B子:影響力のある人間がこうだと、似た嗜好の親たちが必然的に集まってしまいますよね。自然派寄りの自主保育や自然育児サークルなどが、A園長を崇拝して、森のようちえんを作りたがる傾向になっていると考えています。基本誰もが、それぞれ違う宗教や思想は持っているでしょう。でも私の自然体験活動の仲間などは、活動の場ではそれらを表に出さないことで秩序が守られていました。しかし、この手のトンデモ自然派は隠したりしません。仲間を増やしたいので、むしろ積極的に発信し、悩み多き母親たちにはやさしく手を差しのべます。また「真実を知っている自分たちのほうが偉い」と上から目線になるようなところがあるので、次第に徒党を組み、強気になっていくようにも思えます。
徒党といえば、最近ではYouTubeで、池川明医師×元吉村医院助産師×伝動詩人えいた×A園長という顔ぶれでオンライン座談会が行われていました。個人的には「すごい魔界だな!」と思ったものの、画面の向こうでA園長は「この輪に入れていただけてうれしい!」と感無量なご様子。そして、
「子どもが主役になっていない保育現場はある。その子がその子らしく、安心して生きていかれる場を保証していくのが森のようちえん」
「ありのままを生きていくのに最適な場所が、森である。自然体験が目的ではない」
「本能全開、野生全開の存在であるお母さんも同じ」
……こんなことを語っていました。余談ですが、この動画を聞いていると、隣の部屋にいた夫は「なかなか難易度高いYouTubeだな!」と全力で引いておりました。わかるわかる~って言われなくてよかった。
歪んだ価値観を植え付けられる
B子:少し前には、自然体験活動を通して学びを得させたい、その選択肢のひとつとして森のようちえんがあるといった考えのご家庭のほうが多かったような気がします。しかし現状は、おかしな人が増えていて、過激な自然派思想に染まり、どこか歪んでいる。自然の中で生きる力を身につけるはずが、親の歪んだ価値観がゆえに子どもまでもが歪んだ自己肯定感を持ってしまっているのが一番の問題だと思います。「一般的な教育を受けている方がバカ」だと言わんばかりのキメラゴンや、ゆたぽんのような「不登校が偉い」という考えを持つ子どもが、増えているように感じるんですよね。
「生きる力」どころか、生きにくくなる人間になる予感しかしませんわぁ。しかも親の思想の影響で。
B子:こういう人たちを寄せつけない森のようちえんを作ることができればと思うのですが、そこまでの力が自分にないのが情けなくて……。
トンデモは連鎖する
ほかの森のようちえんはどうなのか? と見てみると、どこも香ばしいものがザックザク。長野県にある某園の代表者は、ブログで「一般社団法人胎内記憶教育協会」の胎内記憶教育講師養成講座まで受講したと報告しています。胎内記憶は大人が自分を癒すための物語であると思うので、間違っても子どもたちに「お母さんを選んで生まれてきた」とか教えないでいただきたいですね。
B子:胎内記憶は子育てと親和性があるのは否めないと思いますが、次第にエセスピリチュアル的なものに移行している様子や、傍若無人に拡散されている現状を見ると、危険なカルト思想ではないかと思っています。その危険性が、なかなか伝わらないのが残念です。今回は森のようちえんについてですが、おそらく自然派育児の自主保育サークルレベルだと、エセスピや過激な自然派に浸食されている団体がもっとたくさんあると思います。そういったものの運営側にトンデモが増えている様子が見受けられるので、連鎖的に増えていく可能性があるのではないでしょうか。
本来素晴らしい取り組みであるはずの場が、次第に魑魅魍魎が集う沼になりつつあるという恐ろしさ。次回は実際に子どもを森のようちえんへ通わせているという保護者からも話を伺うことができましたので、次回はその体験談もお届けしていきましょう。
※プロの保育者はこういった状況をどうお考えになるのか、そういったご意見もぜひお寄せいただけますとうれしいです。
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