破壊されるコロンブス像と「風と共に去りぬ」〜全米デモ:奴隷制と向き合うアメリカ

文=堂本かおる
【この記事のキーワード】

●「ルーツ」

 『風と共に去りぬ』の奴隷描写が批判される理由をよりはっきりと知るための比較作品として、『ルーツ』が有効と言える。『ルーツ』は1977年にテレビ用ミニ・シリーズとして制作され、一大ブームを巻き起こした作品だ。

 1765年、西アフリカのガンビアに暮らすクンタ・キンテ(青年期:レヴァー・バートン)は囚われの身となり、奴隷船でアメリカに連行され、農場に売り飛ばされる。以後、クンタ・キンテ(成年期:ジョン・エイモス)は一生解放されることのない奴隷として、生死をかけた困難を繰り返しながらも生き抜き、やがて娘をもうける。その娘も奴隷主にレイプされて子を産むなど、堪え難い苦難の一生を送る。

 『ルーツ』はクンタ・キンテに始まる奴隷4世代を、南北戦争を挟む100年間にわたって描いた大作だ。ジャーナリスト/作家のアレックス・ヘイリーが自身のルーツを遡る調査を行い、その結果を表した同名小説を原作としている。

 同じ時代、同じ米国南部を舞台とし、かつスカーレットとクンタ・キンテは10代後半と、ほぼ同年齢の設定だ(*)。しかし白人奴隷主を主人公とする『風と共に去りぬ』と、黒人奴隷を主人公とする「ルーツ」の、奴隷の描き方の違いは驚くばかりだ。

*『ルーツ』の物語は1766年から、『風と共に去りぬ』は1861年から始まる

『ルーツ』

奴隷として農場に買われたクンタ・キンテが、奴隷主から与えられた英語名「トビー」を拒止し、鞭打たれるシーン

『風と共に去りぬ』

奴隷のマミーがBBQパーティに出掛けるスカーレットに豪華なドレスを着せるシーン

●レディ・アンティベラム

 「レディ・A」と改名したカントリー・バンド、レディ・アンティベラムの「Antebellum」とは、「南北戦争以前の」という意味を持つ言葉。そこには単なる歴史区分だけでなく、『風と共に去りぬ』に描かれている奴隷制時代の南部をノスタルジックに思わせるニュアンスがある。Black Lives Matterデモが続く中、バンドが改名した理由だ。

 80年以上も前に作られた『風と共に去りぬ』と異なり、レディ・アンティベラムの結成は2006年。現代社会において南部出身のバンドがアンティベラムと名乗り、レコード会社も異議を唱えなかったことに、白人側の奴隷制に対する意識の希薄さが表れている。

 ちなみに改名を発表した途端、以前より「レディ・A」のステージ・ネームで活動している黒人女性シンガーからのクレームが出たが、両者の話し合いにより双方が「レディ・A」を名乗ることとなった。

負の遺産、奴隷制

 このようにジョージ・フロイド氏の殺害からわずか20日少々の間に、奴隷制の扱いにまつわる変化が続々と起きている。大手ディスカウント・デパート・チェーンのターゲットも「ジューンティーンス」と呼ばれる祝日についての発表を行った。

 「Juneteenth」とは6月19日「June 19th」が訛ったもの。1863年の奴隷解放宣言の知らせが南部最西端のテキサスに届いたのが2年半も後の1865年6月19日だったことに基づく。この日は連邦の祝日ではないが、ターゲット本社は休業とし、希望する店舗従業員は有給休暇とするとした。ターゲットの従業員に黒人が多いことが理由と思われる。

 ちなみにトランプは6月19日にオクラホマ州タルサにて大統領選再選キャンペーンを予定していたが、「あまりにも無神経」と激しく批判され、日程を変更している。

 アメリカにとって奴隷制はとてつもなく大きな負の遺産であり、かつ真の人種平等を得るためには今、敢えて正面から向き合う必要のある歴史なのである。
(堂本かおる)

白人警官はなぜ黒人を殺害するのか 日本人が知らない差別の仕組み 「制度的人種差別」を知っていますか

【特集 Black Lives Matter Vol.1】BLMとは何か その背景とアメリカの400年にわたる制度的人種差別の歴史

1 2

あなたにオススメ

「破壊されるコロンブス像と「風と共に去りぬ」〜全米デモ:奴隷制と向き合うアメリカ」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。