「こうあるべき」という思い込みが差別につながるーー落語家・僧侶 露の団姫さんインタビュー【前篇】

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露の団姫さん。開山中の「道心寺」の前で

・「落語家」であり、
・これからお寺を開山しようとしている「僧侶」でもある。

 このふたつの要素から、どんな人物を連想するだろうか。多くの人は「男性」を思い浮かべるにちがいない。

 露の団姫(つゆのまるこ)さんを前にすると、自分がいかにいろんなことを“思い込み”でとらえていたを思い知る。

 女性の落語家がいることは知っていた。女性にも僧侶がいて「尼僧」「尼さん」といわれることが多い。けれど、お寺を開山するとなると「えっ、女性が!?」と少なからず驚いた。それは自分のなかに、そういうことをするのは男性だ、という思い込みがあったからこその反応だったと気づく。

「誰のなかにも思い込みや、固定観念のようなものはありますよね。私のなかにもあります」

 そういって迎えてくれた露の団姫さんは、とても小柄な女性だった。場所は兵庫県尼崎市、コンクリート打ちっぱなしの現代的な建物。ここを改築して、自身の「道心寺」というお寺を開山するのだという。もとは料亭として使われていた建物だそうだ。

「こうあるべき」という圧

露の団姫さん(以下、団姫)「私はむしろ人よりも固定観念が強いのかもしれません。だからこそ、自分がよく知らないこと、知っているつもりなだけのことに出合ったら、一度立ち止まって考えることにしています。誰のなかにも思い込みや偏見はあるもので、それ自体が悪いことではないけれど、垂れ流しにして人に押し付けてしまえば差別になりますよね」

 著書『女らしくなく、男らしくなく、自分らしく生きる』(春秋社)には、幼いころから押し付けや差別に疑問を持ち、反発しながら生きてきた団姫さんの半生がつづられている。たとえば、小学校のクラスで学級委員に立候補したのは全員女子生徒だった。しかし先生は「学級委員は男子に決まっている」という。中学校の卓球部では、男子生徒の試合には女子生徒がきてお茶くみをするよういわれた。女子生徒の試合で男子がお茶をくむことはない。「おかしい」と声をあげ、そのたびに頭ごなしに叱られた。

団姫「私はたびたび悩み相談の会を開いているのですが、女性からの相談を聞いていると、いくつになっても、あれをするなこれをするなといわれる一方で、“こうあるべき”を常に押し付けられていて、そこから生じる悩みが多いと感じます。家のなかでも妻とは、母とは、嫁とは、娘とはこうあるべきという圧がある。女性は誰もが物心ついたときから、多かれ少なかれ女性という理由でイヤな目に遭っていますよね。“女性は気を遣える人が多い”と思い込んでいる人も多いですが、結果的に気を遣わざるを得なかったからそうなっているだけで、人は生まれながらにして“女性だから”気を遣えるわけではありません。職場においても男性には求められないのに女性には当たり前のものとして求められる気遣いは、本当に迷惑な話だと思います」

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