
「GettyImages」より
終息が見えず深刻化する介護現場
新型コロナウイルスの蔓延は、世界中を巻き込み深刻な事態となっている。特に、高齢者が感染してしまうと「死」にいたる可能性が高い。そのため、子供、現役世代にもまして、高齢者の視点から対策を考えていくことは極めて重要である。
「人工呼吸器が足りない」「集中治療室が飽和状態」「小中高の一斉休校に伴う混乱」「経済活動の低迷」などが注目される一方で、「介護」現場の問題は目立たないと言える。
しかし、在宅介護現場を中心に多くの要介護者や家族らは「このまま介護生活を続けることができるのか」と、不安の日々を送っている。本稿を通して、介護現場に焦点を充てて述べていきたい。
デイサービスの休止で「介護難民」
軽度及び重度の要介護者における在宅介護は、主に「訪問介護(ヘルパー)」「デイサービス(日帰り型施設)」「ショートステイ(4日前後、施設に滞在)」の3つの介護サービスに支えられる。「訪問看護」「デイケア(通所型リハビリ)」「福祉用具」などのサービスも重要であるが、前者3つが在宅介護サービスの基本となる。
しかし、新型コロナウィルスの影響によって、「デイサービス」の休止が一部の地域で行われているようだ。
「デイサービス」は、「食事」「入浴」「体操(簡単な体操)」「レクリエーション」「高齢者同士の会話」など、要介護者の閉じこもりを防止するうえで不可欠な介護サービスである。高齢者の状態や家庭環境にもよるが、週2~3回程度利用される傾向があり、独居高齢者、老夫婦世帯にとって、この「入浴」「栄養バランスのとれた昼食」は、極めて重要である。
実際、心身の機能低下によって自宅で入浴が難しい高齢者は、デイサービスのみが唯一の入浴機会となる。老老介護などのケースが典型例だ。
サービスが休止されるといった事態は増える傾向にあり、在宅介護は危機的状況となっていくだろう。
訪問介護及びショートステイは?
国からは、デイサービスが休止となった場合、代替手段として「訪問介護」を利用し、「食事などの買い物支援」「入浴介助」などのサービスを受けるようにと通知が出されている。
しかしすぐに「訪問介護」サービスを利用することは難しい。なぜなら、平時であってもヘルパー不足(介護スタッフ)により、新規利用者を断っているケースが珍しくないからだ。まして、新型コロナウィルスの感染が拡大している今、新たに訪問介護サービスを利用したいと思っても、受けてくれる介護事業者を見つけることができない。
しかも、ヘルパーの大半は非常勤職員(アルバイト)であり、ヘルパー自身の家庭環境(子育て中、子供の学校が休み)などで、稼働時間を減らしている者もいる。また、ヘルパーの大半が60歳以上であるため(図を参照)、自分の健康を考慮して(感染などナーバスになり)、仕事時間を減らしている場合もある。

訪問介護員の年齢構成割合(%)
社会保障審議会介護給付費分科会「参考資料2:介護人材確保対策(H29.8.23)」より作成
短期間の「ショートステイ」で施設を利用することも考えられるが、現在、介護施設は新規の高齢者の受け入れを拒んでいるという話も聞く。既に入居している高齢者を守るため、新たな短期間入居する高齢者の出入りを避けているからだ。実際、家族の面会なども謝絶している介護施設も多く、職員においても「衛生管理の徹底」「外食禁止」など、かなりシビアな対応になっている。
休止したデイサービス職員が訪問支援
なお、国としてはデイサービスが休止となれば、担当ケアマネジャーと調整して、そのデイサービス職員が、利用者宅に訪問して最低限の「支援」をする代替案を打ち出している。そのため、要介護者や家族も、休止の場合にはデイサービス職員に自宅訪問してもらうことを想定しておく必要がある。
ただし、訪問介護サービスではないので、あくまでも限られたサービスしか提供されないことは理解しておく必要がある。また、デイのスタッフ職員も限られるので、週2~3回来てくれるかは未知数だ。
宅配や介護休暇の活用
その他にも、食事などを不安視しているのであれば、コンビニの宅配サービスを利用する方法もある。通常のヘルパーが来られなくなり、代替のスタッフも難しい場合も、宅配サービスの利用で、当面を乗り切っていくことができる人もいるだろう。
また、支援に訪ねる回数を増やせるように、他所に住む家族(息子や娘・嫁)が介護休暇を取得することも可能である。介護休暇は年間5日間とれることになっており、会社に「親の介護で介護休暇を取得したい」と申し出れば可能である。
「介護休業」となれば手続き上ハードルが高くなるが、「介護休暇」であれば安易に取れるであろう。「介護休暇」がなくなった場合は、「介護休業」の利用を考えなければいけないことになるかもしれないので、手続き方法などを今のうちに調べておいたほうがいい。
緊急事態宣言になっても!
高齢者の中には「感染」を気にして、訪問介護やデイサービスの利用を自ら控えてしまい、日常の介護生活が厳しくなっているケースを僅かながらに聞く。確かに、「感染」は注意しなければならないが、平時の在宅介護サービスを拒否してしまえば、日常の生活ができなくなり、「食生活」もバランスが悪くなり、「入浴」もできず健康的に問題が生じてしまう。
介護職員らは最大限の配慮でサービスを提供しているため、「感染」を恐れるがあまり介護サービスの手控えにより、かえって健康を害してしまうと本末転倒になってしまう。たとえ緊急事態宣言が発令されたとしても、日常生活を送るために必要なサービスは利用した方がいい。
介護職員の努力に感謝の姿勢で
介護職員も多くの高齢者と関わり、注意してはいても「感染」の可能性と背中合わせだ。そのため、現在、介護サービスを利用している高齢者や家族は、一言「感謝の意」を述べるだけでも、介護スタッフの励みとなるのでお願いしたい。
「感染防止」と「介護サービス継続」といった2つの対応を同時にしなければ、在宅介護は成り立たない。その意味では、「介護保険サービス」「保険外サービス」「家族支援」など、あらゆる資源を活用し、引き続き関係機関がチームとなって乗り切っていく必要がある。