
JO1「PROTOSTAR【初回限定盤】」(LAPONE ENTERTAINMENT)
JO1メンバーの発言にファンから違和感の声が続出
韓国で社会現象を巻き起こした人気オーディション番組『PRODUCE 101』(Mnet)シリーズの日本版番組『PRODUCE 101 JAPAN』(TBS、GYAO!)から生まれた男性アイドルグループJO1の動画が物議を醸している。
ことのあらましはこうだ。JO1は「ViVi」(講談社)2020年5月号の誌面にてYouTuber・モデル・タレントのkemioと共演することが決まった(3月16日に正式発表)。
その発表に先駆けて「ViVi」公式ツイッターアカウントでは、3月11日から「ViVi5月号でJO1とコラボしたのは誰? JO1からのヒント動画」という企画をスタート。連日にわたってJO1のメンバーが「ViVi」公式ツイッターアカウントに登場し、誌面でコラボする相手のヒントを語る動画が投稿されている。
そのなかで鶴房汐恩は<えっと〜、あんまり分からないんですけど、昔ツイッターとかでパッと出てきたりしていて、そのときにはけっこうなんか叫んでるとか、そういう面白いことをしている人っていうイメージがあります。あと、なんかオネエ口調っていうイメージがあります>と発言。
また、豆原一成も<身長がすごく高くて、ちょっとなんか女の子っぽい方だと思います>とヒントを出した。
これらに対してJAM(JO1ファンの総称)を中心に多くの人が違和感の声をあげているのだ。
「男性ならこうあるべき・女性ならこうあるべき」
ツイッターではこういった意見が交わされている。
<世界を目指してるって言ってるアイドルが、オネエが蔑称になってしまうことも知らず、「オネエ口調」と彼を薄っぺらくラベリングする発言をしてしまうのはかっこ悪いし、それに気づかずそのままあげちゃうViViがやばいな>
<マジそのへんのジェンダー等に関する考え方はJO1アップデートしてくしかねえな。そのへんケミオ様から学んでくれ……。彼が人気なのはそういった鎧を意味なくね??古くね??って思わせてくれる部分だから……>
彼らが語った「オネエ口調」「女の子っぽい方」という言葉には、「男性ならこうあるべき・女性ならこうあるべき」という価値観が見える。
私たちの多くの社会は、性別によってあるべき姿を固定させてきた。しかし生まれ持った性別に支配される生き方は決して多様とは言えず、生きづらさにつながっている。もうこの事実から目を背けるわけにはいかない。
また「オネエ」というフレーズは、関係性によっては親しみを伝える表現になる可能性もあるが、現在のJO1メンバーとkemioの関係性では、そうした意味を持たないだろう。JO1メンバー2人のジェンダー観に対してファンから危惧の声があがったのも当然と言える。
『PRODUCE 101 JAPAN』では希望が見えた
『PRODUCE 101 JAPAN』では、練習生(オーディション参加者のこと)が、ためらうことなくカメラの前で涙を見せる・男性もごくごく自然にメイクを楽しむ・練習生同士がお互いの容姿を褒め合う、といった姿が散見され、日本的なジェンダー意識、男性だけの閉鎖的なコミュニティで生まれる価値観を打ち壊す萌芽が見られた。
番組視聴者の中には、『PRODUCE 101 JAPAN』のそういった部分を評価するファンも多かっただけに、JO1のメンバーが今回のような表現を使ったことに失望の声があがっている。
もちろん、鶴房も豆原もkemioに対して悪気があって、前述したような言葉を使ったわけではないだろう。おそらくジェンダーに関する知識が不足していることが一因にあり、そしてそれはJO1に限らず日本社会全体に共通する問題でもある。
韓国でも状況は同じだ。だからこそK-POP業界においては、教育によって、それを乗り越えようとしている。
たとえばBTSは2016年にメンバーが作詞した楽曲に女性蔑視的な表現が含まれているとしてARMY(BTSファンの総称)から抗議の声を受けたことがある。その結果、所属事務所のBig Hitエンターテインメントが謝罪の声明を出す問題にまで発展した。
その後、BTSは作詞に際して女性学の専門家を招くなどして勉強を重ねたという。そういった試みの成果として、フェミニズムの文脈を取り入れた楽曲「21st Century Girls」や、「自尊心」をテーマにしたアルバム『LOVE YOURSELF』三部作のコンセプトが生まれている。
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JO1ファンの間では、所属事務所である吉本興業(正確には吉本興業と、韓国企業CJ ENMによる合弁会社LAPONEエンタテインメント所属)に対し、メンバーへジェンダー教育の機会を求める声も起きている。
JO1は若い世代に大きな影響力をもつグループである。今回の炎上をきっかけとし、社会により良いメッセージを届けることのできるグループに成長してほしい。