リアルナンパアカデミー事件「被害者の落ち度」をあげつらう卑劣

文=高橋ユキ
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「Getty Images」より

【リアルナンパアカデミー事件 裁判傍聴記録/3】

 女性を酩酊状態にして性交する“メソッド”を共有していたリアルナンパアカデミー(以下RNA)塾生及び塾長による、複数の事件。今回は根本賢、羽生卓矢、大瀧真輝の公判を振り返りながら、彼らが罪を免れるべく繰り返した言動に注目したい。

強引に酩酊させて犯し動画まで撮る、リアルナンパアカデミーのメソッド

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リアルナンパアカデミー事件「被害者の落ち度」をあげつらう卑劣の画像3 ウェジー 2020.03.23

 初公判後に保釈され、第二回公判では被害者の意見陳述に耳を傾けていた根本だったが、2018年9月に開かれた判決公判で再び勾留されていた。その理由は「保釈後に、まだ当時逮捕されていなかった塾長へ自ら連絡を取り、他のRNAメンバーとともにLINE通話やメッセージでやり取りをしていた」ことが発覚し、保釈が取り消されたからだった。

 判決に先立ち急遽行われた被告人質問で、根本は事情を明かす。

根本「塾長と、被害者との示談交渉を再び行うことを話しました」

検察官「示談合意書の写真も塾長に送っていますね。どういうことを期待してたんですか?」

根本「アドバイスの内容が……この事件、どうしたらいいのか、僕がアタマ悪いんで、アドバイス、もらえるかなと」

検察官「刑を軽くするために?」

根本「そのようになります」

検察官「被害者の画像も、塾長から送ってもらって『ありがとう』と返してますね」

根本「そうです」

検察官「法廷では何度も謝罪を述べていたのに、どういう気持ちで塾長とやり取りを続けていたのか、あなた自身の言葉で説明してもらえますか?」

根本「……当時は、私と、被害者との間には、誤解や認識違いがあり、お互いの認識、正して、少しでも……変わればいいなと、思ったと思うんですが、そういう行為が、被害者の、事件で与えた傷を広げるような行為だったと理解し、後悔しています……。僕は、心弱いんだと思います……人の言うことをなんでも信じてしまうんだと思う」

検察官「両親や家族、心配かけた友人たちの気持ち、考えたんですよね。その上で保釈後に再び塾長と連絡をとったんですか?」

根本「そうなります」

検察官「あなたのために公判で証言したお父さんや、弁護士さんという身近な人よりも、塾長の言うことをあなたは信じたんですか?」

根本「……両親や弁護士さんがおっしゃること、最優先で信じておくべきと思うんですが、その時僕は……どっちも……」

 根本は被害弁償のために350万円を用立て、保釈保証金として200万円を支払っていた。これは全て両親が集めたものである。保釈取消のため保釈保証金は没収され、戻ってくることはない。

 逮捕後、公判で自らの犯した行為の反省を述べたにもかかわらず『塾長』へ心酔し続けていた根本のように、事件を起こしてもなお、罪を免れようと画策するふるまいは他の塾生にも見られた。

 大瀧と羽生により被害を受けたYさんは、羽生の公判で行われた意見陳述の場において「事件の後も、塾生が私の仕事先に来たり、ネットに書き込みされたりしている。安心して生活ができない」と訴えていた。公判では反省の姿勢を見せていても、その内心には「女性にも非がある」という思いがあったのだろう。

 いや内心だけでなく、彼らは実際にこうした主張を行なっている。一審で懲役5年の判決を受けた根津天亮の公判、弁論の際に弁護人は、根津が反省していることに触れながらも「被害者の一部行動、それがなければ避けることができたのではないか」と被害者の落ち度について発言し、裁判長に朗読を控えるよう求められた。

 さらに“被害者の落ち度”をあげつらい暴走したのが、懲役7年の判決を言い渡された大瀧だ。彼は一審判決を不服として控訴していた。

 2019年6月、東京高裁で開かれた大瀧の控訴審では当初、被害弁償に進展がみられた。Yさんとの交渉が進んだのである。一審当時、塾長と起こした「Aさん事件」については被害弁償300万円で合意に至っていたが、『1カ月の性交回数』を競い合っていたなかで羽生と起こした「Yさん事件」について大瀧は100万円しか提示せず、合意には至っていなかった。

 これは当時の弁護人の弁論によると「Yさんに対しては羽生から400万円の被害弁償の提示があった。被告人においては合計で400万円以上用意ができなかったが、Aさん事件の共犯である塾長は否認する可能性があった」と、他の共犯による被害弁償も合わせた金額に格差が生じないようにするためだったという。しかしそれは被害者から見れば、「同じ被害者のなかで差がついている、ひどすぎる」(一審のYさん陳述より)と感じるのも当然の対応であった。ところが一審判決後、大瀧は被告人質問で「Yさんが100万円の被害弁償を受け取る意志を示したために、控訴した」のだという主旨のことを述べた。これは刑事被告人にとって有利な事情となるため、控訴するのは珍しいことではない。

 Yさんはこの日に陳述で「事件当日の大瀧の態度は他の人に比べてバカにしているように見えた。事件後も罪の意識がなく上から目線。そのうえAさんとの被害弁償の金額に差をつけたため、長く刑務所に入れて欲しいと思っていた。羽生は大瀧ほどバカにしていなかったので一審判決前に被害弁償金を受け取った」と、一審判決前に大瀧からの被害弁償を受けなかった理由を語った。

 共犯の羽生は自分の200万円と、親から借りた金を合わせて800万円用意。等分し2人の被害者に被害弁償していた。大瀧は一審判決前にAさんに対する300万円の被害弁償しかできていなかったが、羽生と同じ懲役7年の判決が言い渡されたのだ。そのうえ、大瀧の判決理由では、羽生による被害弁償が有利に考慮されていた。これにYさんは「心の底からがっかり」し「大瀧が羽生と同じ刑にしかならないのなら、受け取ろうと思った」と、一審判決後に被害弁償を受け取る意志を示した経緯を明かす。

 被害者側に、大瀧に対して厳罰を望む気持ちがあったこと、それが叶わなかったことなど、さまざまな葛藤があったのだが、当の大瀧は、“一審判決後に受け取る意志を示した”ことに、公判で堂々と不満を述べた。

「複雑な思いがあった。もちろん自分の行為は卑劣で、被害者の調書だったりを読んで、辛い思いをしているというのはわかる。と同時に、不満に思うところもあった。なぜ一審のときに受け取ってくれなかったのかという思いがあり、それは一審の弁護士に伝えてはいます」

 さらにあろうことか“被害者にも落ち度があった”という思いまで、弁護人に誘導される形ではあるものの、吐露したのである。

弁護人「被害者にも顛末からいうと、落ち度があると、自分だけ責められないということ?」

大瀧「心の中ではそういう思いがありますが、思ってはいけないんじゃないかと……」

弁護人「どうして? あなた私に言いましたよね?」

大瀧「本当に、自分だけが悪かったのか、判決文は全くそこに触れられておらず、思うところありました」

弁護人「被害者だってセックスできると思わせるような行動をとってるんじゃないか、そういうことは不満あったんじゃないですか!? その通りですね!」

 弁護人からの質問は裁判長により止められたが、公判前の接見時にこうした会話がなされたと推察できる。そのうえ、大瀧の『控訴趣意書』には同じように被害者の落ち度を責めるような記述があったことをYさんが陳述で明かしたのだった。

「大瀧はよりによって、一審の被害者陳述に疑いを持っていると控訴趣意書に書いていました。『ナンパスポットには、男に声をかけられるのが怖いと思うような女が来ない』とか『警察にすぐに通報しないのは不自然』とか……控訴審で弁護人が替わると、調子に乗り、被害者がナンパ待ちしていると主張し始めました」

 一審では反省を示していた大瀧だったが、控訴審になり別の弁護人になったことも影響しているのか、おぞましい主張を繰り広げた。それでも、一審の弁護人の努力もあって、Yさんとは100万円の被害弁償で合意に至っている。大瀧に“寛大な判決”が下されるチャンスはあった。にもかかわらず、あろうことか弁護人がこの合意書を証拠として認めなかったのである。このため、被害弁償にかかる証拠は控訴審で取り調べられることはなく、控訴は棄却となった。

 保釈取消、弁護人が被害弁償の合意書を証拠と認めないなど、長く傍聴している中でも滅多にない事件が起こるRNAの公判。塾長・渡部被告の公判でも、“大量の飲酒による抗拒不能”を否定したいがために、被害者の心をさらに傷つけるようなやりとりが多々みられた。

【リアルナンパアカデミー事件 裁判傍聴記録】

▼1:強引に酩酊させて犯し動画まで撮る、リアルナンパアカデミーのメソッド
▼2:「1ヵ月の性交回数」を競い合うレースに没頭したリアルナンパアカデミーの塾生たち
▼3:リアルナンパアカデミー事件「被害者の落ち度」をあげつらう卑劣
▼4:リアルナンパアカデミー塾長「女は同意していた」の言い分
▼5:リアルナンパアカデミー塾生にとって、女性は道具でしかなかった

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