
『ワイドナショー』(フジテレビ系)番組ホームページより
松本人志の『ワイドナショー』(フジテレビ系)での発言に、批判の声が集まっている。
2020年4月5日放送『ワイドナショー』では、政府が緊急経済対策として、新型コロナウイルス感染拡大の影響で減収になった世帯を対象に、現金30万円を給付する方針を示しているニュースを扱った。
番組では所得制限を入れることの是非について議論があると紹介されたのだが、そこで松本は<水商売のホステスさんが仕事を休むからといって、ホステスさんがもらっている給料を我々の税金では、俺はごめん、払いたくはないわ>と発言。
接客を伴う飲食店は感染を拡大させてしまう恐れがあり、営業を止めることはウイルスの拡大防止に寄与する。だが営業を停止すればそこで働く人々の収入は途絶える。休業補償が必要な業界と言っていいだろう。
政府の原案では、世帯主の2月以降の月間収入が1月以前と比べて減少し、住民税非課税の水準となった世帯が対象となる。もし松本の言う“ホステスさん”にあたる職業で現金給付の対象者がいるとしても、それは「ホステスさんが(日頃)もらっている(高額な)給料」を払うことと全くイコールではない。考えなくてもそれくらいのことはわかるはずだが、なぜわざわざ水商売女性への侮蔑的な態度をあらわにするのか理解に苦しむ。
だがネット上では、松本人志に同調し、「水商売の人たちは普段、確定申告で納税してない」「そもそも住民税を払ってないような人たちに、真面目に納めた人の税金を使って欲しくない」「むしろ課税した方がいい」といった、夜職への偏見と批判も大きい。
新型コロナウイルス感染拡大防止に伴う臨時休校で仕事を休まざるを得なくなった保護者のための助成金でも、風俗業やキャバクラなどの飲食接待業が対象外とされ、議論を起こした。
厚生労働省は職業差別を肯定
厚生労働省は、一斉臨時休校で有給休暇を取得した保護者の勤務する事業所に、賃金相当額(1人当たり1日最大8330円)を助成金として支給するほか、休校に伴い休業を余儀なくされたフリーランスの保護者に対しても1日4100円を支給する。だが、風俗業やキャバクラなどの飲食接待業につく保護者は対象外とされた。
毎日新聞によれば、同紙の取材に厚生労働省は「公金を投じるのにふさわしくない業種との判断」と説明。加藤勝信厚生労働大臣も「雇用関係の助成金全般で、風俗業関連は支給しないことになっており、休業対応の支援金も同様の扱いとなっている。現在、その取り扱いを変える考えはない」と、方針を変えるつもりはないことを明言した。
では飲食接待業や風俗業に従事する保護者とその子どもは、この苦境をどう乗り越えるのが「ふさわしい」のだろうか?
すでに現在、飲食業などは客足が遠のいて営業や雇用の継続に不安が生じている。また繰り返しになるが、補償がなければ営業を止めることはできないだろう。感染拡大を抑止するために事業を停止することを求め、同時に生活を補償する必要がある。
安倍首相は近く緊急事態宣言を出す以降を固めたと報じられているが、たとえ緊急事態宣言が出されようとも、休業補償がなされなければ営業を続ける業界はあり、働きに出るしかない人々もいる。人命を左右する緊急事態にも関わらず職業差別が噴出し、しかもそれを国が扇動しているという状況は問題である。
追記:4月6日、菅義偉官房長官は「助成金の運用については、厚生労働省で検討していくが、政府として、支給に関する要領の見直しを検討したい」と発言。休校措置で仕事ができなくなった保護者への休業補償の対象に風俗業も含める方針を示した。今後の動きも注視していきたい。