「新型コロナウィルス」関連の助成金に期待してはいけない理由

文=川部紀子
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生き延びるためのマネー/川部紀子

 ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子です。

 世界中に新型コロナウィルスが拡がりつつある中、日本国内の感染拡大防止の措置として、全国すべての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校について、臨時休業を行うよう政府の要請がありました。

 突然の休校措置を要請する発表で、働く保護者からは困惑と不満の声が続出していました。そんな中、2020年2月29日に行われた記者会見で安倍総理大臣は「保護者の皆さんの休職に伴う所得の減少にも、新しい助成金制度を創設することで、正規・非正規を問わず、しっかりと手当てしてまいります。私が決断した以上、私の責任において、様々な課題に万全の対応を採る決意であります」と発言。この後、助成金の対象者の拡大も発表されました。

 この言葉を受け、仕事を休むことになった保護者などから安堵の声と共に誤解が散見されましたので、2020年3月16日現在までの情報から解説していきたいと思います。

助成金どころか、高い可能性で「収入ゼロ」

 安倍総理の会見を受け、「いくらくれるの?」「幼稚園児の保護者はダメなの?」「フリーランスはもらえないの?」といったことを気にしている人も多いと思います。休校の影響を受けた保護者にとっては、自分が助成金を受け取れる対象か、受け取れるならいくらかが重要な問題でしょう。

 3月1日、加藤厚生労働大臣が会見でこう述べています。

「保護者が休む場合については、非正規で働く方も含めて、賃金を支払った企業に対する助成金を創設することにしております。」

 つまり、助成金が振り込まれるのは「企業」の口座なのです。加藤大臣の会見を確認せず、安倍総理の会見だけで情報が止まっていれば、誤解が生まれるのも無理はないかもしれません。

 では、休校に伴い仕事を休んだ保護者に対し賃金は支払われるのでしょうか? この答えは、「企業による」となります。

 労働関連法の大原則として「ノーワーク・ノーペイの原則」があり、企業は、仕事を休んでいる労働者に対して、賃金を支払う義務は一切ありません。

 新型コロナウィルスの影響で業績が右下がりとなる可能性のある企業の場合、法律上出さなくても問題のない賃金を、休んでいる従業員に支払うことができるのでしょうか。そう考えると、「収入ゼロ」の可能性は低くないと考えられます。

 「助成金があるのだから何とか払ってほしい!」と考える保護者もいるようですが、それを決めるのは企業です。対象保護者に支払った賃金全額(最大8330円/日)が助成金として戻ってくるとは言え、一旦賃金を支払った後には、書類等を整備し申請手続きを行い、審査を受ける必要があります。

 審査が通れば後日政府から企業の口座に助成金が振り込まれますが、申請が殺到し、数か月待たされることも大いに考えられます。それ以前に、審査に通らない可能性もあるのです。その一連の流れに耐えうる資金力やマンパワーなどが、はたしてお勤めの企業にあるのか、という問題になってくるのです。

 これらが、助成金どころか、高い可能性で「収入ゼロ」と考えるべき理由です。

 パートやアルバイトなど非正規雇用の保護者も対象とされていますが、同様の理由で休んでいる保護者に支払うことができる企業ばかりではありません。

 こうなると、もっとも確実な収入は、ご自身に既に付与されている年次有給休暇となるでしょう。

個人事業主・フリーランスが守られるのは奇跡的

 創設されたこの助成金ですが、根拠となる法律は雇用保険法ですので、本来の財源は労災保険事業や雇用保険事業のための労働保険特別会計になるはずです。

 通常、正規雇用労働者は毎月雇用保険料を支払っています。企業は労働者の倍の保険料を払い、さらに労災保険料も払っています。

 このことを考えると、パートやアルバイトなど非正規雇用で労働時間が短く、雇用保険料を払う対象外の労働者は、この助成金の対象保護者にならないだろうと考えましたが、対象とのことです。というのも労働保険特別会計ではなく、別の財源(一般会計)からお金を調達することになったのです。そのため保護者は両親に留まらず、休校に伴い仕事を休むことになった祖父母、親戚、里親などに拡大されています。

 安倍総理の言うところの「雇用の維持」を考えると、雇用保険料を払っていないとはいえ、雇用されている人は全て対象となるのかな、との解釈ができるかもしれません。

 では、個人事業主・フリーランスはどうでしょう?

 「フリーランスには払わないのか!」という怒りの声をあちこちで見聞きしました。

 雇用保険法に基づく助成金が、雇用保険法と何の接点もない個人事業主・フリーランスに本来支払われるはずはありません。

 雇用されている労働者であっても、先述したように企業から1円ももらえない可能性もあるわけですから、個人事業主・フリーランスに助成金を払ってしまったら、雇用保険料を毎月払っているのに1円ももらえない正規雇用労働者が不憫でなりません。

 後日、菅官房長官から、個人事業主・フリーランスには「経営相談窓口の設置や日本政策金融公庫などによる緊急貸し付け」することが発表されました。SNSなどでは、給付型でないことに対し怒りのコメントがあふれていました。

 何か「別のかたち」で個人事業主・フリーランス保護者が救済されることは素晴らしいのですが、雇用保険法の助成金であるならば、もらえないのは当たり前だと私は感じていました。

 ところが、さらに一転し、一定の要件を満たしたフリーランスや自営業の人に対して4100円/日で検討という報道が出たのです。これは、雇用保険法に何の関係もない、まさに別なかたちでの給付でしょう。「少ない」という声もあるようですが、1円ももらえない非正規雇用労働者もいる中、奇跡のような給付だと思います。

 個人事業主・フリーランスが給付を受ける要件は、企業と業務委託契約をして働く個人事業主・フリーランスなど、会社員に近い勤務形態の一部となると言われており、受給要件の門は非常に狭いと予想されます。

 個人事業主・フリーランスは、多種多様です。子育てをしながら家で働いている人、ほとんど趣味のお小遣い稼ぎという方、労働時間が自由な方などそれぞれですし、売上や経費の多寡もその差が計り知れません。また、新型コロナウィルスの関係で売上が減ったのかの証明も難しく、給付額を決定することが簡単ではないことは誰にでも予想が付きます。

 そうなると、該当者が少ないことは想像できます。

まとめ

 新型コロナウィルスによるダメージへの救済の声は止みません。

 助成金の新規創設、拡充などが発表されていますが、ここまで読んでいただけばおわかりの通り、期待しない方が賢明です。保護者支援の助成金に関しては、雇用されている人は良くて会社からの「いつもの給料」、個人事業主・フリーランスは良くて「4100円/日」です。

 これは、政府への批判でも何でもなく、法的な根拠や財源、助成の要件を考えれば、当たり前に見えてくる現実なのです。

 ここまでの内容を冷酷に感じたかもしれませんが、筆者自身も個人事業主で、セミナー等の大量キャンセルで相当な売上を失った身です。でも、誰に頼まれたわけでもなく、国や会社の補償が少ない自由な働き方を選んだわけですし、自分の力でできることをやっていくしかないと考えています。

 今回の件では、個人だけでなく、企業も国も大変な局面を迎えています。多くの国民が、個々人にとって、「自力」がいかに重要かを思い知らされたのではないでしょうか。

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