職場で孤立するアウティング被害者を、ひとりにさせない方法

文=遠藤まめた
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トランス男子のフェミな日常/遠藤まめた

「勇気を出して打ち明けたのに裏切られて、こうして今も勇気を出して話しているのに、どうして答えてくれないんですか」

 アウティングされたAさんが社長に尋ねるが、社長は沈黙したままでいる。権利を侵害されたLGBT当事者が、こうやって相手と直接話し合いの場を持てるのは画期的だ。いったいどれだけの当事者が、これまで声をあげることができず、職場からフェードアウトしてきたことだろう。闘うことを決めたAさんの気持ちと、Aさんを孤立させなかった「仲間」の存在に胸が熱くなった。

 Aさんが職場でアウティングされたのは昨年のことだ。株式会社イデアルパートナーに入社したAさんは、入社時に緊急連絡先を提出するよう求められた際、同性パートナーの連絡先と、豊島区のパートナーシップ制度を利用していることを伝えた。これが職場への初めてのカミングアウトだったが、その1カ月後、上司はパートの従業員に彼の性的指向を同意なく暴露し、Aさんはその従業員に無視されるようになってしまった。

「自分から言うのが恥ずかしいと思ったから、俺が言っといたんだよ。一人ぐらいいいでしょ」

 飲みの席で上司がそう笑いながら話すのを耳にして、Aさんは言葉を失った。パートの従業員には何度話しかけても無視され、アウティングされたことが頭から離れなくなる。やがてAさんは不眠、頭痛、対人恐怖に襲われるようになり精神疾患を発症する。

 おそらく日本中に、Aさんと同じようなLGBT当事者はいるのではないかと思う。職場でアウティングされたり、LGBTであることをみんなに言うように強要されたり、差別的な発言や暴言をはかれたり。体調を崩せば、社会に適合できない自分がいけないのではないかと思わされる。声をあげたところで、自分と一緒に立ち上がってくれる人がどこにいるのかもわからない。そう思って、今この瞬間にもつらい気持ちを抱えている人は少なくないのではないか。

 Aさんは労働組合に入り「仲間」と出会うことができた。ここでの仲間とは同じLGBTコミュニティのメンバーという意味ではなく、職場の理不尽をなくすために一緒に考え、アクションもできる仲間だ。労働組合にはいろんな権利が認められていて、Aさんと社長が話し合いをする場を作れたことも、そこにAさんを応援する仲間が参加できたことも労働組合だからできたことだった。昔そういえば社会科の教科書に載っていた「団体交渉権」というのは、なるほど、アウティングをされた人と一緒に、相手の職場に話し合いにいける権利のことだったんだ。

 今回の事案に取り組んでいるNPO法人POSSEでは6月13日〜14日とセクシュアルマイノリティ向けの労働相談ホットラインも行った。「LGBTの働きやすい職場づくり」は企業へのダイバーシティ研修やコンサルティングの形式で取り組み団体が多いが、困った人を孤立させない労働運動として取り組む動きがもっと強くあって良いと思う。POSSEではボランティアも募集している。もし興味がある人がいたら、ぜひ一緒に活動してほしい。

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