1年延期でも東京オリンピックの疑惑と懸念は消えない 「黒い五輪」4つの問題点

文=本間龍
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「Getty Images」より

 かたくなまでに五輪の通常開催に固執していたIOCと日本政府・組織委が、世界各国から総スカンを食らう形で3月24日、遂に延期へと舵を切った。24日の夜に安倍首相とIOCバッハ会長の電話会談があり、日本側から1年程度の開催延期を表明、バッハ氏もこれを受け入れた。これで来年への延期が決まった。

 同時に、3月26日から開始予定だった聖火リレーも、当初はランナーによるリレーは行わず、トラックなどに聖火を載せて巡回することが検討されていたが、こちらも大会延期と共に中止が決まった。

 3月30日には、延期後の日程も決定。オリンピックは、2021年7月23日に、パラリンピックは8月24日に開かれる。

 私はこちらでの連載を通じてずっと東京五輪を批判してきたし、2月末の時点ですでに延期は避けられず、もしやるなら1年延期だろうと予測してきたが、一カ月遅れでその通りになった形だ。現在、世の中は「中止ではなく延期になってよかったね」という空気になっているが、東京五輪が抱えてきた幾つもの問題は何ら解決されないまま残った。これからは、それらを引きずったまま1年後の開催を目指すことになるが、これは相当困難な道になるだろう。今回は、おさらいの意味も込めて、東京五輪にはどのような未解決問題があって、それが今後どうなるかについて整理したい。

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1年延期でも東京オリンピックの疑惑と懸念は消えない 「黒い五輪」4つの問題点の画像2 ウェジー 2020.02.26

1)五輪招致時における贈賄疑惑

 元JOC会長の竹田恒和氏が理事長を務めていた東京五輪招致委が、200万ドル以上を支払って招致を勝ち取ったとする疑惑を受け、竹田氏は昨年6月、退任に追い込まれた。追及を続けているのはフランス検察で、昨年1月には、竹田氏の訴追準備の段階にまで来ているとの報道があり、彼の退任の引き金となった。

 その後は具体的進展がないが、昨年7月にはリオ五輪招致を巡ってやはり200万ドルの賄賂を支払ったことをリオ州の元知事が証言しており、同じような構造であることから、竹田氏の疑惑はまったく晴れていない。もし五輪がこのまま実施されていれば、時間切れで逃げ切りになる恐れもあったが、1年延期されたことで、この問題の追及で新たな動きが出てくる可能性が十分ある。

2)際限なく肥大していた支出

 昨年12月、会計検査院は国の東京オリパラ関連支出が18年度までの6年間に、約1兆600億円に上ったとの調査報告書をまとめた。大会組織委と東京都が公表している運営などの経費と合計すると、大会の支出総額はすでに約3兆円となっている。

 この会計検査院の指摘に対し国や都は「関係の無い支出も含まれている」などと異議を唱えているが、忖度や予断を含まない検査院の検査は信用度が高く、オリパラ実施予算はすでに3兆円を超えていると考えるのが妥当だ。

 改めて言うまでもないが、招致時に日本が発表した計画書では、開催費用は約7000億円と記されていた。だが実際は開催を目前にして、その4倍以上に膨れあがっていたのだ。しかもそれはいざ実施となれば、酷暑対策やテロ対策費で、さらに増えていた可能性が高い。

 この野放図とも言える予算膨張に、新たに一年延期による追加予算が必要になる。組織委の見積もりはまだ出ていないが、最低でも約6000億円程度とする試算もあり、そこに、まだ収束の兆しが全く見えないコロナ対策費などをプラスすれば、総額は軽く1兆円を超える可能性もある。つまり、今までの支出と合計すれば、なんと約4兆円を超えていく可能性さえあるのだ。これはもちろん過去のどの大会よりもはるかに巨額で、民間の商業イベントにこんなにカネをかけて良いのか、という批判が必ず巻き起こるだろう。

3)無償ボランティア問題

 大会期間中、11万人以上のボランティアを酷暑下で無償労働させる「ブラックボランティア問題」は大きな話題になったが、組織委はそれを無視する形で突き進んでいた。さらに、人員の不足を補うために、昨年10月から時給1600円でアルバイト募集までしていた。高額時給をもらうバイトと無給のボランティアを、同じ業務で一緒に働かせようとしており、それに不満をいだいたボランティアの辞退が相次いでいた。現場では、そのような不穏な空気も立ちこめていたのだ。

 だが延期により、ボランティアの動員計画も大幅な修正を迫られることになった。1年も延期されることから、学生などを中心に辞退者が多数出ることは避けられず、恐らくは数万人を再募集することになるのではないか。だが、来夏ということになれば、酷暑に加えてコロナに罹患する危険性も承知で応募しなければならない。よほど保険等のケア体制をしっかりしない限り、人員確保が困難になることは容易に想像できる。そしても何よりも、応募する善意の人々を無償でこき使って良いのか、という議論は来年まで続いていく。

4)無策だった酷暑対策

 コロナ騒ぎですっかり霞んだ感があるが、コロナ出現以前の東京五輪の最大の課題は、観客とボランティアの酷暑対策だった。そして開催直前になっても、決定的な解決策は何も出来ていなかった。

 観客席に雪を降らせるとか、ボランティアに日よけのついたおかしな帽子を被らせる、会場周辺に朝顔を並べるなど、奇天烈な案が真面目に語られては消えていった。だが結局は、自己責任で熱中症にかからないようにする、こまめに休憩を取れるシフトを組むなど、当たり前の対策しかないままに、本番を迎えようとしていたのだから恐ろしい。もしまた真夏の開催となれば、この酷暑対策問題もそっくりそのまま、来年に持ち越されることになる。

東京五輪は「厄介五輪」と化す恐れ

 そして最新情報では、来年も実施は同じ7月〜8月開催になるらしい。ということは、無策とも言える酷暑対策と、その頃でもきっと完全には終息していないであろう、コロナ対策の二正面作戦をしなければならない、ということになる。
 だが、そもそも酷暑対策さえまともに出来ない組織委に、さらに危険を伴うコロナ対策が満足に出来るとは到底思えない。というよりも、この二つを完全に制御できる術など、もともと無いのだ。

 安倍首相は五輪延期に際して「人類が新型肺炎に勝った証としての五輪にしたい」などと語ったが、1年後にそれが可能になるか、現段階では全く見通せない。分かっているのは、もしそれを達成しようとすれば、果てしない労力と莫大な資金(税金)が必要になるということだけである。東京五輪は「復興五輪」「コロナ克服五輪」などではなく、とんでもない金食い虫の「厄介五輪」となる可能性が、非常に高くなってきた。

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