「5G」スタートでも生活は変わらない? 一般ユーザーが受ける影響は

文=A4studio
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「GettyImages」より

 すでにアメリカや中国、韓国で運用開始されている「5G」(第5世代移動体通信システム)。日本でもいよいよ今春に商用サービスが開始する。

 5Gとは、高速大容量・低遅延性・同時多接続を可能にする通信システムのこと。その最高速度は、現在私たちが使っている「4G」と比較して最大100倍もの速さになるといわれている。たとえば、2時間の映画(動画)をたった3秒でダウンロードできるといえば、その速さも伝わるだろう。

「Connect future ~5Gでつながる世界~」(総務省動画チャンネルより)

 5Gは「第二のIT革命」ともいわれているが、実際に私たちの生活にどのような変化が訪れるのかは実感しづらい。そこでスマートフォンの事情に詳しいITジャーナリストの石川温氏に、5Gの登場による生活への影響について聞いた。

石川 温(いしかわ・つつむ)/ケータイ・スマホジャーナリスト
「日経TRENDY」に編集記者として従事した後、2003年に携帯ジャーナリストとして独立。現在は、国内キャリアやメーカーだけではなく、アップルなどの海外メーカーも取材している。著書に『未来のIT図解 これからの5Gビジネス』(MdN刊)がある。石川温のスマホ業界新聞

5Gがスタートしても、私たちの生活に劇的な変化は訪れない!?

 現在の通信規格4Gでも、スマホやパソコンの日常使いにおいてとくに不便やストレスを感じることなくインターネットを利用できているように思うのだが。

「たしかに4Gが主流の現在、表立った課題や大きな不満はないと思います。しかし、今後はさらに大容量のデータを行き来させる機会が増えていくことが予想されているので、安定してデータを流せるようにするため5Gの技術が求められているのです。

 ただしいくら5Gでも、一部でいわれているような現在の“100倍”という速さは出ないでしょう。というのは、2012年頃に登場した4Gも、商用サービスの開始以降少しずつ進化しており、現在は初期の速度から10倍以上は速くなっているのです。5Gの速度は、現在の4Gと比べれば10倍程度となるのではないかと予想しています。加えて注意しておきたいのが、あくまでその数値はスペック上実現できる可能性があるという指標にすぎないため、実際に5Gに接続してみないと、なんともいえないところもありますね」(石川氏)

 しかしだからといって、5Gによって私たちの生活は一変するのだろうか?

「メディアでの盛り上がりに水を差すようで申し訳ないのですが、今は少々“5Gバブル”という印象です。報道によって5Gに革新的なイメージを抱くのは無理もありませんが、実際のところは、今春に5Gがスタートしていきなり生活が大きく変わるということはないと思います。今後10年ほどかけて、少しずつ便利になっていくでしょうね。

 というのも、まず5Gは、対応しているスマートフォンに買い換えなければ利用できません。また、5Gの電波を放出する基地局はまだ全国中に整備されていないので、いつでも・どこでも5Gを使えるというわけではないのです。

 とはいえ、docomo、au、SoftBankの通信大手3社は、5G通信においておそらく使い放題のプランを提供するようになるでしょう。すると、私たちが日々どれだけYouTube動画を観まくっても、月末に速度制限がかかるようなことにはならず、快適に使える環境になるはずです」(石川氏)

5Gはエンタメ、建築、医療分野での活躍も期待

 今春から5Gが開始するとはいえ、いきなり私たちのネットライフが一変することはなさそうだが、将来的にはどういった恩恵を受けられるのだろう。

「スポーツ観戦やゲームのバーチャル体験は、劇的な進化を遂げるのではないでしょうか。たとえばサッカー観戦にVRを駆使すれば、フィールドのさまざまな視点から自由に観戦できるようになり、選手のプレイをごくごく間近で見ているような臨場感を得られるようになる、といわれています。5Gの高速通信によって映像の合成、処理が可能になるので、“臨場感”が重大なキーワードになってくるでしょうね」(石川氏)

 自動車の遠隔運転や、ショベルカーといった重機の無人遠隔操作なども、5Gを利用することで実用化されていくといわれているが……。

「たしかに、自動車の遠隔運転は、5Gの導入によって技術的な進歩が期待できます。ただ、これはまったくの別問題として、5G技術に法の整備が追いつかず、実用化が遅れるということもじゅうぶんに考えられますね。

 建築現場のショベルカーなどの遠隔操作のほうが、実用化への道は近いのかもしれません。5Gは“超低遅延”もウリとなっていまのすで、たとえば操縦者が東京にいながら、沖縄の工事現場の重機をほぼリアルタイムで動かすことも可能になります。タイムラグが発生すると大事故にもつながりかねないのでこれまでは実現していませんでしたが、5Gによって遠隔操作が実用化されていくことでしょう。

 遠隔操作の実用によって効率化も進みます。高度な技術が必要で操縦できる資格所有者がごく限られているような特殊重機でも、ひとりの技術者が午前中は沖縄の現場、午後は北海道の現場で作業をするといったことも可能になるわけです」(石川氏)

 建築現場の人手不足は深刻化していると言われているが、5Gの遠隔操作によってこの問題の解消につながるかもしれない。また、5Gは同じ理由で医療業界からも熱い視線を浴びているという。つまり、地方自治体や被災地などの医師不足問題の解消策として、遠隔医療の実用化も期待されているのだ。

 また、5Gの“超低遅延”という特徴は、エンタメ分野でも大いに活用されるだろう。東京にギタリスト、沖縄にベーシスト、北海道にドラマーと全国各地にメンバーがいても、5Gの映像技術はまるでひとつの場所に集まっているかのようなライブパフォーマンスも可能となる。ミュージシャンのセッションにおいては、コンマ何秒の遅延があるだけで成立しないというのは言わずもがな。4G時代では実現できなかった夢のセッションが見られる可能性もある。

(文・取材=A4studio)

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