
ワタナベエンターテインメントHPより
大手芸能事務所・ワタナベエンターテインメントの常務取締役である大澤剛氏が、自身のプロデュースする男性アイドルのメンバーに対してセクハラを行っていたことを報じられた。
2020年6月11日付「文春オンライン」によれば、大澤氏は2018年末から1年以上にわたり、プロデュースする男性アイドルグループのメンバーだった20代のA氏とLINEを通じて性的なやり取りを続けたという。
さらに大澤氏はA氏をマンションに呼んで性的な行為を迫り、撮影もした。移動中のタクシーや撮影中のスタジオでもわいせつな行為をしたと「文春」は報じている。大澤氏は「彼から誘ってきました」としながらも、マンションに呼びキスしたことは事実であると認めているそうだ。
A氏から大澤氏への恋愛感情はまったくなかったというが、A氏はワタナベエンターテインメントのみならず日本の芸能界全体でも非常に強い権力をもつ大澤氏の誘いを断ることもできず、好意的な感情をもっているような演技を続けざるを得なかったと後悔を語っている。
圧倒的な立場の違い、権力差を利用した典型的なセクハラ(性暴力)と言えるが、これと非常によく似たケースが日本の芸能界では黙殺されてきた。昨年7月に逝去したジャニーズ事務所創業者のジャニー喜多川氏による、所属タレントへの性虐待である。
ジャニー氏のセクハラはこれまで暴露本という形で元ジャニーズ所属の男性アイドルが世間に訴えてかけきたが、「週刊文春」(文藝春秋)が1999年から2000年にかけて10回以上に渡りこれを追及するキャンペーンを実施。当時の記事によれば、ジャニーズJr.のタレントがジャニー氏の自宅やコンサート先のホテルに宿泊する際、ジャニー氏から性的な行為を強要されたという。
ジャニー氏の誘いを断れば、事務所内での待遇が悪くなり、将来的なデビューもなくなってしまうかもしれない恐怖心から、少年たちは性的な誘いを拒絶することができなかったと明かされた。
ジャニーズ事務所とジャニー氏は同誌記事によって名誉を毀損されたとして、東京地裁に民事訴訟を起こした。しかし結果的に、この裁判によってジャニー氏のセクハラは事実であることが認められたのだ。だがその判決を伝えたのはニューヨーク・タイムズなど一部の海外メディアに限られ、日本では広く知られていない。
今回、匿名の元男性アイドルが大澤氏にセクハラを受けていたことを明かしたわけだが、おそらくこの問題もスポーツ新聞やワイドショーが後追いすることはないだろう。しかし大手芸能事務所と癒着し過剰に忖度するメディアの態度が、業界の悪しき構造を助長していると言えるのではないか。