新型コロナウイルスの影響で困窮するトランスジェンダーや同性間DVの相談先

文=遠藤まめた
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トランス男子のフェミな日常/遠藤まめた

 新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が先日、全都道府県でようやく解除された。とはいえ、しばらくは気軽に出歩けず、また経済的な打撃を受けて不安定な生活がこれからも続く人は多いだろう。この状況を受け、先週木曜の夜に「LGBTQコロナ期間中の生活相談LIVE!」というライブ配信を行ったところ、役に立つリソースをたくさん教えてもらえたので、今日はそれをご紹介したい。

 このライブ配信は私が呼び掛けて、弁護士の宮井麻由子さん、自立生活サポートセンター・もやい理事長の大西連さんと有志で企画したものだ。宮井さんはこの数年、トランスジェンダー が直面しやすい労働相談についてQ&A方式でまとめた冊子「トランスジェンダー としごと」(リンク先から無料でダウンロードできる)の作成に関わったり、昨年台風19号による被害が発生した際に、避難所に「性的少数者の人の相談にも乗っています」と書いたチラシを長野県弁護士会が配布することを考案したりしている。

 このチラシは弁護士会の会長みずから長野市内の全避難所に持ち込んだそうだ。他方、大西さんは生活困窮を抱える人たちの相談に応じる中で、LGBTQの当事者と多く接してきた。安心して話しやすいよう、もやいではLGBTQ団体のリーフレットなどを相談に訪れた人の目に届くところに置いているのだという。

LGBTや男性被害者の相談を受け付けてくれるDV相談は

 ライブ配信では、まず世界中で急増しているDV被害について、同性間で発生した場合には内閣府が運営している「DV相談プラス」(電話・メールは24時間対応、チャットは12時〜22時)が使えるという紹介があった。

 自治体が行っているDV相談は、中にはLGBTや男性被害者からの相談を受け付けるとホームページに明記されているものもあるが、よくわからない記載になっている機関も多い。「DV相談プラス」ではこのような既存の支援機関との調整も行えるとのことなので、まずはここに連絡してみるのがよさそうだ。

生活や働き方に困っているときの相談先

 生活や働き方が不安定になり、弁護士に相談してみたいと思った場合に、日本労働弁護団が行っているホットラインでは無料の相談を受け付けている。日本労働弁護団では、職場が感染防止措置をとってくれない、経営が苦しいから解雇されそうだ、公共料金が払えなくなった、などの相談に対する「新型コロナウイルス感染症に関する労働問題Q&A(Ver.2)」を公開しており、これもとてもきめ細かくわかりやすい。

「個室対応」が主流のヨーロッパ

 生活保護を利用する際、同性パートナーとの同居を解消しなくてはいけないのではないかと悩む人がいるが、制度上その必要はないとの案内もあった。住まいが無くなった場合、性別で分けられた大部屋を案内されトランスジェンダーの人の安全が脅かされることがこれまで起きてきたが、昨今の「三密対策」によりアパートなど個室の案内が原則となっている。

 「路上生活から抜け出したい人が制限の多い施設に入れられ、ストレスの多い共同生活をなんとか乗り越えてようやくアパートでの一人暮らしにたどり着く」といった従来型の支援よりも「最初からアパートで一人暮らしをしてもらう」支援のほうがつまずきが少ない、という考え方(ハウジング・ファースト)がヨーロッパなどで主流になっているが、日本もこれを機に個室対応が基準になってほしい。

 生活困窮に関する相談はもやいでも行っており、毎週土曜には新宿で「ごはんプラス」という無料の食料品配布と健康相談、生活相談の集まりもあるので、移動圏内にある人はよかったらぜひ利用を。

 なお、もやいが厚生労働省あてに出している政策提言の中には、重点項目のひとつに性的少数者に関する対応の改善が含まれている。いわゆるLGBT団体ではないNPOが、このように政策提言していることは本当に心強いことだ。また、番組内では宮井さんが弁護士として日々使っている書類の様式に「不必要な性別欄」があり、いつも塗りつぶしたものを使っているというエピソードがあった。当事者だけが問題に気づいて悩み、声をあげさせられる仕組みを、ふたりとも変えようとしていたことがうれしかった。

 今後、トランスアライの具体例として「いらない性別欄を塗りつぶしている人」を積極的に使っていこうかなと思うが、どうだろうか。

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