんは20代の頃から大麻やコカインを、5月に…

槇原敬之を「人生もう終わり」「反省していない」と断罪する意義を問うの画像2
槇原敬之を「人生もう終わり」「反省していない」と断罪する意義を問うの画像3 ウェジー 2019.08.26

 今回の槇原敬之のケースだけでなく、ピエール瀧、田口淳之介、沢尻エリカが違法薬物によって逮捕された際も、本人の人格を否定したり、薬物依存に陥った原因を憶測で語る報道が多発した。

 このような報道は、現在治療に励んでいる薬物依存症患者から社会復帰への希望を奪い、治療を妨げる要因になる。薬物事犯を憶測交じりでセンセーショナルに報道することは、この社会的な問題を悪化こそすれ、解決には導かないだろう。逮捕された容疑者を批判する番組や記事は、視聴者や読者の賛同を得やすいが、それで良いのだろうか。

 最後になるが前述した「薬物報道ガイドライン」の一部を引用する。これは評論家の荻上チキ氏を中心に、松本俊彦氏、上岡陽江氏(ダルク女性ハウス代表)、田中紀子氏(ギャンブル依存症問題を考える会代表)ら専門家が集まって作成したもので、違法薬物事件についてメディアで報じるときに遵守することが望ましいとされる。

 憶測や偏見で薬物依存者をバッシングするのではなく、依存症という病気を正しく理解し、回復を後押しする報道が増えて欲しいという考えがそこにある。

 以下は、ガイドラインで“避けるべきこと”として記されている項目の一部だ。今回の槇原敬之逮捕に関する報道は、正反対のものが多かった。

<薬物依存症であることが発覚したからと言って、その者の雇用を奪うような行為をメディアが率先して行わないこと>
<「白い粉」や「注射器」といったイメージカットを用いないこと>
<「人間やめますか」のように、依存症患者の人格を否定するような表現は用いないこと>
<逮捕された著名人が薬物依存に陥った理由を憶測し、転落や堕落の結果薬物を使用したという取り上げ方をしないこと>
<「がっかりした」「反省してほしい」といった街録・関係者談話などを使わないこと>

「薬物依存症になっても解決策はある!」脅さない薬物乱用防止教育とは/松本俊彦先生インタビュー

 2019年の上半期、芸能人が「薬物」の使用や所持により逮捕される事態が相次いだ。3月に逮捕されたピエール瀧さんは20代の頃から大麻やコカインを、5月に…

槇原敬之を「人生もう終わり」「反省していない」と断罪する意義を問うの画像4
槇原敬之を「人生もう終わり」「反省していない」と断罪する意義を問うの画像3 ウェジー 2019.08.27

「槇原敬之を「人生もう終わり」「反省していない」と断罪する意義を問う」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。