糸井重里また炎上「スポーツ中継の代わりに医療現場のライブ番組を」

文=wezzy編集部
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糸井重里Twitterより

 糸井重里が、スポーツ中継の面白さを引き合いに出しつつ、「医療・保育・インフラの現場を報道してほしい」とエッセイに書き、批判を浴びている。

 4月26日、糸井重里は自身が主宰するサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」のエッセイコーナー「今日のダーリン」で、あらゆるスポーツ大会が中止になってしまった日常を嘆き、スポーツ中継を見る楽しさについて分析。

<観客席やテレビの前にいて、無力で熱心なじぶんの前で、いまあのチームが、あの選手ががんばっている。そういう「ナマモノ」の活動が見たくて、ぼくらは声援を送ったり感動したりしていたのだ。のっぺりとしたぼくらの日常に、全身全霊でなにかしている姿を見せてくれる。これが観戦スポーツのおもしろさの真髄だったと思う>

 そのうえで、コロナ感染リスクを抱えながらも医療・保育・インフラの現場で働いている人たちを、“選手”に喩えた。

<この人たちは、ライブな行動を禁じられたぼくらにとって「全身全霊でなにかしてくれている」選手なんだと思う>
<「今日、いまも、こんなふうにはたらいています」という「警察24時」的な方法で、番組つくれないかな。ライブではたらいている人たちへの、さらなる敬意にもっと繋がってくれると思うんだ>

 これは、スポーツ中継がなくなった代替品として、働いている人たちの姿を見せてほしいというグロテスクな提案だ。

 新型コロナウイルスが猛威をふるい、不要不急の外出自粛が要請されている状況でも、現場で働く人々がいる。そうした人たちへの敬意を示すことはもちろん大事だ。一部では医療従事者や物流ドライバー、およびその家族らへの差別が横行していることも明らかになっており、メディアが積極的に感謝を発信することには意味があるかもしれない。

 しかし糸井重里が綴った言葉は、そうした文脈ではない。「スポーツ中継の楽しみを奪われたテレビ視聴者のための、エンタメとしての代替品」として、現場で働いている姿を見せてはどうか、という提案だ。これは危険を承知で働く人々をヒーロー扱いして消費することとイコールだろう。

糸井重里「誰かが誰かを責め立てている」

 糸井重里は前出エッセイで<テレビ局の皆さん、人を減らしたスタジオで限られた情報を元に床屋政談をしているより、「いま懸命にはたらいている前線」のようすを、ステイホームしている人たちに、伝えてくれないか>とも綴っている。

 「ワイドショーは政治批判をするな」とも読めるこの一文は、先日、同人がTwitterに投稿して炎上した文章に共通するものだ。4月9日、糸井はこのようなツイートをポストした。

<わかったことがある。
新型コロナウイルスのことばかり聞いているのがつらいのではなかった。
ずっと、誰かが誰かを責め立てている。これを感じるのがつらいのだ>
<責めるな。じぶんのことをしろ>

 この「責めるな」は、言葉を変えれば「口をつぐめ」となる。それは転じて、「権力に歯向かうな」「権力がメチャクチャな施策を打ち出しても黙って従え」ということになりかねない。

 もし国民が政府のコロナ対策に唯々諾々と従っていたとしたらどうなったか。国民が声をあげなければ、休校措置で在宅を余儀なくされる保護者への補償も、現金10万円一律給付もなく、いまごろ私たちには「お肉券」と「お魚券」が配られていた可能性がある。

この状況でも働かざるを得ない人はたくさんいる

 スポーツ中継の代わりにライブ中継してほしい現場として糸井重里は「都庁」「病院」「保育園」「マスク工場」「運送会社」「農園」「水道局」を挙げている。

 しかし、いま外で働いているのはこうした「社会の役に立つ仕事をしている人たち」だけではない。まともな休業補償が出ないがために働かざるを得ない人、事業者が自粛要請に従わず通勤を余儀なくされる人などもいる。

 日本には糸井重里のように名声も財力もあり、多少の期間は補償なしでも悠々と「STAY HOME」できる層もいれば、働かなければ今月の家賃さえ払えない層もいるのだ。後者の層が補償を求める声も、「誰かを責める」ノイズにしか聞こえないのだろうか。

 リスクを承知で働く医療従事者やライフライン維持に努める人々も、倒産や雇用の喪失を恐れて働く人も、同じ国民だ。彼らを感動のネタとして消費する提案も、「責めるな」などと叱咤することも、上空から見下ろしているからこそだろう。糸井重里の2つの炎上はどちらも共通した心性から出ている。

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