新型コロナ大打撃に「キャッシュレスポイント還元の延長」で対応?

文=宮西瀬名
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「GettyImages」より

 新型コロナウィルスの感染拡大を防止するため、世界各国で観光や飲食、イベントなどの産業を中心に経済が大打撃を受けている。もちろん日本も例外ではない。コンサートや演劇、イベントは多くが自粛を余儀なくされ、外食や旅行を控える消費者も多いようだ。

 早急かつ大胆な経済対策が望まれる局面であることは間違いないが、そこで飛び出したのが「キャッシュレス決済のポイント還元率引き上げ」だというから残念極まりない。

 FNNPRIME によれば、政府与党は消費者の購買欲を刺激するため、キャッシュレス決済のポイント還元率の引き上げを検討しているという。現在の中小規模の店での還元率は5%だが、15%~20%程度に引き上げる案が浮上している。

 実際、キャッシュレス決済のポイント還元率の引き上げは一定の支持を集めているという。3月13日放送『モーニングCROSS』(TOKYO MX)にて、税理士の中島加誉子氏は早急に取り組める効果的な経済対策として、消費税の減税や廃止は「非現実的」だとコメント。税率変更には法律を変えるための手続きが伴い、時間や手間など多大なコストがかかるためだと理由を述べた。

 中島氏は「今の状況が2~3カ月続いたら中小企業が潰れる」と予測したうえで、「キャッシュレスのポイント還元は法律ではなく、予算措置でやっている。延長や還元率の引き上げが簡単にできる」として、キャッシュレス・消費者還元事業の延長を提案。本来の予定ではキャッシュレス決済のポイント還元は6月までだが、「(7月以降は今よりも)酷いことになるのは火を見るより明らか。これをやるだけでもだいぶ違う」と明言した。

 だが消費税率の変更は、法律にタッチせずとも可能ではないのだろうか。3月11日に自民党の有志若手議員が、西村康稔経済再生相に渡した「『令和の恐慌』回避のための30兆円規模の補正予算編成に関する提言」では、<消費税は当分の間軽減税率を 0%とし、全品目軽減税率を適用すること(消費税法の停止でも可)>を提案している。法律を変更せずとも、全品目を軽減税率にして減税すれば良いということだ。

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新型コロナ大打撃に「キャッシュレスポイント還元の延長」で対応?の画像3 ウェジー 2020.03.13

 筆者が3月上旬に取材した京都大学教授の藤井聡氏も、緊急経済対策として消費減税を掲げている。いわく、「法的手続きが困難であるなら、軽減税率の制度を活用して全品目を対象に減税幅を5%にするだけなら、今すぐにでも国会決議で決定可能なはず」なのである。

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キャッシュレス決済は中小企業を追い込む

 そもそもキャッシュレス決済の普及は、中小企業にとって大きな負担となりえることを忘れてはならない。キャッシュレス決済のインフラ利用にかかる手数料は、ポイント還元が実施される今年6月までは上限が3.25%と定められているが、7月以降の手数料の設定は自由になる。つまり、キャッシュレス決済事業者が手数料を吊り上げることが可能になるため、今以上に事業者側の負担になるリスクがあるのだ。

 消費者にキャッシュレス決済が広く浸透すれば、手数料が引き上げられたとしても、キャッシュレス決済をやめるにやめられなくなることは自明。つまりキャッシュレス決済の拡充は、“中小企業の救済措置”にはならない。最悪の場合、中小企業の事業者も、関連する労働者も、消費者としてモノやサービスを消費することさえままならなくなってしまうのではないか。一体なんのためのキャッシュレス普及なのかわからなくなる。

 「消費増税後に購買意欲を失わせないため」という名目で導入されたキャッシュレス決済のポイント還元であるが、その効果はいまだ不明瞭である。消費税が10%に引き上げられ、ポイント還元が始まった昨年10月から12月の名目GDPの年率は7.1%と深刻な下落を見せた。この数字は、ポイント還元では消費者の購買意欲を刺激することはできないことを証明しているのではないか。

 また、キャッシュレス推進協議会が1月に発表した調査結果によると、還元事業参加店舗のうちキャッシュレス決済を導入して売り上げに効果があった店舗は半数以下。「あまり効果がなかった」(38.3%)、「効果がなかった」(23.0%)と6割近くが「効果がない」と回答している。

 JX通信社の調査では、景気対策としての消費減税に57.1%が「賛成する」と回答。キャッシュレス決済のポイント還元率引き上げや期間延長を、果たして消費者は望んでいるのか? 政府与党は民意を見誤っているのではないだろうか。あるいは、そもそも民意を汲む気など毛頭ないのかもしれない。

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