星野源「うちで踊ろう」に込められた“外で働かなくてはならない人々”への思い

文=wezzy編集部
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星野源公式ホームページより

 星野源の「うちで踊ろう」動画に合わせ、安倍晋三首相が私邸でくつろぐ動画をツイッターに投稿し、大炎上している。炎上の対象は星野源や所属事務所にまで及び、「明らかに仕込みだろ」などと批判も飛んだ。

 安倍首相の動画が大炎上したことをきっかけに、SNSを通じて星野のもとには安倍首相の動画について「政府の要請」を疑う声がぶつけられ、トランプ大統領の選挙キャンペーンで楽曲を使用されたことに抗議したニール・ヤングやローリング・ストーンズのように何らかの声明を出すべきだといった声もあがっていた。

 そして13日深夜、星野源はInstagramのストーリー機能を通じてコメントを出した。

 星野源は他のアーティストやネットユーザーが投稿したコラボ動画への感謝を述べる一方で、<ひとつだけ。安倍晋三さんが上げられた“うちで踊ろう”の動画ですが、これまで様々な動画をアップして下さっている沢山の皆さんと同じ様に、僕自身にも所属事務所にも事前連絡や確認は、事後も含めて一切ありません>とコメント。安倍首相の動画には、星野源自身も、所属事務所のアミューズも関係がないと明言した。

星野源は安倍首相の動画に謝意を示さず

 星野源の「うちで踊ろう」動画は、4月3日に彼がInstagramに<誰か、この動画に楽器の伴奏やコーラスやダンスを重ねてくれないかな?>とのコメント付きで、1分ほどの短い動画を投稿したことから始まる。次のような歌詞だ。

<たまに重なり合うような 僕ら/扉閉じれば 明日が生まれるなら/遊ぼう一緒に/うちで踊ろう ひとり踊ろう/変わらぬ鼓動 弾ませろよ/生きて踊ろう/僕らそれぞれの場所で/重なり合うよ/うちで歌おう 悲しみの向こう/全ての歌で 手を繋ごう/生きてまた会おう/僕らそれぞれの場所で/重なり合えそうだ>

 これに、三浦大知、西島隆弘・日高光啓(ともにAAA)、HISASHI(GLAY)、モーニング娘。’20、黒沢薫(ゴスペラーズ)、中島美嘉、青山テルマ、加藤ミリヤといった人気アーティストがハーモニーや楽器演奏やダンスを重ねた動画を投稿。

 また、大泉洋、川口春奈、香取慎吾、宮野真守、椿鬼奴、りんごちゃん、ガチャピン&ムック、ハローキティをはじめとしたサンリオキャラクターなど、ジャンルを問わずコラボが生まれるムーブメントとなった。

 このトレンドに安倍首相も乗っかった。安倍首相は4月12日、星野が「うちで踊ろう」を歌う動画に、安倍首相が自宅でペットの犬と戯れたり、お茶を飲んだり、本を読んだり、テレビを見る様子を重ねた動画を投稿。だが安倍首相をはじめ政権中枢を担う立場にいる人々には、新型コロナウイルス感染拡大を防止し、かつウイルスの悪影響で経済的な打撃を被る人々への支援、今後の社会政策の見通しを立てるなど、様々な「すべきこと」がある。「うちで踊」っている場合ではない。それゆえ首相動画には批判が相次いだのだ。

 前述したように星野はInstagramのストーリーで「うちで踊ろう」企画に参加してくれたユーザーの動画を紹介し、謝意を示している。最近でも、柴犬まる、DAOKO、高橋茂雄(サバンナ)、マット・ジョンソン(ジャミロクワイ)といったアカウントの動画を紹介しているが、安倍首相の投稿した動画は紹介しておらず、謝意も示していない。

「おうちで踊ろう」ではなく「うちで踊ろう」である理由

 星野がつくった楽曲のタイトルが「うちで踊ろう」であり、「おうちで踊ろう」でないのには、意味がある。

 4月7日深夜放送『星野源のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)で星野は、新型コロナウイルス拡散防止のため「外出自粛」が盛んに呼びかけられる現在でも仕事で外に出なければならない人たちの気持ちも慮って「うちで踊ろう」を書いたのだと語っている。

 医療関係者、保育士、運送関係者、スーパーやコンビニなどの生活必需品を扱う小売業に従事する人々など、コロナ感染のリスクに怯えながら外に働きに出ている人は数多い。家にいたくても外へ働きに出なければならない人がいるという想像力を持たず、一律に「家にいなさい」と呼びかけるのは、言葉の暴力ですらあるのではないか。『オールナイトニッポン』で星野はこのように語っている。

<そういう人たちに向かってですね、やっぱり「外に出るな」って言うとさ、なんか辛いじゃないですか>

<なんかそういう「家にいましょう」みたいなことじゃない、「外に出ないで」みたいなことじゃない曲を作りたいなと思ったんですよね>

 だから、「うちで踊ろう」は、<うちで踊ろう ひとり踊ろう><うちで歌おう 悲しみの向こう>と呼びかけるが、その呼びかけで「家」という言葉は使わず、<それぞれの場所>と語りかけるのだ。

 その真意は「うちで踊ろう」の英語タイトルによく表れている。「うちで踊ろう」の英語タイトルは「Dancing on the Inside」。「Home」ではない。“心の内(Inside)”で踊るということなのである。

炎上に対して安倍政権の反応は?

 一方で、現在の日本では、前述したような医療やライフラインに関わる人以外もまだ、オフィスへ働きに出ている。4月13日月曜の朝も、多くの人々がターミナル駅の改札をくぐっている様子を各局のワイドショーが取り上げていた。

 緊急事態宣言を出して以降、政府は人と人の接触機会を8割削減すべく盛んに呼びかけているが、首都圏ではラッシュ時刻に満員電車の発生する状況さえ改善していない。

 その理由のひとつとして大きいのは、日本政府の経済補償が未だ貧弱であるためだろう。休みたくても、生活のために休めない。また事業者側が社員を在宅勤務に切り替えるためのインフラ整備などができないケースもあるだろう。

 今まさに存続の危機に立たされている業界もある。星野が属している音楽業界はその筆頭だ。

 2月26日に政府がイベント業界に自粛を要請して以降、多くの興業が中止となっているがそれに対する補償はなく、ライブハウスなどは閉店に追い込まれている。

 「SaveOurSpace」というライブハウス・クラブ・劇場などへの助成金を求める署名運動も起き、30万筆もの署名が集まったが、政府はいまだになんのリアクションも起こしていない。

 この状況で、安倍首相が「うちで踊ろう」の企画に乗っかり、豪邸でくつろぐ貴族のような生活の一端を見せつければ、それは批判が巻き起こるのも当然と言える。

 4月13日、菅義偉官房長官は「うちで踊ろう」動画について、「いろんな見方がある」としながら、「35万を超える『いいね』をいただくなど大きな反響がある」と語り、ポジティブな受け止め方をしている様子だった。だがSNSにおける「いいね」は必ずしも賛同の意思表示ではない。日本政府に国民の痛みと向き合う意思はあるのだろうか。

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