6月14日に放送された『ゴッドタン』(テレビ東京系)に、ピンの女性芸人・ヒコロヒーとピンの男性芸人・みなみかわ(元ピーマンスタンダード)による「ヒコロヒーとみなみかわ」が出演し、ネット上では大きな反響を呼んでいる。
「ヒコロヒーとみなみかわ」は昨年の『M-1グランプリ』予選で披露したネタがお笑いファンの間で話題を呼んでいた。『ゴッドタン』でもその時と同じ漫才を披露。ツカミはこうだ。
みなみかわ「僕たち、日本に旅行しに来たアジア人カップルじゃありませんよ」
ヒコロヒー「何ですか? そのしゃばいツカミ。なんか『横に女芸人置いてるから見た目でもイジっとこか』みたいな安直なしゃばい魂胆、見え見えっすよ」
みなみかわ「芸人だったらイジられるポイントあったほうがええやないか」「特に女芸人ならイジられるポイントあったほうが良いでしょ?」
ヒコロヒー「男芸人がわけの分からん決めつけをしてるから、女芸人は今どうなってると思ってるんですか? ブスと不思議ちゃんだけになってる」
ここから“男芸人みたいな女芸人”をヒコロヒーが演じ、“女芸人みたいな男芸人”をみなみかわが演じる流れは圧巻の一言。ヒコロヒーは、男性器のサイズを頑なに答えようとしないみなみかわを「なんや自分、男捨ててへんのか?」と責め、「お前みたいなもんが、どうせ女のディレクターにちんちん触らせて、安いパチンコの仕事取ってきてるんやろ?」と畳みかける。“お笑い”と称して男性器を見せることを強要されたみなみかわは涙を見せ、ヒコロヒーは最後、「男芸人ってすぐ泣くからしゃばいわ」と吐き捨てた。
ヒコロヒー自身が日頃から感じている不満を漫才にしたと話しており、女性芸人が活動することで生じる“煩わしさ”が浮き彫りになっている。
女性芸人に降りかかる“煩わしさ”は、女性同士のコンビ・Aマッソもネタにしている。Aマッソのコント「進路」では、「芸人になりたい」という生徒を教師が「やめておけ。女芸人は賞レースに勝てない」と説得。教師は「最近、『女芸人が面白くなってきた』って言われてるけど、あれは嘘やぞ。テンプレートが蔓延しただけや! ええの! フォーマットがあってやりやすくてよ」と声を荒げるのだった。
現状では「芸人として売れること」と「女芸人として売れること」は別なのだろう。2017年にスタートした女性限定の賞レース『女芸人No.1決定戦 THE W 』(日本テレビ系)には、そのことが顕著に表れていた。
2018年の『THE W 』放送後、ナイツの塙宣之は『土曜ワイドラジオTOKYOナイツのちゃきちゃき大放送』(TBSラジオ系)にて、「“女性のこと”をネタにする人が多すぎる」と指摘し、「女性の“彼氏がいなくて……”という内容はバラエティ番組のひな壇でやって欲しい」「ネタはネタで、ちゃんと作った方がいい」と苦言を呈した。
有吉弘行も『有吉弘行のSUNDAY NIGHT DREAMER』(JFN系)で、「M-1グランプリの賞金1000万で、『THE W』の賞金1000万って、ちょっと釣り合ってないよ。賞金は100万にしなきゃだめだよ、マジで。来年からいい加減にしないと」と渋かった。
しかしバラエティ番組のひな壇で女性芸人にそうした役回りを与え、“テンプレート”に順応するキャラを求め、その幅を狭めてきたのは、他ならぬお笑い芸人やテレビだろう。これはお笑いやテレビの業界に止まらない、社会におけるジェンダーギャップの話でもある。
そのジェンダーギャップを、視聴者は敏感に受け取っている。公益社団法人ガールスカウト日本連盟の「女子高校生が感じるジェンダーバイアス『ジェンダー』に関する女子高校生調査報告書 2019」によると、 女子高校生の62%が普段の生活で性的な嫌がらせや性差別を経験したり見たりしていると回答しており、その内訳は「メディアで(テレビ、雑誌、映画、広告など)」(49%)が最多だった。たとえメディア側が無意識だとしても、視聴者に与える影響は決して軽くはない。