生活困窮者はGW明けから増えていく 貧困現場から見る新型コロナウイルスの影響

文=カネコアキラ
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「GettyImages」より

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、日本政府はようやく4月7日に緊急事態宣告を発令した。感染リスクが高まるのと同時に、経済への影響も次第に強まっている。

 失業者は世界規模で増加しており、日本も他人事ではない。今後、生活に困窮する人は増えていくだろう。またすでに路上で生活している人たちやネットカフェなどで寝泊まりしている人は、外出自粛要請が出される中、不衛生な環境に留まらざるを得ない状態が続いている。

 ホームレス・生活困窮者への相談、ワーキングプア状態についての相談、生活保護についての相談、居場所事業、自立生活を支援を行っている「特定非営利活動法人自立生活サポートセンター・もやい」理事の大西連さんに、現場のいまについて電話取材を行った。

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大西連(おおにしれん)
1987年、東京うまれ。認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長 主著に『絶望しないための貧困学』(2019年ポプラ社)、『すぐそばにある「貧困」』(2015年ポプラ社)。 生活困窮者支援に携わりながら、貧困や格差の問題について、政策提言もおこなっている。

雇用を守ることが大切

ーー新型コロナウイルスは、すでに感染症としてのリスクだけでなく、経済への影響も及ぼし始めています。大西さんの元に寄せられる相談は変化していますか?

大西 いまはまだ急激に相談が増えている、という状況ではなく、じわじわと増えているという感じです。雇い止めになった、給料が減ったという非正規雇用の方は増えてきています。特に、これまで景気が良かったのでなんとか生活できていた日雇い系の人たちの仕事がなくなってきていて、相談件数も増加してきました。おそらくゴールデンウィーク明けあたりから多くの人が困窮しはじめることになるので、たいへんなのはこれからだと思います。

ーー収入の減った世帯に対する給付を政府が発表しましたが、もともと住所のない方は受給ができないのではないかという懸念があります。

大西 住所がない人は受け取れないと書かれてはいないのですが、まだどうなるのかわかりませんし、そもそもコロナ流行以前の収入をどうやって証明するのかという問題があります。

新型コロナによる不景気がどのくらい続くのかまだわかりませんし、生活困窮者は現金給付よりも生活保護を利用したほうがいい場合があると思います。ただ、厚生労働省も生活保護や各制度の要件を緩和して支援できる人を増やそうというモードになってきてはいるものの、「不正受給を許すな!」というプレッシャーは依然としてあるんですよね。

ーー消費税増税による影響はみられるのでしょうか?

大西 影響はあると思いますが、新型コロナウイルスはまた別のベクトルの問題です。増税で景気が悪くなったとしても、健康な状態で雇用が維持される場合、月に15〜16万円くらい稼げればなんとなかなるんです。でも新型コロナウイルスで健康を害したり、あるいは雇用自体がなくなってしまうと生活が維持できなくなってしまいます。

ーー当初、事業者への支援ばかり拡充されることへの批判もありましたが、雇用を維持する点では意味があったということでしょうか?

大西 おっしゃる通りです。雇用の維持はなにより大事ですから、企業への補償を絶対した方がいいと思います。とはいえ企業がどのくらい耐えられるか、ですよね。大規模な企業は大丈夫だと思いますが、中小零細企業の場合、これを機に廃業しようとしているところも増えています。たとえ会社を存続できたとしても、いま全員の雇用を守れるとは限りません。

ネカフェ難民は東京に4000人

ーーいま路上で生活している人たちはどのようにして新型コロナウイルスの情報や緊急事態宣言に伴う支援などの情報を収集しているのでしょうか?

大西 人にもよりますが、そういった情報を得られる人と、そうでない人の差はでてしまうと思います。そういった情報を得られると、路上に出る前に支援を利用したりとなんとかできる可能性は高くなる。いまも私たちのところには、緊急性の高い相談よりは、制度についての情報を知りたいという人のほうが多くあります。

長く路上で生活している人は案外あっけらかんとしているというか、「最近なんか仕事がこないな」くらいの感じの人もいます。ただ感染予防やボランティアが減っている関係で、炊き出しの頻度は落ちているので、それで困っている人は多いです。

問題はネットカフェや漫画喫茶に寝泊まりしている方です。都内には4000人ほどいます。ネットカフェは密閉空間ですし、感染のリスクがとても高く危険です。かといって、ネットカフェなどが休業要請の対象になると、寝泊まりする場所がなくなってしまう。TOKYOチャレンジネットが、東京に6カ月にいてネットカフェなどに寝泊まりしている人を対象に100人分の住居を提供しているのですが、東京都は約12億円の補正予算を確保して、プラス400人分のアパートなどを借り上げて提供をすることになりました。ただ4000分の500ですからまだまだ足りていないんです。

ーー緊急事態宣言の対象となった他の府県はそうした対策をとっているのでしょうか?

大西 僕が知る限りではまだわかりませんが、自治体によってはホテルの借り上げなどの協議を行っているようです。

ーー路上生活の感染リスクは大きいのでしょうか?

大西 科学的な根拠まできちんとは確認できていないのですが、屋外は風通しがよいので比較的安全だという話を医者から聞いています。ただ、各地で行われている炊き出しに行けば、感染リスクは拡大します。また新型コロナウイルスとは関係なく、路上生活は衛生面で望ましくないですし、体力も奪われます。

ーー支援現場がいま必要としているものはなんですか?

大西 お金と人員が足りていません。支援するとなれば、当然一人ひとりのお話を聞かなくてはいけないので、マンパワーが割かれていくんですね。医者の指示のもとで感染症対策ルールを作るなどできることはしていますが、完璧にするのはなかなか難しいですし、面談での相談ができる団体も減ってきています。

市町村への相談もパンク寸前と聞きます。いままさに困っている人は、その日のうちに対応してもらいたいわけで、新型コロナ以前の世界とはまったく様相が異なっているんですよね。

ーー給付の申請にインターネットを活用する話も出てきていますが、インターネットを利用できない人も少なくないのではないか、と。

大西 おっしゃる通りで、インターネットを利用できない人は電話相談か直接窓口にいくしかないんですよね。それにこれまでインターネットでの申請を想定していなかったので、使い勝手の良いシステムになっているのかわからないし、職員も慣れていないんです。これを機に、誰にとっても使い勝手の良いシステムを構築すべきだと思います。

ーー新型コロナウイルスの被害を全く受けずに暮らしていられる人はいないと思いますが、家や仕事、情報へのアクセスなどを失っていない私たちは、生活に困窮している人やその支援をしている人たちに何ができますか?

大西 うーん、お金や物資の寄付はとても嬉しいです。それからツイッターでのリツイートでも結構なので、正確な情報を広めて欲しいですね。あと買い占めは控えて欲しいです。困窮している人や疾患、障害のある人は、いつでも買い物ができるわけではありません。商品がないからといって、いつもより高いものを買えるほどの余裕はない人もたくさんいます。

なにより、まずはご自身の生活防衛をちゃんとしてください。新型コロナの影響は他人事ではなくて、一般の人も経済的にかなりきついことになるはずです。なにか困ったことがあれば、もやいのホームページにアクセスいただいて、必要があれば相談してください。

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