
GettyImagesより
外出自粛生活を求められる今、前向きなストレス解消法として家の片付けや料理にはげむ人が増えているようですね。当連載的には、一体何ができるでしょうか。と考えたとき「どのタイミングで出すんだ!?」と今まで握りしめていた、アレが浮かびあがってきました。
それはトンデモ界の北極にたたずむ謎物件「ジェムリンガ」の誕生秘話です。こんな時こそ、心にゆとりを! 不要不急でしかないこの話を、お披露目してしまうタイミングかもしれません。
当連載をたま~にしかご覧にならない方、もしくは初めてご覧になる方に向けてご説明しておきましょう。ジェムリンガとは、約5個のパワーストーンを銀のパーツで棒状につなげた「ヒーリングジュエリー」です。
販売元は「効果効能はない」「使い方は自由」と説明して逃げ道を作りつつ、トークのそこここに「腟に入れて使う人が多い」とPR。広告塔的な女性たちで演出しながら「熱く潤う腟になる」「子宮の冷えが改善される」なる変化を謳っていました。それをカリスマ的なブロガーである子宮系女子たちが派手に宣伝&販売したことで、スピリチュアルグッズに興味のない層にも広く知られるように。そして当然のごとく批判が多発した……という物件です。
私が把握している限りでは、現在ジェムリンガは第三形態に進化中。第一形態は、腟に挿入する「ジェムリンガ」として。第二形態は「リュウジュ」というマッサージに使うための器具として。第三形態は、販売中止期間を経て、金属パーツがマイナーチェンジされてリニューアル販売されている新生ジェムリンガです←イマココ。
今回ご紹介したいのは、第一形態から第二形態へと移行した時期や、生まれた背景について。「ジェムリンガ・ザ・ビギニング」とも言える裏事情を語ってくれたのは、第二形態のジェムリンガを使ったセラピー(リュウジュセラピスト)を学んだという女性、Kさんです。
正直、Kさんの語る体験が、どこまでが真実であるかは、今となっては確かめようのない部分もあります(登場人物の中にはすでに亡くなっているという噂のある方もいますし)。ですから今回ご紹介するこのエピソードは、フィクションではあるものの「トンデモ・アラビアンナイト」的に楽しんでいただくのがいいかもしれません。そうですね、登場人物は実在しますが、一応全員仮名にしておきましょうか。関係者やウォッチャーが読んだら、バレバレだけど。
「女性性」にコンプレックス
ヨガインストラクターであるKさんがジェムリンガを使う施術者「リュウジュセラピスト」となったのは、まったく面識のない「開発者」を名乗る女性から声をかけられたのがきっかけ。インストラクターとしての活動をブログにつづっていたところ「無料でいいから勉強会に参加しないか」とお誘いのメールが届いたのです。
Kさん(以下、K):指定された場所までの交通費や宿代は自腹でしたが、リュウジュセラピーを学ぶ講座代はいらないというのです。無料なら……と好奇心も手伝い、参加してしまいました。
リュウジュセラピーは、施術者にライセンスを発行するような資格ビジネスではなく、プロアマ問わず誰でも名乗れるものでしたが、育成講座はそれなりの金額をとっていたようです。私たちは『一期生』ということになっています。
そこで教えられるのは、ジェムリンガをマッサージャーのように使い服の上からリンパを流したりする方法。いわゆる普通のマッサージのテクニックと大差ないんですが、『女性性の開花』を謳っていたのが特徴だと思います。
『女性性』は昔から私がとても悩んでいた部分でもあったので、そこに惹きつけられました。自分の中の女の部分を、なかなか受け入れられなかった。でもそれを相談するような場所も、ありませんでしたし。
女性性開花!! 今でも子宮系女子の間で多用される、お約束のフレーズですね(転じて生じた『自分ビジネス』界隈や、設定変更界隈も同様に)。
K:セラピスト育成講座では、こんなことが言われていました。昔の女性は和服だったり肉体労働がきつかったりで骨盤が締まっていて、エネルギーをためられる体の構造だった。ところが今はそれらがなく骨盤が広がりがちでエネルギーがダダ漏れになる。だから、このリュウジュ(ジェムリンガ)を使ってエネルギーを蓄える体にしよう……という感じです。マッサージだけでなく、骨盤周りの筋肉を整える施術やボディワークの指導も行っていましたね。
そこでとどまっていれば、ごく真っ当な「セラピー」である印象(エネルギーがどうこうはよくわかりませんが)。しかし真っ当なものは競合も多く、目新しさもなく、儲からないのが世の常……。
「石を挿れたい!」
K:リュウジュセラピーが考案される前の段階で、腟に入れるという使い方がありましたので、それとごく普通のボディワークやマッサージもひっくるめて『女性性の秘儀』というとらえ方をされていましたね。そこに集まったセラピスト候補たちもユーザーたちも、何かしら女性性に悩んでいる方が多かったです。
ジェムリンガは「女性であることを思い出させてくれるツール」「自分の中の『女性』の声を聴く」「自分を知る」など、さまざまなキラキラトークで宣伝されていましたねえ。なるほどそれは一定の層に、思いっきり響くということですか。
K:そうして勉強会に参加するうち、ジェムリンガが生まれた経緯を知ることになります。発案者は、私に声をかけてくれた、月子さんという女性。彼女が三重県の五十鈴川で性器の禊をしていたときに、石を挿れたい! というインスピレーションが沸いてきたとかで。
伊勢神宮のお清めスポットである五十鈴川で、一体何をしとんじゃい。五十鈴川のとび石を渡ったり、水を汲んで持ち帰ったりするのは参拝客定番のお楽しみですが、まさか石を挿れたいという発想を抱く人もいたとは。
K:で、あれこれ試したけどしっくりせず……というタイミングで出会ったのがシルバー商の猿田氏。現在ジェムリンガの開発者・販売者とされている宝石商です。月子さんの話を聞いた猿田氏が、パワーストーンと銀のパーツを組み合わせたジェムリンガを試作し、月子さんが体験。腟に挿入して踊ってみたところ、すごくしっくりきた。それで世の女性に広めたい! となったんだとか。月子さんに関しては、猿田氏との不倫関係のゴタゴタで、ジェムリンガの布教や販売から手を引いてしまいました。近づけなくなったといったほうがいいのか。
ちなみにこの「ジェムリンガの考案者」を主張している人物は、ほかにも存在します。2016年の冬に頒布された某怪談サークルの同人誌に「2011年にインタビューした、歩き巫女※・F氏こそが発案者」と紹介されているのです。同書の表紙に入っているキャッチコピーは「アソコに入れるパワーストーンをつくった伝説の遊女!?」。オンリーワンを自負するスピ女子たちのキャットファイトの燃料になりそうなキャッチコピー、やめてやれや~。
1 2