人気ブロガー「コロナウイルスの記事書けば読まれる」 情報過多のリスク

文=宮西瀬名
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Getty Imagesより

 新型コロナウイルスに関する報道が連日続き、不安を抱える人は多いだろう。一方でこの非常事態を商機と捉えた儲け話の提案もあるから注意が必要だ。

 23日、Twitterのフォロワー数20万を超える人気ブロガー・マナブは、「ブロガーにとってチャンス」だと投稿した。

<いちおう書くと、現在はブロガーにとってチャンスですよ。言うまでもなく、コロナです。 初心者ブロガーなら、例えば「コロナウイルスに関する必読記事10選」とかを書けば、かなり読まれやすいはず。もしくは、コロナに関する海外ニュース翻訳など。読まれる記事を書きたいなら、時代の空気を読もう>

 この投稿には、「これからブログを書こうと思っているので参考にします!」と素直に受け止めるリプライもあるが、倫理的な観点からの批判も多い。

 しかしそもそも初心者ブロガーが「コロナウイルスに関する必読記事10選」を書いたところで、本当に「かなり読まれやすい」ページになると言えるのだろうか?

「新型コロナウイルス」不安煽るYouTube動画

 トレンドブログの作成者にとって、悲惨な事故や事件は格好のネタでしかない。テレビで広く報じられている事件であればネット検索数も増えるためなおさらだ。とはいえ、「コロナウイルスに関する必読記事10選」を執筆してもアクセスを稼げるかどうか。

 2016年に発覚した、DeNAが運営する医療健康情報サイト「WELQ(ウェルク)」問題。「WELQ」には医療の素人であるライターによる、「肩凝りは幽霊が原因のことも」「風邪には家系ラーメンが効くかも」といった記事ページが複数あった。以降、GoogleはGoogle検索品質評価ガイドラインを強化した。特にYMYL(Your Money or Your Life)と呼ばれる、人々の資産や健康を左右するページに関しては、専門性や権威性、信頼性が重視されるようになっている。

 Googleの2017年12月リリースによれば、<例えば医療従事者や専門家、医療機関等から提供されるような、より信頼性が高く有益な情報が上位に表示されやすく>なった。実際、新型コロナウイルスに関する情報を得るべくいくつかのサジェストキーワードを用いてGoogle検索をかけると、厚労省のページや感染症専門医の執筆記事などが上位に表示される。

 しかし一方で、YouTubeには武漢市内を散策する動画や、中国各地で“新型コロナウイルスに苦しむ人”を撮影した動画などが多くUPされ、視聴回数を稼いでいる。

お湯を多く飲めば除菌できる?

 また、Google検索ではなくSNSをメイン情報源とするネットユーザーも少なくない。現在、ネット上には「新型コロナウイルスは耐熱性に乏しいため、お湯を多く飲むと予防できる」といったデマ情報も広まっている。少し前には、「新型コロナウイルスにはアルコール消毒は効果がない」というツイートが拡散された。

 後者については厚生労働省の公式Twitterアカウントが明確に否定している。

<【ご注意ください!】#新型コロナウイルス 予防にアルコール消毒は効果がないという情報が広がっていますが、これは誤った情報です。厚生労働省では、咳エチケットや手洗い、うがいなどと並んで、『アルコール消毒』を行っていただくよう、国民の皆さまにお願いしています>

 さらに医療ジャーナリストの伊藤隼也氏が2月23日、<大阪で原因不明肺炎が7000件も出ている>とTwitterに投稿。

 これは産経新聞に掲載された大阪健康安全基盤研究所の奥野良信理事長へのインタビュー記事のリンクを張り、記事内の「しかし中国からの観光客が多い大阪や京都で爆発的な感染拡大は起きていない」という部分を引用したうえでのツイートだ。

 だが「大阪で原因不明肺炎が7000件」の根拠は示されておらず、伊藤氏は当該ツイートを削除。真偽不明で衝撃度の強いツイートは拡散しやすく、おおもとのツイートが消えても「~らしい」という語尾で伝播していく。

 そもそも新型コロナウイルスの全容はまだ解明されていない。重症者や死亡者が出ていることから恐怖心を抱くと同時に、政府や厚労省の情報発信への不信感を募らせても不思議ではない。ただし他方で、その恐怖や不安につけこんで不確かな情報を発信し、儲けようとする輩もいるのだということは認識しておきたい。

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