「母親がカレーを食べると母乳がバイ菌だらけ」…今も実践される西原式育児法とは

文=山田ノジル
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 この育児法において、そのような健康問題以上に、つっこみたくてしかたなかったポイントがあります。それは、謎物件界隈お約束ともいえる「今の子どもはおかしい」「伝統的な日本の子育てこそが正義!」というテンプレが登場すること。メインストリームを外れ、何かに警鐘を鳴らそうとすると、このふたつを唱えなくてはいけない呪いが発動するのかもしれません。

 西原医師の「今どきの子どもは!」は、こんなことが語られています。「残虐な少年犯罪が増えているのも、子育てが間違っているからである!」。なるほど。同書が発行された2001年という時代は、1989年の女子高生コンクリート詰め殺人事件や、1997年の酒鬼薔薇連続殺人事件の衝撃が色濃く残っていた時代です。センセーショナルだったので、高名な先生も心をゆさぶられたのでしょうか。「生命の進化」という壮大なテーマを研究する方でも、俗世の事件に影響を受けるんですね、と和んだ部分でもありますが。

「昔の育児」については江戸時代の医師・香月牛山(かづき ぎゅうざん)が書いた育児心得に「2歳になるまで母乳中心で育てよ」とあることを根拠にしています。当時は栄養状態が悪かっただろうが、それでも十分元気に育っていた! と。いえ、子どもの死亡率、すごく多かったはずですよね。寿命も……ねえ? 

「バイ菌」って何だっけ…?

 さらに、昨今多くの医師から否定されている「母親の食べたものが母乳の質を左右する」論についても西原論は全肯定。HPにはこんな説明がありました。

・口呼吸の母親のお乳はバイ菌だらけで美味しくない。

・母親がカレーやキムチ、干物やアイスクリームを食べた5分後にバイ菌だらけのにがいお乳が出る。乳首を咬むのは、赤ちゃんがこれを拒否しているから。

・お母さんの食生活にも要注意。冷たいものは腸を冷やし、アレルギー体質にしてしまう。母親の体に入り込んだ抗原性のタンパク質は、へその緒を通って赤ちゃんの体に流れ込んだり、母乳に混ざる。するといくら離乳食に気を付けても、アトピーは防ぎきれない。

・お母さんが玄米やそば、小麦製品のうどん、パン、スパゲッティ・パスタ、また、冷たいご飯やアイスクリーム、生姜や香辛料の強いキムチやカレーを食べると母乳にバイ菌が入ることがありますから注意。

 西原医師の言う「バイ菌」ってなんだろう……と概念の違いを感じてしまう説明でありました。また、小麦粉が主食の国やスパイスを日常的に使う国の子どもはどうなっちゃうんだ?

口呼吸すれば、成績もアップ

 口呼吸の大切さを力説する西原医師は、同書に「実例」も掲載しています。相談に連れられてきた子どものBefore→Afterの写真を載せているのです。ここが、私の中では最大のハイライト。「口の使い方を誤ると病気になり、改めると治る」という見出しの下にあるのは、うっすら口を開けた写真と、口をキリッと結んだ顔写真。「子育てを誤ると、ふぬけ顔の子ができる。鼻呼吸、寝相、噛み癖をただすと、見違えるほど利口そうになり、成績も自然にアップする」「口呼吸ではたるみ顔になる。癖をなおすと賢そうになる」「理知的な顔になった高校生」……。

「~そうに見える」、で・す・か! さらに20歳になっても言葉が出ない子どもの例も出し「おしゃぶりを使わないからことばの出ない子どもにできあがってしまった」。まったくのど素人の私でも「因果関係ナシ」と断言でき……そう……(脱力)。

「生まれたときから楽にオッパイを飲ませてしまったら、健全な食欲すら育たなくなってしまいます。お母さんが先回りをして、子どもの欲望を簡単にかなえてしまうことは、その子の自発性や忍耐心を損なうことにもなりかねないのです」「現に今のティーンエージャーたちをみていると、無気力な子どもが多いように思いますが、もとをただせば赤ちゃんの頃の育児にあるのでは」とお説を積み上げていく西原先生。ご専門の「口」を基軸に育児法を語ったというところなのでしょうが、私は異界としか感じらませんでした。

西原式育児で育った子の現在は?

 しかし冒頭でもご紹介したとおり、いまだに実践している親をちらほら確認できます。実践者の書き込みや発信を見ていると、アレ持ち率が当然多く、何かいい方法はないかと模索する中での「藁」であることは想像に難くありません。さらに「健康な発育を、子どもにプレゼントしたい」という感覚の人もいたり、なかなか進まない離乳食に悩んでいたところ「2歳くらいまでは母乳だけでもいい!」という意見を見て救われたような気持ちになるというケースもあるようです。離乳食で心が折れるのは、よくわかるなあ~。時間をかけて裏ごしした野菜とかをひっくり返される、あの徒労感、思い出しただけでも白髪が増えますねえ。しかし西原式は「離乳食をすっ飛ばしていい」というわけではなく、やはり母乳を与えながら、野菜と白米のお粥などは与えるようなので「食べたい」という正常な欲求をおさえつける手間の分、さらなる苦界へ踏み込みそうですが。

 ただ、タグ付けしている人たちを見ると、多くは「できそうなところだけ」を実践しているような感じもありました。靴下を5枚10枚と重ね履きして毒をとろうという「冷えとり健康法」などと同じく、ゆる実践者が広く浅く世に広め、その一部が沼に落ちていくというトンデモ沼定番の構図を、この育児法にも見た思いです。

 さて、この育児法が提案されてから約20年。そろそろ西原式育児育ちが、成人する頃でしょうか。その結果は? 発達にどう効果を発揮したかは調べようがなさそうですが、「この育児で育ったよ!」という記憶のある方がいらっしゃいましたら、ぜひお話をお伺いしたいところです。

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