アフターコロナを就職氷河期にしないために これからの新規大卒就職-採用のあり方

文=妹尾麻美
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GettyImagesより

 21年3月卒の就職-採用活動が新型コロナウィルスのもたらす外出自粛や経済悪化により、混乱をきたしている。webで選考することを宣言した企業や採用活動を中断した企業もある。さらには、採用自体を中止する企業もあるといった報道もでてきている。

 新型コロナウィルスの感染拡大によってもたらされるであろう今後の経済悪化は、来年度以降の新規大卒就職-採用活動にどのような影響を与えるのだろうか。本稿では、日本社会における雇用のあり方を補助線にそれを考えてみたい。

 結論を先に述べると、就職-採用活動が大きく変わるようなものではない、また、就職-採用活動の早期化に歯止めが効かない可能性が高いというものだ。

22卒の就活が始まった!?

 2018年10月、日本経済団体連合会(以下、経団連)はこれまで策定してきた「採用選考に関する指針」について、2021年3月卒の大学生から策定しない方針を決めた。その後、政府が各団体に、大学3年生3月広報活動開始、大学4年生6月採用選考活動開始という現行維持の日程で動くよう要請した(就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議、2018年10月29日)。現在実施されている21年3月卒は、その初めての年に当たる。

 21年3月卒(現在の大学4年生)は東京オリンピックなどに向け、景気も上向きとされていた。検討を待たねばならないが、21年卒はインターンシップも早まっていたなかで、コロナウィルスの影響を被ったと考えられる。

 混乱のなか、一部の大学3年生はインターンシップへの応募が採用のファーストステップになると考え、早々動き始めた。毎年、大学3年の6月からインターンシップのためナビサイトが開設されるが、今後の経済悪化を見越してこの状況下でも動きはじめる学生がいるのだ。

インターンシップの位置付けとジョブ型雇用

 インターンシップの位置付けについては、これまでも議論が行われてきた(インターンシップの推進等に関する調査研究協力者会議 2017)。ここでも、インターンシップからの採用がある場合、就職活動の早期化につながりかねない点や学業に支障をきたす恐れが指摘されている。これらのことから、大学側はインターンシップが実質的な選考を伴わないように企業に伝えてきた。

 一方、経団連は高い能力を持つ人材の雇用を見据えて、長期のインターンシップの導入を推進しようとしている。経団連は「採用選考に関する指針」を取りやめたのち、国公私立大学のトップと「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」を立ち上げた。あまり着目されていないが、この協議会は2020年3月31日に報告書をとりまとめている。ここには、平日の1日限りのイベントは「ワンデープログラム」と呼び、「インターンシップ」と呼ばないことが明記されている[1]。この報告書でも、大学側は就職-採用活動の不透明さを指摘し、学生からみたとき近年のインターンシップが実質的には採用選考プロセスと捉えられていると述べている。他方、休暇を利用した長期のインターンシップを推進することも記載されている。

 この報告書は、2030年に向けて、高い専門性を身に付けた者を雇い入れる「ジョブ型雇用」を念頭においた採用を推進する。ジョブ型雇用とは、ある職務に必要な知識を身に付けた者を、職務を明確にした上で雇い入れる雇用形態を指す(濱口2013)。この場合、労働者はその仕事が企業でなくなれば別の企業に移るなど、雇用の流動性は高くなる。一方、これまでの日本の雇用形態は、長期雇用慣行にのっとり、組織の一員として雇用され、現場で職務に必要な知識を身につける「メンバーシップ型雇用」とされてきた(濱口2013)。

 メンバーシップ型雇用は、入口が限定され「何にも染まっていない」新人を定期採用で雇い入れる[2]。それが新規大卒就職-採用である。経団連はジョブ型雇用への移行を見据え、この雇用形態の変革を模索している。

 しかし、日本経営者団体連盟のプロジェクトが1995年に「新時代の日本的経営」を示し(新・日本的経営システム等研究プロジェクト1995:32-33)、今後の雇用形態について「長期蓄積能力活用型グループ」「高度専門能力活用型グループ」「雇用柔軟型グループ」とすると述べてから25年が経ったにもかかわらず「高度専門能力活用型グループ」が十分に機能しているようには思えない。それは、労働市場の構造、端的にいうならば内部労働市場の仕組みが大きくは変化していないことに起因するだろう。

 この25年間、非正規雇用の増大などの変化はあったものの、新規大卒就職-採用の枠組みが大きく変わったとはいえない。経団連の調査によると、近年の新卒者の採用(最も人数の多い社員区分)で「メンバーシップ型を重視してきた」「どちらかといえばメンバーシップ型を重視してきた」という企業は74.4%にのぼることが示されている(日本経済団体連合会2020年1月21日)。なし崩し的に非正規雇用が増加してきたものの、雇用形態が大きく変わったとはいえないのである。

 教育社会学者の本田由紀(2014)は、仕事(主に男性の正規雇用)、教育、家庭の3つの循環で社会が成立してきたことを「戦後日本型循環モデル」と呼び、90年代以降にこの循環から排除されてしまう人々が増加してきたことを指摘している。雇用形態はたんに働き方の問題のみならず、人生のセーフティーネットと強く関連する(高原2009、本田2014)。それゆえ、雇用形態を変えるということは戦後日本型循環モデルそれ自体を変革することであり、セーフティーネットのあり方をも議論しなければ、変えることはできないと考えられる。

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