リアルナンパアカデミー塾生にとって、女性は道具でしかなかった

文=高橋ユキ
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「Getty Images」より

【リアルナンパアカデミー事件 裁判傍聴記録/5】

 女性に酒を飲ませ、酩酊状態にさせたうえ性交した罪に問われていたナンパ塾・リアルナンパアカデミー(以下RNA)塾長、渡部泰介被告に対する判決公判で東京地裁(家令和典裁判長)は、RNAの実態をこう認定している。

「被告人はかねてRNAというナンパ目的の塾を経営していた。事件当時も指導の一環として自らナンパを行った。RNAでは女性と24時間以内に性交することを『即』と呼び、それが大きな目標のひとつとなっている。複数での性交のことを『くるくる』といい、被告人がナンパした女性と性交したのち、共犯が性交している。『即』のため、ナンパした女性に対し、負けたら酒を一気飲みするゲームを持ちかけ、イカサマをして被告人と共犯らは飲酒する確率を下げ、相対的に女性に飲酒する確率を上げていた」(地裁判決)

 渡部被告は三件の準強制性交等罪いずれの事件においても、共犯となった塾生らに「もうギブいうてます」「イビキかいてます、意識ゼロです」等、LINEによる報告を受けていながら「ゴミクソ、仕事しろカス」「LINEでは連絡せず何かあれば口頭で、言うてるのに」など、女性たちを飲酒酩酊させる意図があると受け取れる返信をしていることを指摘されている。

 さらに「Cさん事件」においては、性交後に意識を取り戻したCさんが、被告に性交の有無を確認したのだが、被告がこれについて隠す返答をしたことも指摘。反省を一切示していないことなども考慮した上、懲役13年が言い渡された(求刑・懲役14年)。

 判決公判、腕組みをして被告席に座っていた渡部被告は、主文が言い渡されると腕を解き、後ろの机に肘をかけた。時折、ペンでメモを取りながら言い渡しを聞き、閉廷後はすぐに立ち上がり後ろに座る弁護人に話しかけていた。

女性は単なる道具でしかない

 ナンパ塾を経営しているナンパ師において、その実力を示すわかりやすい指標は『数』である。その『数』を上げるために『即』に至る技術を磨くことは、自分の実力を示せるだけでなく、入塾者を呼び込む宣伝文句にもなりうる。渡部被告のナンパの技術を学ぼうと入塾した塾生らもおのずと性交の『数』、いわゆる『ゲット数』を上げることを目標として、ナンパに励むようになる。基本的に男2、女1の組み合わせ『正3』でナンパに臨み、『正3』を通じて上の塾生が新人塾生にナンパや性交に至る流れを教えた。

 2005年に刊行されたナンパ師による書籍『即系物件 裸の渋谷少女たち』(ミリオン出版)は、当時、ナンパ界に衝撃をもたらした。これ以降ナンパしてその日に性交する『即』と呼ばれる言葉が浸透し、『即』を狙う行為が賞賛されるようになったのだ。現在のRNAが『即』を重視する背景はここにある。そして『即』を狙うがゆえに、女性に無理やり酒を飲ませ酩酊させるという“メソッド”が渡部被告のなかに、のちにRNA内に構築されていったのである。

 渡部被告は塾生らに『即』による『ゲット数』を競わせていた。その競争の上位者になれば他の塾生や渡部被告に認められ、RNA内でのステイタスは上がる。『正3』により新規の塾生に自分の実力を見せることで尊敬を集めることができ、自信もつく。『ゲット数』を上げて仲間からの賞賛を集めることが目的となっていた彼らにおいて、女性は単なる『即』のための道具でしかない。

 男性2人が一人の女性をナンパする『正3』というスタイルは、ナンパ界においてさほど珍しいものではないのだが、おそらく女性としては“断りづらい”状況に置かれていたであろうと語るのは、47都道府県でナンパを行うナンパ講師・岩クマー氏だ。

「『正3』は確かに、生徒がその現場に居合わせていれば、生でナンパの技術を見せることができるという利点があります。ですが現実として『人数の圧で女性を断りにくくしている』という側面もあります。それって世間一般の考えであれば、『卑怯』とか『女性がかわいそう』という感覚があると思うんですが、その感覚を持ち合わせていない渡部被告にとっては、それすら『ナンパの技術』として考えていたのではないでしょうか」

 元塾生の根津天亮は、RNAに入った理由を「小学校から高校までいじめられていた。昔交際していた女性が精神的に不安定になり、薬物に手を出してうまく関わることができず支えきれなかった。他人や女性と関わることに対して恐怖を抱くようになりそれを克服したいと入塾した」と公判で語っている。

 塾の教えを知る中で「多量のアルコールを用いたり、塾生を従わせるために、言うことをきかなかったり反抗する塾生を吊るし上げて威圧的に支配していること」に気づいたのだという。にもかかわらず、塾を抜けることはなかった。

 それは「抜けたり、見捨てられたりしたらコミュニケーション上手にならないと思ったことと、この世界ではカリスマの塾長が『20年間トラブルになったことがない』とか言っていたので、この人なら大丈夫だろうと思った」という理由からだった。当初はコミュニケーションスキルを上げる目的を持っていたものの、RNAに関わるうちに、渡部被告のスパルタ指導への恐怖も相まって、目的が『ゲット数を上げる』ことにすり替わっていったのか。

リアルナンパアカデミー塾長「女は同意していた」の言い分

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リアルナンパアカデミー塾生にとって、女性は道具でしかなかったの画像3 ウェジー 2020.03.26

【リアルナンパアカデミー事件 裁判傍聴記録】

▼1:強引に酩酊させて犯し動画まで撮る、リアルナンパアカデミーのメソッド
▼2:「1ヵ月の性交回数」を競い合うレースに没頭したリアルナンパアカデミーの塾生たち
▼3:リアルナンパアカデミー事件「被害者の落ち度」をあげつらう卑劣
▼4:リアルナンパアカデミー塾長「女は同意していた」の言い分
▼5:リアルナンパアカデミー塾生にとって、女性は道具でしかなかった

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