新型コロナウイルスの経済打撃、2020年いっぱい続く可能性も

文=加谷珪一
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「Getty Images」より

 新型コロナウイルスによる感染拡大が続いていることから、経済への深刻な打撃について懸念する声が高まっている。一部では、事実上の解雇や派遣の雇い止め、内定の取り消しなどが発生しており、実生活で被害を受ける人も増えてきた。この先、経済や雇用はどうなるのだろうか。

全面的な経済活動の停滞までには至っていないが…

 新型コロナウイルスのような感染症が広がった場合、一般的に経済活動は不要不急のものから先に影響を受ける。最初に観光地で客足が激減し、次いでイベント業が大きな打撃を受けたことは、多くの人が認識しているだろう。

 外食産業についても、日常的な食事については一定割合の人がサービスを必要とするので最低限の売上高は維持されるが、宴会など必要不可欠ではない予約はキャンセルされてしまう。飲み屋さんなど、楽しみのために行くお店への影響は甚大だ。

 小売についても同じような傾向が見られる。小売関係で最初に打撃を受けたのは高級品を扱う百貨店だが、すでにそのフェーズは過ぎており、一般的な小売店でも客足が減っている。

 来店する顧客は、目的がある人とそうでない人に大別できるが、感染症が広がるとむやみな外出を控えるので、目的を持たずに来店する顧客が減ってしまう。このため生活必需品を扱っている店舗でもやはり売上高に影響が出る。

 外食や小売全般に影響が波及すると、当然のことながら卸が取り扱う商品の数も減り、製造業に影響が及んでくる。メーカーは、生産量をある程度までなら、増やしたり減らしたりできるが、先の見通しが立たない場合には、工場のラインで勤務する従業員の一部を減らすといった措置を実施する。半年や1年ごとに契約を更新しているような契約社員の場合、更新されないというケースが出てくるだろう。

 仮に感染が長期にわたることが確実になった場合、企業は生産ラインの縮小や、新規投資を断念するといった決断を行う。工場などの設備投資は、様々な業種に関係しているので、これがストップしてしまうと、経済全体が縮小モードとなり、影響がさらに深刻化する。

 今のところ製造業全体が生産を見直す段階には至っていないが、その前段階には来ていると見てよいだろう。中国など海外から製品を調達している業種では、物流の混乱や工場の操業停止などで、すでに商品を調達できないケースが出てきている。

 リフォーム業界では、トイレやキッチンなどの部材が調達できないため、一部の物件では完成品を顧客に納入できなくなった。そうなると、一時的にリフォームや新規の建設をストップする企業も出てくるので、各方面に影響が及んでしまう。

場合によっては2020年いっぱい影響が続く可能性も

 では、こうした感染症による経済の影響はどの程度、続くのだろうか。2002年から2003年にかけて感染が拡大したSARS(重症急性呼吸器症候群)のケースでは、2002年11月に感染拡大が始まり、WHO(世界保健機関)が終息を宣言したのは2003年の7月なので、完全終息まで8カ月を要した計算になる。

 今回のコロナウイルスとSARSは感染が拡大し始めた時期がほぼ同じなので、SARSのパターンを適用できるなら夏には終息するということになる。またSARSのケースでは、完全終息こそ7月だったが、現実の経済は5月頃にはかなり回復していた。新規の感染者が減少したことで、ビジネス関係者に安心感が広がり、ウイルスの完全終息よりも先に経済は回復していたのである。

 今回も同じようなパターンを辿ってくれることを願いたいが、すでに現時点における感染者の数はSARSを大幅に上回っており、全世界的に感染が拡大している。こうした現実を考えると、夏には完全終息するとは安易に考えない方がよいだろう。

 政府のコロナウイルス対策専門家会議のメンバーからは「年を越えた対応が必要」との声が出ていることに加え、英国のジョンソン首相やドイツのメルケル首相など欧州のリーダーからは相次いで長期戦の覚悟が必要とメッセージが打ち出されている。やはり短期の終息は難しいと考えた方が自然だ。

 本来であれば、日本の首相から、こうした基本認識についてのメッセージが発信されてしかるべきだが、安倍首相の口からは「オリンピックは予定通り開催したい」「間髪を入れずに対策を実施する」「これまでにない発想で取り組む」といった言葉しか出てきていないのが現実だ。

長期か短期化の見極めができるまでには、それほど時間はかからない

 日本は諸外国と比較して十分な検査態勢が整っておらず、全国に何人の感染者がいるのかという疫学的なデータを得ることができない。だが中国と行き来が活発であったことなどを考え合わせると、国内にはかなりの数の潜在的な感染者が存在すると思った方がよい。

 そうなると、すぐに感染終息というわけにはいかないので、2020年度いっぱい、企業活動は大きな影響を受ける可能性が高くなる。

 まだ直接的な影響を受けていない人は、とりあえず様子を見るしかないが、念のため手元にはそれなりの金額の現金を用意しておいた方がよい。もう少し先になって会社から休業を命じられる可能性もあるので、少なくとも夏までは大きな予定は入れない方が無難だろう。

 経済上の理由から会社の事業活動縮小を余儀なくされ、休業を命じられる社員は、ルール上、賃金の6割以上を手当として受け取れる仕組みになっている。政府はこの制度をコロナウイルスにも適用することを決定済みなので、すでに影響が出ている人は、会社に問い合わせて欲しい(雇用保険に加入していることが条件)

 もし、感染が今年いっぱい継続することになると、いつまでもイベント自粛などを続けていくことは難しい。どこかのタイミングで、規模を抑制しつつも、経済活動は再開した方がよいとの判断に傾くことも十分に考えられる。だが政権幹部はオリンピックのことしか頭になく、こうしたメッセージをはっきりと国民に示すとは限らない。

 政府の情報だけに頼るのは危険なので、海外の感染者の増加数や、各国の対応などを参考にして、現実の感染規模を推定し、それに合わせて対応していくしかないだろう。

 何より、自身の感染を回避することがもっとも重要なので、できるだけ人混みには近づかず、手洗いをこまめに行うなど、予防措置を徹底する必要がある。長期戦になるのか、短期で終息するのかについての見極めができるまでには、それほど時間はかからないはずだ。そのタイミングまでは、とりあえずじっと耐えるしかないだろう。

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