「消費税0%」「中小企業へ補償」コロナ不況からいかにして脱するか自民党有志が提言

文=宮西瀬名
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「GettyImages」より

 新型コロナウイルスが猛威を奮い、世界経済に大打撃を与えている。日本でも観光・飲食業を中心に収益減は避けられず、イベントやコンサートなども軒並み中止になっており、経済的な影響は計り知れない。

 大規模な経済対策が求められる中、自民党の有志若手議員が11日、新型コロナウィルスによる経済への影響を抑制する政策をまとめた提言を西村康稔経済再生相に手渡した。その提言は以下の内容となっている。

・30 兆円規模の補正予算を編成し、財源には躊躇なく国債を発行してそれに充てること。なお、2025 年のプライマリーバランス黒字化目標は当分の間延期すること。

・被雇用者に対しては十分な休業補償をするとともに、事業者、特に中小企業及び小規模事業者(個人事業主を含む)に対しては、失われた粗利を 100%補償する施策を講ずること(特別融資だけでは不十分)。安心して休業できることは、有効な防疫対策にもなる。

・消費税は当分の間軽減税率を 0%とし、全品目軽減税率を適用すること(消費税法の停止でも可)。なお、消費税の減税のタイミングとして6月を目指し、各種調整を速やかに行うこと。

・従来から存在するあらゆる制度も活用し、資金繰り支援等企業の廃業防止、国民の不安を払拭するために全力で取り組むこと。

・国土強靭化、教育・科学技術投資、サプライチェーンの再構築、特定国依存型のインバウンドの見直しなど、内需主導型の経済成長を促す政策を検討すること。

 「個人事業主などの損失を100%補償」「消費税0%」など大胆な施策が並び、ネット上では大きな関心を集めている。有志の中心メンバーである安藤裕議員は3月12日の『深層NEWS』(BS日テレ)に出演し、提言についてさらに詳しく解説した。その内容をまとめておきたい。

「増税ではなく国債発行を」

 まず大前提として、日本はコロナショック以前から深刻な不況に差し掛かっていた。日本の10月~12月のGDPは年率マイナス7.1%という厳しい数字になっていたのだ。安藤氏は「本来、1月からは回復軌道に乗らなくてはいけない時期」だったというが、そこを直撃したのがコロナショックというわけだ。

 では1つ目の提言である「30兆円の補正予算の編成」だが、その財源はどうするか。「財源は国債で構わない」と断言する。「東日本大震災の時、『私は復興は国債でやる』と思ったんですよ。でも、増税した。(今回は)国民に負担をかけない形でやらなければいけない」。

 東日本大震災の復興支援の財源として、我々は2012年から所得税や住民税などに上乗せされる“復興特別税”を納めている。しかし増税を重ねるばかりでは景気は到底回復せず、痛みを増していくばかりだ。

 一方で国債発行には慎重派の声も大きく、ハイパーインフレも懸念される。このことについて安藤氏は杞憂だと捉えているが、それはなぜか。財務省は、「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」、「財務省は日本のような先進国で自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。ハイパーインフレも0に等しいと見解を示している」と明言していることがその理由だ。安藤氏は、自国通貨建て国債を発行することの安全性はすでに証明されており、堂々と国債を出して緊急対策に当てるべきだと話した。

借金をしても返せるあてがない

 被雇用者への休業補償と、中小企業及び小規模事業者(個人事業主を含む)に対する補償についてはどうか。

 新型コロナウイルスの拡大防止のために、事業の縮小をやむを得なくなった事業者は少なくない上、子どもの休校対応などで仕事を休まなければならなくなった非正規雇用者もいる。そうした層への支援は必須だ。安藤氏は「十分な給与を保証をし、『休んでも大丈夫』という環境を作る必要がある」と主張する。

 政府の一斉休校要請に多くの自治体が応じたが、仕事を休んだぶん収入が減少する働き方をしている親には死活問題となった。NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」が保育園児や小学生を中心に18歳以下の子どもがいる保護者を対象に実施した調査によると、休校対応により収入が「減る」という回答は43.4%にのぼり、最悪なことに「なくなる」(5.0%)ケースさえある。

 また、売り上げ減少を免れない事業者への緊急対策として政府は特別融資を打ち出したが、安藤氏は「融資ではいけない」と提言する。「事業者の皆さんは『ここで借金を膨らましても返済できる自信がない。それなら廃業する』と考えてしまう。政府が自粛を呼びかけ、国民のみなさんが新型コロナウイルスの蔓延抑制に協力してくれているのだから、それで被った損失を『借金をして後から返してください』というのは酷」。

 東京商工リサーチの調べによれば、新型コロナウイルスの発生で「企業活動にすでに影響を及ぼしている」と答えた企業は54.8%。「今年(2020年)2月の売上は前年同月を「100」とすると、どの程度でしたか?」という問いに「100以上」と回答したのは32.3%にとどまっており、前年同月割れという危機に陥っている事業者は少なくないようだ。

年収200万~300万でも年間20万~30万円の消費税負担

 もっともインパクトの強い提言は、「消費税0%」だろう。

 昨年10月の増税により消費税率は10%になった。安藤氏は「年収200万~300万円でも消費税を年間20万~30万円払っている」とし、消費税0%にすることで「どの家庭にも20万円以上の現金を配ることと同じ効果がある」と解説。

 ちなみにエコノミストの永濱利廣氏は全国商工団体連合会のホームページにて、消費税10%の場合の4人家族の年間負担は34万6000円になると試算している。消費税をなくすことで現金給付と同じ効果があるとすれば、確かに景気対策になり得るだろう。

 しかし麻生太郎財務相は13日の閣議後の記者会見で、「一律減税しても景気刺激策にはならない」と慎重さを求めた。10日の参議院財政金融委員会では「景気対策として減税が一案というのは世界の潮流。反対するつもりはない」と消費減税への前向きな姿勢を示唆していたにもかかわらず、だ。消費増税は財務省の悲願であったことを考えると、期限を区切ったとしても「消費税ゼロ」のハードルは高いか。

 提言の最後の一つは、内需主導型の経済成長を促す政策の検討だが、グローバル化が進みインバウンド需要が高まったことが、結果的にコロナショックの経済的被害を途方もなく拡大させているということへの異論はないだろう。国内での消費を促すためにも、やはり「消費税ゼロ」は必要な施策ではないだろうか。

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