新型コロナ感染拡大で小児科医からのお願い! あらためて考えてほしいワクチンのこと

文=森戸やすみ
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 従来から、日本ではワクチンに対する認識が十分とは言えません。

 たとえば、現在でもまだ封じ込められていない風疹麻疹は、「自分は昔かかったはず」「ワクチンを打ったはず」と思っている人、「自分には関係ない」と思っている人がいるためです。日本での新型コロナの死亡率は2〜3%ですが、麻疹だってかかったうち1000人に1.5人が亡くなる、治療法のない感染症であることは同じです。

 水ぼうそうおたふく風邪も、運が悪いと重症化したり亡くなったりすることがあります。抗体を持っていたとしてもワクチンを受けて問題が起こることはありません。集団としてほとんどの人にワクチンで免疫があれば、根絶できる感染症なんです。それなのに無関心や誤解で「ワクチンは受けない」と思う人たちがいるのが問題です。 

 BCGが新型コロナの重症化や死亡を予防できるかもしれないといわれていますが、現段階ではなんとも言えません。本来、BCGは乳幼児期の結核性髄膜炎や粟粒結核を予防するのに効果がある予防接種です。大人の結核に対する予防効果は、あまり評価されていません。

 しかも大人にはケロイドのリスクもありますし、ツベルクリン反応検査で偽陽性だった場合にBCGを打つと、局所反応のリスクが高いのでよくありません。そういうことがあるで、本来の定期接種で受けるべき乳児のBCGをすでに大きくなった子や大人が奪うのはやめましょう。BCGは1社でしか作っておらず、計画的に生産するので需要の急増には対応できません。

この機会に、ワクチンを

 新型コロナのワクチン開発は各所で始まっていて、一刻も早く実用化できるように担当の専門家たちは急いでいるところです。たしかな予防効果、重症化を防ぐ効果のあるワクチンができたら、私たちは手洗いや3密以上の対抗措置を持つことになります。天然痘のように過去の感染症にできる日が来るかもしれません。

 でも、その日がいつ来るのかはまだ誰にもわからないのです。もしもワクチンができたときのために、あらかじめ「みんながワクチンを受けること」の重要さを考えておいてください。小児科外来では、多くの医療機関が予防接種外来を現在も引きつづき行っていて、発熱などの体調が悪い人とは一緒になりません。

▼参照
新型コロナ流行で、病院に子どもを近づけたくない…定期受診、予防接種はどうする? 熱が出たときは?

 在宅ワークが増え、もしもお子さんを連れて一緒に医療機関に行くことができたら、この機会に受けていなかった他のワクチンを親子で受けに行くのはどうでしょうか?

Information

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朝日新聞の医療サイト「アピタル」の連載「小児科医ママの大丈夫!子育て」をまとめて加筆し、書籍化したものです。小児科専門医で二児の母でもある森戸やすみさんが、子どものために日々がんばりすぎて不安に陥りがちな保護者に、どんなことに気をつけたらいいか、どんなことは気にしなくてもいいかをやさしく伝えます。

(目次)
第1章 子育てをもっとラクに
なんでも親のせいにできる“愛情不足”はスルーして
子連れ出勤ではなく、働き方改革が必要です……など

第2章 心配になりがちなこと
泣きやまないのは、親の対応のせいじゃない
「どうして食べないの!?」と自分と子を追い込む前に……など

第3章 よくある子育てのデマ
その育児情報サイト、本当に正しいでしょうか?
なるべく薬を飲まないほうがいいと言うけれど…… ……など

第4章 小児医療の正しい知識
小児科なのか他科なのか、迷ったときには……
急に発熱したときも、慌てず対処するために……など

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