ロイホ閉鎖、サイゼ改修…ファミレス業界の動きに見えるコロナ共存社会

文=加谷珪一
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wikipediaより

 ファミレス大手のロイヤルホールディングスは、新型コロナウイルスによる影響から、基幹チェーンである「ロイヤルホスト」や「天丼てんや」など、不採算となっている70店舗の閉鎖を決定した。一方、サイゼリヤは感染の長期化を見据え、店舗レイアウトの大幅な変更に乗り出している。

ロイヤルは不採算店舗の閉鎖を実施

 ロイヤルホールディングスでは政府の緊急事態宣言発令を受けて、一部店舗の休業や営業時間短縮を実施してきた。その結果、4月の既存店売上高はロイヤルホストが前年同月比57.9%減、天丼てんやが41.9%減と大幅なマイナスとなっている。このほか機内食事業や空港ターミナル事業などにおいても軒並み7割から8割の減収に見舞われた。

 2020年1〜6月期決算(中間決算)は、売上高が42.9%減の390億円、純損失は155億円に達する見込みで、同社の純資産の約3分の1が吹き飛ぶ計算である。同社は銀行との間で、一定の範囲内でいつでも資金を引き出せる契約(コミットメントライン)を結んでいるので、当面の資金繰りに問題はないが、このまま需要減が続いた場合、経営の屋台骨を揺るがしかねない。このため同社はコロナ長期化に備えた構造改革の実施に乗り出しており、70店舗の閉鎖もその一貫として実施される。

 ファミレスをはじめとする外食チェーンは、基本的に規模の大きさを追求するビジネスといってよい。理想ではすべての店舗が十分な採算ラインに乗っていることが望ましいが、店舗ごとの利益にこだわり過ぎると、出店するエリアに偏りが発生してしまう。

 店舗の知名度は集客に大きく影響するので、顧客が強く意識していなくても「そういえばあそこにもお店があったな」とイメージしてもらうことはとても重要である。かつてファミレスが24時間営業にこだわっていたのも、24時間お店を開けていると顧客が「いつでも開いている」という安心感を持ち、結果的に来店頻度が上がるからである。

 このため多少、採算が悪い店舗であっても、立地条件によっては出店を継続するケースがあり、顧客に対するプレゼンス(存在感)の維持と店舗ごとの採算をどうバランスさせるのかが企業の腕の見せ所だった。だが、コロナ後の需要減少社会においては、そうした「贅沢」は言っていられない。

 同社では投資計画の4割を一時的に先送りし、各種経費の見直しも実施する。加えて店舗ごとの採算を厳しく判定し、今後も収益の見込めない70店舗は閉店する。これはグループ全体の1割に相当する数であり、創業以来のリストラになるという。

 同社では家庭用の高級冷凍食品であるロイヤルデリなど、コロナの影響下でも販売増加が見込める事業を強化するとしているが、基本的には規模の縮小と、既存店の収益構造を見直すことで危機を乗り切ろうとしている。

サイゼリヤはレイアウト変更で一斉休業

 一方で、サイゼリヤは5月18日、コロナウイルスの影響長期化を見越して一斉休業に踏み切った。休業の理由は、店舗内のレイアウトや設備を変更するためである。

 同社は緊急事態宣言の発令を受けて、店舗の休業や営業時間の短縮、酒類販売の制限を行ってきたが、一部地域で発令が解除されたことから、閉店時間を21時にすることを決定している(東京などは引き続き、営業時間短縮)。同社は大規模な店舗閉鎖は発表していないが、ロイヤルホスト同様、足元の業績はかなり厳しい。4月末時点での既存店売上高は前年比61.4%のマイナスとなっている。

 同社では売上高の減少に対応するためテイクアウトのメニューを4月から大幅に拡充しているが、5月15日からさらにテイクアウトのメニューを増やしている。テイクアウトの限定商品である「エビクリームグラタン」を新登場させたほか、人気メニューのミラノ風ドリアもメニューに加えた。

 テイクアウトのメニューを強化すると同時に、既存店舗のレイアウト変更を行い、店舗での営業も継続する方向性と考えられる。レイアウト変更後は、店舗あたりの席数が減少する可能性が高く、客単価が変わらない場合には減収要因となるだろう。

 今後、テイクアウトの売り上げがどの程度、伸びるのかは不明だが、テイクアウトによる収益増で店舗のレイアウト変更による収益減を相殺できるのかがポイントとなる。

これからはチェーン店ばかりになる?

 コロナウイルスによる影響が長期化するのはほぼ確実な情勢となっており、夏に向けて感染が一段落したとしても、冬には再び大規模な感染拡大が発生すると予想する専門家は多い。感染拡大が確認されれば再び営業自粛が求められる可能性が高く、仮に感染が拡大しなくても、対策の継続的な実施はほぼ必須である。当然のことながらこれらはすべて、飲食店にとって減収要因となる。

 こうした状況下において飲食店が取れる選択肢は少ない。基本的には全体の規模を縮小して確実に収益を上げられる店舗に絞っていくのか、または店舗あたりの収益力を犠牲にしても店舗数を維持するのかのどちらかになる。デリバリーなど新しい収益源を模索するのは当然のことだが、各社が取り組むことなので競争は厳しいだろう。

 ロイヤルは他社に先がけて店舗網の縮小に乗り出したが、サイゼリヤは今のところ店舗網の維持を目指していると考えられる。他の飲食チェーンもほぼ似たような状況と考えられ、まずはテイクアウトを拡充し、既存店舗での収益減を補うことになるだろう。

 だが、このような方策が実施できるのは、多数の店舗を持ったチェーンに限られる。店舗数が少ないチェーン店や単一の店舗で営業している小規模事業者の場合、店舗網の縮小という手段は選択できない。外食メニューを強化して既存店舗での減収をカバーし、コスト削減を進めるだけで精一杯だろう。

 非常に残念なことだが、こうした状況が今後も継続した場合、体力のない零細な飲食店の中には経営を維持できなくなるところが出てくるだろう。結果としてすべての飲食店に占める大規模チェーン店の比率が上がっていくことが予想される。

 これまで外食産業は過当競争と言われ、需要に対して店舗数が多すぎるという問題が指摘されてきたが、もし店舗の淘汰が進むのだとすると、過当競争は回避されて価格が上昇し、結果的に働いている人の賃金は上がるかもしれない。だが、経営を継続できなかった店舗で働いていた従業員は、他の業界への転職を余儀なくされる。

 個性ある小規模店舗が減り、チェーン店の比率が上がってしまうのは何とも寂しい限りだが、コロナの環境下ではこうした変化もやむを得ないのかもしれない。

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