『テラスハウス』編集に悪意も わざとSNS炎上させ話題を稼ぐコンテンツの限界

文=wezzy編集部
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『テラスハウス TOKYO 2019-2020』番組ホームページより

 5月23日、テラハに出演していた木村花さんが急死したことを受けて、『テラスハウス TOKYO 2019-2020』(フジテレビ系、Netflix)の制作と放送中止が決定した。一方で、『テラスハウス TOKYO 2019-2020』内での演出やスタッフからの指示、いわゆる「ヤラセ」を告発する記事に、当のテラハ出演者が反論している。

 告発記事は「女性セブン」2020年6月11日号(小学館)によるもの。「テラハの現役スタッフが告白 泥臭い人間模様を狙う」と題されたこの記事では、『テラスハウス』の現役スタッフが取材を受けており、撮影現場においてスタッフからの演出指導があったと明かした。

 記事によれば、出演者同士の衝突を映した場面があると視聴者の反応が良くなることから、スタッフが「もっと怒鳴り合って!」と指示を出すこともあったという。過剰な場面が放送されることでSNS上での出演者へのバッシングが過熱していることにスタッフも気づいてはいたが、注目度の上昇を喜んでいた制作陣は、SNS炎上を生む演出を止めることができなかったと証言している。

 しかしこの記事に対して、テラハ出演者の新野俊幸と水越愛華がSNSを更新し、事実と異なる部分があると声をあげた。彼らは「直接的な演出指導はなかった」と言い、一方で編集に怒りを感じたことはあると言及した。

 新野はTwitterに<「事実」が大事だと思うからコメントするけど、俺は何も指示されてないよ、忖度なしで。編集にはムカついてたけどな>と投稿。

 水越もInstagramに<私も、編集には怒りや悲しみを感じる事は沢山ありました>と綴っており、編集によってある一部分が誇張されたり、出演者同士のやり取りが違う角度の見せ方にされていたことを示唆している。

 ある程度の素材を撮ってしまえば、あとは編集によって、いくらでもストーリーをつくり変えることが可能だ。現場で起きていたことと真逆のフィクションをでっちあげることすら難しくない。

 リアルを売りにした番組である以上、演出・編集それ自体が「ありのままの姿を放送しているのはずなのに、嘘だったのか」と非難されるのもわかる。だがそれ以上に問題なのは、SNSでの視聴者反応を盛り上げるために敢えて悪意のある編集をし、炎上させるような手法である。

 木村さんがバッシングの対象となったきっかけは、リングで着るコスチュームが入った洗濯機を他の出演者が誤って使ってしまい、コスチュームが縮んで着られなくなったことに怒ったためだった。感情を剥き出しにして相手を責める姿を「性格が悪い」と批判する声がネットで相次ぎ、のみならず彼女の容貌や人格を誹謗中傷する流れに発展していった。番組側の編集次第では、炎上は防げたはずだった。

 『テラスハウス TOKYO2019-2020』は、Netflixで配信された後にフジテレビで放送される流れになっているが、Netflix配信時ですでに炎上しているのにも関わらず、そのままフジテレビでも放送し、さらに関連する未公開動画を3本配信して、炎上を加速させた。

 テラハ内で何が起ころうとも、視聴者が叩く矛先は出演者であり、番組の制作者には向かない。リアリティーショーだからだ。番組が用意したものは素敵な家と車というシチュエーションのみで、あとは出演者次第。出演者の行動を何台ものカメラで記録し、流しているという“てい”になっている。

 しかし、考えなくてもわかることだが、記録した映像をそのまま放送しているわけがない。6人ぶんの数日間をたった一時間やそこらでまとめ、視聴者がドラマのストーリーを追うように見られるのは、演出と編集あってこそだ。

 近年はリアリティー恋愛番組が人気を博して大量につくられており、そのなかには、『オオカミくんには騙されない』(AbemaTV)、『バチェラー・ジャパン』(Amazonプライム・ビデオ)のように大ヒットを記録してシリーズ化されているものもある。

 その多くに共通しているのが、SNS炎上で盛り上げることを織り込んで企画がつくられているということである。そのために、出演者同士の衝突、バッシングを焚き付けるような演出が施され、視聴者もそれをエンターテインメントにしている。

 たとえば、『テラスハウス』と同じ番組制作会社のイースト・エンタテインメントが担当した、初対面の男女による一週間の同棲生活が描かれるリアリティー番組『ダブルベッド』(TBS)でも、炎上はあった。

 俳優の武田航平とモデルの山本ソニアの同棲生活が描かれた回で、最終日に武田が山本のゴミを放置して片付けない癖などにダメ出しをし、山本が泣き出す場面があった。これの放送終了後に武田のInstagramが炎上。コメント欄に「人としてありえない」「神経質だし、心狭すぎ」といった言葉が多く書き込まれた。

 人のとる行動に、全く無関係の他人が「ありえない」等と文句をつける。しかもその文句を、直接相手の耳に届かせることもできる。見せられたものをSNSで絶賛したり叩いたりする行動は、すっかり日常的な動作としてこの社会に馴染んでしまった。リアリティー番組はこうした消費者行動を利用したコンテンツなのだ。

 こうしたリアリティー番組の演出が出演者を傷つける問題は世界各国で起きており、韓国の『チャク』(SBS)、イギリスの『ラブ・アイランド』(ITV2)でも自殺者が出ている。つまり、リアリティーショーというフォーマット自体に重大な欠陥があると言えるのではないか。

 『テラスハウス』公式ホームページに掲載した番組打ち切りの告知文には、木村さんへのお悔やみとともに、<「TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020」に関しましては、制作を中止する事を決定致しました>と書かれている。あくまでも木村さんが現在進行形で出演していた「TOKYO 2019-2020」は打ち切りだが、まさかテラハのフォーマットを生かした番組制作はまだ続けていくという意図があるのだろうか。この番組フォーマットを、もっと言うならばSNS炎上ありきのコンテンツづくりを見直さないことには、再発防止は不可能だろう。

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