Fラン大学でも早慶MARCH並みに合格しにくくなった理由

文=鳥越規央
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Getty Imagesより

入試難化を促す3つの要因

 「予備校模試でA判定だった大学に受からなかった」
 「大学受験がかなり難しくなっている」

 こういった受験生からの声が、数年前から大きくなっています。ある学生の例ですが、国立大学を志望していた受験生が「滑り止め」として受けた私立大学受験をすべて失敗したというのです。その私立についてはA判定だったようです。

 大学受験が難化しているのには、3つの要因があります。

 まずひとつ目は「入学定員管理の厳格化」です。大学が入学定員を大幅に超過して学生を入学させると、私学助成金が交付されないのですが、定員数8000人以上の大規模大学の場合、2015年まではその基準が「定員の1.2倍まで」でした。その基準が2016年から段階的に引き下げられ、2018年は「定員の1.1倍」となったのです。そのため、関東では東洋、法政、関西では立命館、関西、関西学院といった規模の大学で2018年度の場合、前年に比べ約2000人も合格者数を減らしています。

 2つ目は「受験生の超安全志向の高まり」です。合格者数絞り込みの不安から、いわゆる「チャレンジ校」への受験を避け、「実力相応校」の幅を広げ、「合格確保校」として合格確率が相当高いところまで受験するという現象が起きています。

 そのため、「早慶上理」と呼ばれる早稲田、慶應義塾、上智、東京理科や、「MARCH」と呼ばれる明治、青山学院、立教、中央、法政への一般入試の受験者数は低下の一途を辿っています。

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データ出典:河合塾 Kei-Net (2020年は2月14日現在の数値)

 また「成成明学獨國武」と呼ばれる成蹊、成城、明治学院、國學院、武蔵や「日東駒専」と呼ばれる日本、東洋、駒澤、専修も横ばいか微減という状況です。

 かつてこのクラスの大学を受験していた層が、より合格率の高い大学を併願受験するようになったため、前年まで偏差値50前後で合格可能性50%とされていたクラスの大学で難易度が上がるという現象が起きました。

 中でも国士舘大学や東京経済大学の人気学科では偏差値50後半で合格可能性50%と位置付けられるほどの難関となっています。そして、かつては競争倍率が2倍を切り、定員確保もままならなかった大学の中で、大幅に志望者数を増やすところが現れました。 

 その一例を挙げると、私が客員教授を務める千葉県の江戸川大学では、2019年度入試において前年比3倍の受験者数を集めました。そのため競争が激化し、不合格となる受験生も続出したのです。

▼江戸川大学の学部別競争倍率

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データ出典:河合塾 Kei-Net

 その結果、2020年度入試における社会学部経営社会学科の入試難易度は偏差値45に位置付けされました。これは「大東亜帝国」と呼ばれる大東文化、東海、亜細亜、帝京、国士舘とほぼ同等とされる数値です。

 2015年、定員割れの大学は全体の約43%を占めていました。しかし2019年は33%に減少。首都圏にある大規模大学の定員厳格化の影響がこのような形で反映されています。

 入試難化の3つ目の要因は「AO入試、推薦入試の入学枠増加」です。合格者に対する実際の入学者の割合である「歩留まり率」は年度によって大きく推移するため、大学にとって、入学者を定員の1.1倍に見積もる作業は困難を極めます。そこで入学者を早い段階で確保したいという欲求が高まります。そのため、一般入試に先駆けて行われるAO入試、推薦入試によって早期に優秀な生徒の確保を試みるのです。

 大学入学者におけるAO入試、推薦入試による入学者の割合は、2000年は33%でしたが、2018年では44%にも上ります。特に私立大学に限ると51.2%と半数以上の学生がAOや推薦入試による入学者です。

 私立大学としては「早期の受験で優秀な学生を青田買いしたい」「一般入試の歩留まりを見誤って定員超過となるリスクを避けるため、一般入試の枠を狭めておきたい」と考えますし、受験生の保護者としても「早く我が子の進路先を確保したい」「受験回数を少なくして、費用を最小限に抑えたい」という要望があり、AO入試、推薦入試での入学者が増えているのです。

 さらには「指定校推薦」なるものの枠も近年増加しています。「指定校推薦」とは、大学が指定した特定の高校のみを対象とした推薦入試です。「早慶上理」クラスであれば、指定された高校の中でもその推薦枠をめぐる争奪戦が繰り広げられますが、中位校の指定校推薦ではその枠があっても使われないなんていうこともザラだったといいます。しかし、近年の一般入試激化の煽りを受け「枠を使わせて欲しい」と申し出る保護者が多くなったようです。

 AO入試や推薦入試の枠が増えれば、それだけ一般入試の枠が狭まるので、結果として入試の難度が上昇することになるのです。難度が上昇すれば、偏差値の数値が上がり、大学としても見栄えが良くなるという効果もあるようです。

 私立大学の学部別で応募者数の推移を見てみると、2020年度入試で増加しているのは理学、工学、農学系の学部です。システムエンジニアやIT企業への就職を目指す人材の増加の現れと見る向きもありますが、今年度に限って言えば、翌年から実施される「大学入学共通テスト」への畏怖があると考えられます。

 大学入学共通テストに関しては、「ある特定の企業だけに利益供与があるのでは」といった疑惑が持たれていますが、それについては別のところで論じるとして、各教科の出題方式が大きく変わると喧伝されています。

 特に数学の出題方式が大きく変わるのではと予想されています。今年度の大学入試センター試験の数学I・Aでは、その前哨戦ではと思わせるほど目新しい問題が多く出題され、傾向がこれまでと異なるものでした。そのため、浪人して新方式の入試にチャレンジするよりは、今年度中にどこでもいいから合格先を確保しておきたいという心理が働いたものと想像します。

減る受験生、増える大学の行く末は?

 ここまで、近年の大学入試の難化についてデータを交えて紹介してきましたが、なぜこのような施策に及んだのでしょうか。

 文部科学省の表向きの狙いは「地方創生」のようです。東京都、特に23区内にある大学に受験生が地方からも多く受験する傾向にありました。そのため地方の大学では国立、私立ともに受験者、入学者の確保に苦心していました。

 文部科学省はそれを鑑み、23区内にある大学に対して、原則として今後10年間は定員の増加を認めないこととしました。23区内の大学の入学者が減れば、その分が地方に流れ、地域が若者で活性化するという青写真を描いているようですが、本当の目的は違うところにあるといわれています。

 大学の数は平成元年にあたる1989年には約500校でしたが、平成30年の2018年には約800校と300校も増えています。

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データ引用:BUSINESS INSIDER(文部科学省基本調査)*女子の大学進学率は2017年数値。

 しかしご存じの通り、この30年間で18歳人口は約200万人から約100万人と半減しています。大学進学率は24%から50%と増加しているので、それまでは進学を諦めていた層でも大学に進学でき、より高度な教育が受けられる環境が整備されたともいえるでしょう。大学で学ぶ者が増えれば、その学生を教育するための教員の確保も必要となります。

 その人材として、文部科学省という教育に携わる省庁で長年務めてきた方々の英知を、高等教育に活用するための場を作りたかった……というと聞こえはいいですが、要するに文部科学省OBの天下りの受け皿としての大学増設という思惑もあったのではないでしょうか。

 大学入試の難化、来年からの大学入試改革と、受験生にとっては戦々恐々な状況となっていますが、これはただ大学のネームバリューや都心への近さだけで志望校を決めるのではなく、幅広く大学を俯瞰して、いわゆる中位校やそれ以下の大学でも魅力的な研究や教育を施している大学を発見する良い機会になるでしょう。

 さらに言えば、「学び直しの場」として、社会人や定年を迎える人のための門戸を広げる入試制度の充実にも着手してほしいと思います。

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