オリンピックで約8割の企業がテレワークを実施したロンドン、東京は緊急対応できるか

文=鳴海汐
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Getty Imagesより

 新型コロナウイルスの感染拡大が勢いを増している。連日新たな感染者が報告され、26日7時の時点で170名となっている。

 その中には過去2週間の渡航歴がなく感染経路が不明な患者もおり、すでに市中感染が広まっていることが判明。日本中が不安に包まれていると言って過言ではない状況だ。

 新型コロナウイルスは潜伏期間中も感染力を持つ。市中感染しても無症状であれば気づきようがなく、さらにウイルスを撒き散らしてしまうことになる。

 厚生労働省は今後の病床確保のため、感染者は入院して48時間後に検査を実施。陰性ならその12時間後に2度目の検査を行い、その結果も陰性だった場合、退院できると決めた。従来の入院期間12.5日から2日に短縮した形だが、その根拠はどこにあるのだろうか。クルーズ船で陰性だった人たちが下船前にPCR検査をしていなかった事実、中国で回復した人が再度感染したという衝撃のニュースまで飛び込んできた。不安は募る一方だ。

 政府は「不要不急の外出を避ける」よう呼びかけたが、もちろん「会社に行かなくていい」ことにはならない。事業主に対する「テレワークや時差出勤の積極的な取り組み」の呼びかけには強制力がない。総務省によると、日本のテレワーク導入状況は2018年時点で19.1%だ。

 GMOインターネットグループ、ヤフー、ソニー、富士通、武田薬品工業、NECやKDDIなどの大手企業は、新型コロナウイルスの影響を受けて、社員に柔軟な働き方を推奨。テレワーク、時差出勤、会議の禁止、などである。電通も社員に感染者が出たことを受けてテレワークに切り替えた。丸の内でも感染者が出ており、大手を中心にテレワークはさらに拡大するだろう。

 だが資料やデータの持ち帰りができない、あるいは中小企業でITの普及が進んでいない、営業職のように在宅では仕事にならない職種もある。今も多くの労働者は職場へ通勤し、働いている。

 新型コロナウイルスの蔓延で急速に危機感が高まる日本だが、もともと今夏には東京オリンピックが予定されており、五輪開催期間中の首都圏大混雑を見越してテレワークの普及を進めてきた。東京都が行った約2400社対象のアンケートでは、「大会期間中のテレワーク実施を検討している」が44%だった。しかし実施の検討と実現との間には大きな隔たりがある。

 2012年のロンドンオリンピックでは、ロンドンの約8割の企業がテレワークを実施したという。そこにヒントがあるかもしれない。

ロンドンオリンピック「テレワーク約8割」の理由

 2012年に開催されたロンドンオリンピックでは、ロンドン市内の企業の約8割の企業がテレワークを実施している。

 まずロンドンでは、公務員が自宅勤務をするという報道が大会の2カ月前にはあったのだが、それに続こうと考えた企業はあまり多くなかったようだ。

▼参照:
MailOnline
CBR

 今、日本でも農林水産省や総務省が一部の職員のリモートワークや時差出勤を拡大すると報じられているが、役所が実施したところで一般企業が追随するほどの影響力はもたないのかもしれない。

 ロンドンに出向き視察した経済産業省の担当者が作成した資料には、「テレワークは、ロンドンに拠点を持つ企業の経営者が大会期間中の営業について危機感を感じるようになった大会直前に普及。日本でも国民が自分の問題として考えるようになれば普及するのではと意見をいただいた」とある。

 この危機感というのが、朝・夕のピーク時に地下鉄乗車30分待ちという想定が出たことにある。そのためロンドン交通局が企業に呼びかけて、「オリンピック開催から1週間の間に約8割の企業・政府機関がリモートワークを実施」したというから、実際の混雑を経験してから慌ててテレワークにシフトした企業も多かったことだろう。つまり緊急の対応策だった、ということになる。

 日本の場合も、もし東京五輪が無事開催され、大混雑となった場合に、やむを得ずテレワークに切り替える企業が溢れる可能性はある。しかし今、新型コロナウイルスという不測の事態に見舞われている以上、東京もロンドン同様の緊急対応をすべき時だろう。

 ちなみに、日本よりさらに深刻な状況にある中国の北京市では、「新型コロナウイルス流行の影響が特に深刻な企業がウイルス流行の影響を受けて、リモートワーク用の事務機器やテレビ会議システムなどを調達する際、契約額の50%以内、最高20万元(約320万円、1元=約16円)までの補助金を支給する」とある。日本でもそういった補助があると多少は違うかもしれないが……。

▼参考:
日本貿易振興機構(ジェトロ)

 新型コロナウイルスの感染拡大は、いくらイベントを自粛しても、満員電車が解消されないことにはどうにもならないとの見方は根強い。感染者数が増え続ければ、経済的な打撃がさらに膨れ上がることは確かだろう。国民の健康を守るためにも、経済基盤の崩壊を食い止めるためにも、この社会の「働き方」について政府による判断が必要な段階に来ているのではないのだろうか。

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