就職する前に絶対! 確認しておきたい「就労条件・契約条件」

文=松沢直樹 監修=宮本督弁護士/中島・宮本・溝口法律事務所
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「GettyImages」より

 前回は、「同一労働同一賃金制度」の“抜け穴”について説明した。今回は、労働者が自分の権利を守る方法について詳しく解説する。

罰則が存在しない同一労働同一賃金制度 どうやって自分の権利を守るか

 同一労働同一賃金制度についての抜け穴は、ちょっと考えただけでもこれだけの数があるのだが、さらに困ったことに同一労働同一賃金制度を会社側が守らないとしても、罰則規定はないのが現状だ。

 したがって、どのような立場で働くにしても、自分の権利や待遇を守ることを意識していないと、生活できないほど厳しい待遇に追いやられてしまう可能性がある。では、どのようなことに留意すべきなのだろうか。

就労条件・契約条件を必ず確認する

 これは現在でも同じことが言えるのだが、応募の段階から給与条件はもちろん、職務の内容、福利厚生などの条件について確認することが大切である。“雇ってもらう”という意識から、なあなあになりがちだが、労働者側に著しく不利な条件を盛り込まれていたら、後で痛い目に遭うのは自分である。

 面接に進んだら、不明点は必ず確認するようにし、採用内定をもらっても、契約書は必ずすみずみまで確認してから署名捺印をするようにしてほしい。会社側の説明を受けても釈然としないときは、弁護士に相談して第三者の見解を求めることも必要だ。

 自分が疑問に思う点を書き出しておいて、雇用契約書を持参して弁護士に相談すれば、短時間で要点を伝えることができる。相談費用は弁護士によってまちまちだが、相場として1万円程度ではないだろうか。トラブルになってから対処を相談するよりもはるかに費用負担が安い上に効果的だ。

実際にトラブルに巻き込まれた際にはどう対処すべきか

 十分なチェックを行った上で雇用契約を結んだものの、トラブルに巻き込まれることもある。もっとも多いトラブルは、賃金の切り下げと、職務内容の拡大だろう。

 経営不振を理由に賃金を下げられたり、人手が足らないことを理由に自分の専門以外のことをどんどん任されて、心身を壊しかねない状態まで追いやられてしまうケースは十分に考えられる。このような場合、以下の方法で対処することが効果的だろう。

弁護士への相談と必要に応じての委任

 法的トラブルに一番強いのは、言うまでもなく弁護士である。法律の範囲内で、依頼者にとって有利な方法での対処を講じてくれる。就労時に、雇用契約の内容についてチェックしてもらっていれば、会社側が一方的に契約に違反したり、同一労働同一賃金制度に違反する不合理な取扱いを行っていることは明確にわかるはずだ。

 前述のとおり、同一労働同一賃金制度は、違反したとしても罰則がない。しかしながら、会社に是正を求めることができたり、損害賠償を請求できるケースもある。弁護士と相談した上で、訴訟に勝てる可能性と裁判費用について納得できるなら委任して、トラブルの解決を任せるのもひとつの方法だ。

ADR(裁判外紛争解決手続)の利用

 同一労働同一賃金制度に罰則はないものの、代わりに今回の働き方改革関連法の改正では、これまで短時間労働者しか規定されていなかった行政による裁判外紛争解決手続(行政ADR)の根拠規定を整備することが明言されている。

 ADRとは、2007年4月に司法制度改革のひとつとして施行された「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(ADR法)」に基づき、公正中立な第三者が間に入り、裁判によらずに話し合いを通じて紛争を解決する手続である。

 例えば民間ADRについて言えば,令和2年2月1日時点で、175の民間事業者がADR機関として法務大臣から認証を受けており、一般民事はもちろん、労働、金融、知的財産などのさまざまな分野の紛争解決を取り扱っている。

 裁判を起こす場合、費用がかかるため、資力にとぼしい労働者側は不利になりかねない。また、日本においては「裁判沙汰」という言葉があるように、裁判を起こすことで、会社との雇用関係に完全に亀裂が入ることもありうる(労働組合などがなく、日常の仕事の中でバックアップしてもらえなければ、裁判を起こした時点で、勤務の継続が難しくなるだろう)。

 ADRは、あくまで両者が問題解決を前提に第三者を間に入れて紛争解決をめざす制度である。会社側・労働者が合意していなければ利用できないというデメリットはあるが、両者が紛争解決を前提に話し合うため、紛争解決後も勤務を考えている場合は、効果的な方法となりうる。

 ADRを実施している機関には、以下のようなものがある。

裁判所
行政機関:国民生活センターや労働委員会など
民間の機関:各種PLセンター・弁護士会・民間ADR事業者など

 また、裁判外紛争解決手続(ADR)には以下の種類がある。

調停
 第三者である調停人の仲介のもと、当事者間で話し合いを進めて問題を解決する方法である。調停人が解決案を作成・提示し、双方が同意すれば解決となる。調停人が提示した調停案に対して同意できない場合は、拒否することも可能。

あっせん
 基本的には調停と同じだが、仲介する第三者が解決案を積極的に提示しない点で調停と異なっている。具体的には、会社側と労働者の主張を第三者の専門家が客観的にまとめてくれるが、あくまで当事者同士によって問題を解決することを前提としている。

仲裁
 第三者である仲裁人が、会社と労働者の合意(仲裁合意)のもと、争いについて仲裁し、その判断に従う形で問題を解決する手段である。あっせんや調停とは異なり、仲裁判断には裁判所の判決のように強制力があるため、会社側・労働者ともこれを拒否したり不服を申し立てたりできない。

 裁判外紛争解決手続のデメリットは、会社側・労働者が合意していないと実施できないことである。また、仲裁は裁判の判決と同じように強制力を持つが、法的知識に強く資力も豊富な会社側が仲裁人に対して自らの意見を取り入れてもらえる主張をした場合、労働者が不利になりかねない。これらの点を理解し、対策を講じた上であれば、効果的な解決方法になりうる。

労働組合を活用する方法

 同一労働同一賃金制度が切り崩される要因として、正社員と非正規社員のつながりが薄いことがあげられるだろう。

 同じ職場で仕事をしていても、待遇の違いなどは口にしないことがほとんどではないだろうか。労働組合時代の経験と、様々な企業を取材した経験からみれば、まずは正社員を切り崩し、次は非正規をさらに厳しい待遇に追いやるという方法が取られる可能性が高い。正社員と非正規で連帯して、会社に交渉してみるというのも、ひとつの手である。

 まず、飲み会などを通じて、雇用契約関係なく、社員がざっくばらんに話せる環境を作ることが大切だ。雇用契約に関係なく、自分たちが反目させられていて、さらに厳しい労働条件を強いられていることが理解できれば、会社への対応は自ずと決まってくるだろう。

 いきなり労働組合を立ち上げるのも大変なので、てっとり早い方法として、会社との交渉経験を積んだ大手の労働組合に気心の知れた数名で加盟するという策もある。

 労働組合には、会社側に強制的に話し合いの席につかせる「団体交渉権」という権利を付与される。また、労働条件が気に入らなければ、一定の条件のもとで、仕事を放棄して抗議しても解雇されることはない。

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就職する前に絶対! 確認しておきたい「就労条件・契約条件」の画像2 ウェジー 2019.11.26

 反社会的勢力まがいのことを行う「ブラック労働組合」も存在するため、加盟時には注意が必要だが、労働組合は、同一労働・同一賃金制度の抜け穴をブロックし、正社員・非正規とも働きやすい職場を作り出す上で、費用対効果が高い。職場の同僚を説得して、ぜひ対策として利用してほしい。

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