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小中学校の給食費無償化はなぜ必要か “無料”ではない義務教育と貧困

文=中崎亜衣
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「GettyImages」より

 大阪府大阪市の松井一郎市長が、市内の公立小中学校の給食費無償化を検討していると、産経新聞が報じ、Twitter上では称賛する声が多く上がっている。なお、実現すれば政令市では初となる。

 学校給食の無償化は、自治体の判断で実施することができる。しかし、実際に無償化を実施している自治体は全国的に見ても少ない。

 文部科学省は2018年7月、平成29年度の「学校給食費の無償化等の実施状況」及び「完全給食の実施状況」によると、全国1740自治体のうち、「小学校・中学校とも無償化を実施」は76自治体(4.4%)、「小学校のみ無償化を実施」は4自治体(0.2%)。

 「中学校のみ無償化を実施」は2自治体(0.1%)、「一部無償化・一部補助を実施」は424自治体(24.4%)、「無償化等を実施していない」は1234自治体(70.9%)で、全国のおよそ7割の自治体が、給食費無償化に未着手だ。

 また、子どもの人数が少なく、規模の小さい自治体のほうが給食費無償化を実施している割合が高いこともわかっている。

 「小学校・中学校とも無償化を実施」している76自治体のうち、71自治体は町村、56自治体は人口1万人未満。児童・生徒数別の自治体構成別に見ても、無償化の対象となる児童・生徒数は、小学校では76自治体中40自治体(52.6%)が200人未満、中学校では76自治体中52自治体(68.4%)が200人未満だ。

 しかし近年では、中核市でも小中学校の無償化を検討する動きが出ている。兵庫県明石市では今年4月より、市内の公立13中学校の給食費を無償化する方針を固めたという。また宮城県名取市でも、同じく今年4月より市内の公立中学3年生を対象に給食費無償化を実施し、将来的には対象を市内すべての公立小中学生に拡大する方針だ。鹿児島県南さつま市では、2017年度から市内の小中学校で実施している。

義務教育でもお金はかかる

 大阪市の検討に称賛の声が上がっているように、給食費無償化を希望する家庭は少なくない。その背景には、義務教育は「無償」のように見えて、実は保護者の私費負担が多いという現状がある。

 小中学校に通う児童生徒の給食費は保護者が負担するのが一般的だが、その他にも学校生活で必要な制服や体操着、上履き、学用品……などを買い揃え、給食費や学納金を支払わなければならない。そのおおよその学費はいくらか。

 文部科学省「平成30年度子供の学習費調査」では、保護者が1年間で負担する具体的な数字(子どもひとり当たり)を出している。

 公立小学校では、学校教育費:63102円、学校給食費:43728円。公立中学校では、学校教育費:138961円、学校給食費:42945円だ。

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小中学校の給食費無償化はなぜ必要か 無料ではない義務教育と貧困の画像3 ウェジー 2019.10.11

 義務教育中の児童を育てる経済的に困っている家庭には、救済措置として自治体が学用品や給食費などを援助する「就学援助制度」もある。「就学援助制度」を利用しても、保護者が義務教育で負担する費用はゼロではないが、奨学金とは違い返還の必要はなく、給食費は実費相当分を支給する場合が多い。

 ただし「就学援助制度」は、自治体ごとに世帯人数や年齢に応じた所得制限がある。たとえば東京都品川区の場合、「就学援助制度」の対象となるのは、<生活保護家庭>と、昨年の所得が<2人世帯:約271~298万円、3人世帯:約324~385万円、4人世帯:約369~451万円、5人世帯:約424~530万円、6人世帯:約474~589万円>となっている。

 経済的に困っている家庭を対象とした制度である以上、所得制限が設けられるのはやむを得ないとしても、現行の「就学援助制度」の一般的な所得制限のラインはかなり低い。

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小中学校の給食費無償化はなぜ必要か 無料ではない義務教育と貧困の画像3 ウェジー 2019.12.22

 「就学援助制度」の対象外となる世帯でも、年間で4万円を上回る学校給食費の負担が重いという家庭はあると考えられる。子どもを“国にとっての宝”というのなら、この給食費に関して公的な援助がもう少しあっても良いのではないか。

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小中学校の給食費無償化はなぜ必要か 無料ではない義務教育と貧困の画像3 ウェジー 2019.08.30
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