9月入学議論の無駄騒ぎと迷走、日本の教育政策があまりにひどい

文=畠山勝太
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日本人を留学させたい?させたくない?

 日本の大学の国際化のために9月入学をという火事場泥棒的な議論も起こりました。これは留学費用を下げる可能性があるものの、それによって外国人留学生が日本に来るということに関してはたいした影響はないと考えられます(詳細な解説は、こちらの記事を参照してください)。

  このことを考えると、「国際化のために9月入学」という議論は、「日本人は海外で勉強して来い」という目的が主であることが分かります。これも先ほど紹介した記事で詳細は解説してあるので興味がある方にはそちらを参照して頂きたいのですが、こちらもほとんど効果が見込めません。

 教育の国際化に関するトレードオフと、外国人留学生への支援を併せて考えると、結局のところ外国人留学生を増やしたいのか、日本人留学生を増やしたいのか日本は決められておらず、迷走していることが分かります。

 しかも仮に100歩譲って、日本人留学生を増やすことが主目的であったとしても、これと矛盾することが行われようとしているのです。

 日本人留学生の少なくない人達が、日本学生支援機構の海外留学支援制度を利用しています。米国に留学する場合、学生ビザ発給のためには十分な留学資金があることを証明する必要があります。私は大学院が生活費も面倒を見てくれているため、大学院がそれを証明してくれるのですが、奨学金を得て留学する場合は、この海外留学支援制度が証明となります。つまり、折角合格したのに、もし奨学金が取り止められる事態が起こると、留学を諦めなければならなくなるケースが出てくるのです。

 これに対して文部科学省は、新規の留学者については、感染症危険レベル3の国・地域への留学は取り止めるようにと発表すると共に、カリフォルニアの州立大学やハーバード大学のいくつかの学部が既に決定したように、もし、大学・大学院側がオンラインで授業を行うのであれば奨学金を支給すると表明しています。オンラインで授業が行われ渡航する必要が無いのであれば奨学金を支給するというのは柔軟性があり、素晴らしい対応と言えるでしょう。

 しかし、米国の州立大学側にとっては、授業をオンラインで実施すると収入の20%以上が消し飛んでしまうので(この点についてはこちらの記事で詳しい解説をしています)、留学先の大学にとっては、かなり難しい選択肢であることが分かります。実際に、私のいる大学があるミシガン州は新型コロナが蔓延した州の一つですが、秋学期を通常通りに実施することを既に決定しています。そして、現在暴動が広がり、密が全く避けられていない状況が全米で発生しているため、9月の入学前に感染症危険レベルが2未満へと引き下げられる見込みはありません。つまり、既に一度奨学金を支給すると言ったにも拘わらず前言撤回し、少なくない数の日本人留学生の卵たちを、留学を諦めざるを得ない状況に追い込んでいます。

 このように日本は、効果が見込めない国際化のための9月入学にあれほど無駄な政治的リソースが費やしたのに対し、今まさに留学に出て国際化の担い手となろうとしている日本人学生に簡単にストップをかけているのですから、大きく矛盾しています。

 国レベルで感染リスクが高いからと留学を一律に止める必要は恐らくありません。例えば、同じ米国の中でも感染リスクが高い州と低い州がありますし、同じ州の中でも感染リスクが高い所と低い所があります(例えば、ミシガン州は感染リスクが高い州ですが、その大半はデトロイト近郊で起きているので、そこから100キロ以上離れた私の大学はそこまで感染リスクは高くありません)。また、仮に感染リスクが高い街にある大学であっても、寮と食堂の利用で大学構内の外に出ないことが可能で、それを遵守する誓約書を書かせたうえで派遣する道筋は無いのか、といった検討がなされても良いのではないかと考えます。

 9月入学で無駄に騒ぐ政治的リソースがあるならば、今まさに留学に出ようという学生達の支援を一律なものから柔軟なものにするためにそのリソースを割き、本当に危ない地域への派遣は止める一方で、大丈夫な地域・方法を見つけ出して一人でも多くの学生を送り出してやれないのかと、大変残念な気持ちになります。

まとめ

 新型コロナの感染拡大は様々な社会問題を浮き彫りにしていますが、日本ではなぜ教育の国際化が必要なのか、何を目指して国際化をしていくのか、が教育政策関係者の間で全くコンセンサスが取れておらず、壊滅的なものであったことをも明らかになりました。

 壊滅的なだけで済んでいればまだ良いのですが、どうでもよい議論に政治的リソースを使い、せっかく大学や大学院から合格を貰っていざ留学へ飛び出そうとしている学生達をへし折らんとしている様子は流石に許容できるものではありません。日本の教育政策関係者に必要な知識やスキルが欠けているのは今更どうしようもありませんが、せめて人ひとりの人生を変える大役を担っているという責任感ぐらいは持ってもらいたいものです。

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