アパレル社長「セクハラの事実は認定できない」のに辞任の不可解

文=宮西瀬名
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「GettyImages」より

 ファッション「アースミュージック&エコロジー」などを展開する株式会社ストライプインターナショナル社長の石川康晴氏が、複数の女性社員やスタッフにセクハラ行為をしていたとの報道から数日後の3月6日、同社は石川氏の辞任を決め発表した。

 朝日新聞の記事によると、石川氏による女性社員へのセクハラ行為をめぐり、同社は2018年12月に臨時査問会を開いていた。同社の社外取締役や社外監査役、弁護士が出席した査問会では、15年8月~18年5月までに、石川社長が女性スタッフを深夜にホテルのバーに呼び出した件などが4件報告された。中には「女性スタッフをホテルに呼び出し、本人の同意のないままわいせつ行為に及んだ」と性犯罪レベルの行為もあったという。

 査問会の資料には、これらの報告を裏付ける石川氏が女性社員をホテルに呼び出す際のLINEのメッセージや、「無理やりわいせつな行為をさせられた」という被害女性の聞き取り記録などもあり、石川氏は食事やホテルに誘ったことを認めたという。しかしその時点で石川氏への処分は特になく、厳重注意のみ。なぜこのような判断になったのだろうか。

 同社は3月5日に自社サイトに「セクハラの事実は認められなかった」として以下の声明を出している。

<今般報道されている件につきまして、2018年12月13日に当社臨時査問会が開催されましたが、私、代表取締役社長石川康晴に関しセクシュアル・ハラスメントの事実は認められませんでした 。しかしながら、セクシュアル・ハラスメントと誤解を受ける行為や従業員との距離のとり方等について、厳重注意を受けました。私としては、このことを真摯に受け止めて反省し、今後適正な業務執行に努める所存です>

 また、3月5日に掲載されたWWDの記事内でも同社広報が釈明しているので引用する。

<そこ(査問会)でヒアリングを行ったが、セクハラを受けたという当事者からの申し立てではなく、その名前も分からないという状況だったため、査問会ではこれだけではセクハラの事実があったとは認定できないと判断した。ただし、石川と社員とのLINEでのコミュニケーションなどについては、トップとして社員との距離の取り方が近すぎると査問会から石川に対し厳重注意はあった>

 当事者への事実確認が不足していたとしたら、十分な確認ができるまで追及すべきだったのではないだろうか。そもそもセクハラをはじめとした性被害を訴えることは、当事者にとって非常にハードルが高い。内閣府の調べによると「異性から無理やり性交された際に誰にも相談しなかった」と回答した人は67.5%もいた。

 相談しなかった理由では、「恥ずかしくてだれにも言えなかったから」(38.0%)、「自分さえがまんすれば、なんとかこのままやっていけると思ったから」(30.4%)、「そのことについて思い出したくなかったから」(27.8%)、「自分にも悪いところがあると思ったから」(27.8%)という回答が多い。「恥ずかしいから」、「思い出したくないから」、中には「自分にも落ち度があるから」と自分を責める人さえいる。査問会の判断は性犯罪被害者の心理を全く汲んでいないのではないか。

「日本一女性が働きたい職場」を謳っているが

 査問会以降も石川社長は同社代表として活躍していた。今回の新聞報道とそれを受けた世論がなければ、この先も変わらなかったと考えられる。セクハラLINEなどの証拠が報じられなかった場合、セクハラや性暴力を受け苦痛を負う女性社員はまだ増え続けていたかもしれない。騒動が社外に知られる所となってからの退任、これは不誠実としか言いようがないだろう。

 さらに石川氏は、政治的、経済的、社会的など様々な面で男女共に責任を担うべき社会“男女共同参画社会”の実現を目指す、内閣府が設置した会議“男女共同参画会議”の議員を務めていた。現在は同会議の議員を辞職する意向を示しているようだが、石川氏を選出した政府側の責任も重い。

 株式会社ストライプインターナショナルのwebサイトには、「日本一女性が働きたい職場」を自負しているとの文言がある。

<お客様をワクワクさせる質の高いサービスを生み出し、満足いただく。そのサービスを生み出すために、社員に満足してもらう。写真満足、お客様満足のどちらも向上し続けるために、ストライプインターナショナルは様々なしくみを用意しています>

<日本一女性が働きたい職場。私たちの最大の財産は人材。そしてその人材の約9割は女性で占められています。結婚や出産、育児、両親の介護などで、意に反した退職を迫られることのないように、実際に女性社員の意見を聞きながら、さまざまな支援制度を整備しています>

 しかし査問会で石川氏の蛮行が明らかになっても、それを許容していた同社が「日本一女性が働きたい職場」とは到底言えないだろう。

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