性暴力・セクハラ被害を友人に相談されたら、どんな声をかければいい? フェミニストカウンセラーに聞く

文=雪代すみれ
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Getty Imagesより

 友人や知人から性暴力(セクハラを含む)の被害に遭ったと相談されたら、あなたはどうしますか?

 内閣府が平成29年度に行った「男女間における暴力に関する調査」では、無理やり性交等をされた経験を「友人・知人に相談した」と回答した人は男性30.4%、女性24.1%でした。これは最も多い「どこ(だれ)にも相談しなかった」に次いで多い回答であり、相談するなら友人や知人に相談する人が多いことがわかります。


 ですが、性暴力被害を打ち明けられたとき、どのように話を聴けばいいか、どのような言葉をかければいいのか、わからない人も少なくないのではないでしょうか。

 筆者も日頃、性暴力やセクハラの問題について本を読んで勉強し、このように記事を執筆したりしていますが、実際に被害を相談されたとしたら適切な受け答えができるかというと、自信がありません。

「ウィメンズカウンセリング京都」で性暴力被害者のサポートを行っている、ジェンダーの視点からカウンセリングを行うフェミニストカウンセラー・周藤由美子先生に、性暴力被害について相談されたときの心構えや言葉のかけ方、紹介すべき専門機関などについてお伺いしました。

※セクハラも性暴力のひとつです。ただし、性暴力とだけ書くと自分の被害に気づけない方もいると考え、本記事ではあえて別々で表記しています。

周藤由美子(すとう・ゆみこ)
1963年生まれ。1995年より女性のためのカウンセリングルーム「ウィメンズカウンセリング京都(WCK)」にてフェミニストカウンセラーとして従事。2015年より京都性暴力被害者ワンストップ相談支援センター 京都SARAスーパーバイザー。行政や大学などのセクシャルハラスメント専門相談員も務める。

「警察に行こう」が負担になってしまう場合もある

ーー性暴力被害について相談された時、どういった態度や言葉が望ましいのでしょうか。

周藤由美子先生(以下、周藤):まず、被害を打ち明けることはとても大きな勇気が要ります。話しにくいことを話してくれて「ありがとう」という態度でいることがポイントです。
 友人やパートナーなど、大切な人から相談されたらびっくりすると思います。相談された側は、大切な人、身近な人に被害に遭ってほしくないと思っているからこそ、それがショックで認めようとしなかったり、被害者の行動を責めてしまったりすることもあります。相手を大切に思っているゆえの反応ではありますが、被害を否定したり、被害者の言動を責めることは二次被害(セカンドレイプ)になってしまいます。

ーー性暴力の問題について、悪気なく「被害者は自衛をするべきだ」と信じている方は、まだまだいますよね。

周藤:「被害者は嫌だったら抵抗するはず」「二人きりになっていたのだから被害者は性行為に同意していたはず」など、性暴力被害に関する誤った認識を「強姦神話」といいます。実際には、加害者が職場の上司や取引先などで立場が強く、被害者が断りにくい構造があったり、恐怖で抵抗できなかったりするのです。「そんなに嫌ならもっと抵抗するはずだ」「必死に抵抗すれば防げたはずだ」「被害を受けた側にも落ち度があるはずだ」……このような「強姦神話」は誤りだと、社会的な常識や認識を変えていく必要があります。


 一方で、2017年に始まった#MeToo運動や、性暴力被害を公表したジャーナリストの伊藤詩織さんの訴訟、性暴力を許さないと声をあげるフラワーデモの活動などが報道されるようになり、「自分がされたことは性暴力被害だった」と気づく被害者が増えてきている印象があります。

ーー性暴力やセクハラ被害を実際に相談された場合、どのような対応が望ましく、また、どんな言葉は相手を傷つけてしまうのでしょうか。

周藤:相談する側も「相手はこんな話を聞きたくないんじゃないか」「嫌な気持ちにさせているんじゃないか」と不安に思いながら話しているので、相談される側は「大丈夫だよ」という姿勢でいることが大切です。
 相談されると「何かアドバイスをしてあげなくては」と思いがちですが、まずは相手の話すペースに合わせてじっくり話を聴きましょう。相手が今後また同じような被害にあって辛い思いをしないために……と思っても、「(加害者と)なんで二人きりになったの?」「早く忘れた方がいいよ」と言った言葉は、相手を傷つけてしまいます。また、相談された側が同じような被害にあうなど大変な体験を乗り越えてきた方ですと、「自分はこんなに大変だった」という話をする方もいますが、それは「あなたの被害は大したことじゃない」というふうに伝わってしまいます。
 また、相談した後の行動も被害者の意思を尊重しましょう。たとえば、「警察に行った方がいいよ」「(セクハラした上司のいる)会社を訴えよう」などの助言は、被害者にとって負担になってしまう場合もあります。被害者が「どうしたらいいかわからない」と悩んでいたら、「一緒に相談先を探してみる?」と提案するのもひとつの方法です。
 被害に遭うと自分のことを責めてしまう人はたくさんいるので、「あなたは悪くないよ」と声をかけ続けることも効果的です。

第三者として“被害を評価”しないこと

ーー意図したわけではなくても、自分の言動が二次被害となってしまわないか不安です。そうないために、気を付けたほうがいいことは何でしょうか。

周藤:まずは、相談された側が“被害を評価”しないことです。ホテルに連れ込まれた、体の関係を強要された、などは明らかに大ごとだと認識できても、少し身体を触られた、言葉のセクハラを受けた、という場合ですと、「よくあることだ」「自分なら我慢できる」などと感じ大したことではないと捉える人もいるでしょう。ですが、第三者からは些細なことに見えたとしても、当事者はそのことでとてもショックを受けていたり、加害者から逃げられずに追い詰められていたりするので、「体を触られたわけでもないでしょう」「レイプされたわけじゃないんだから」などと被害を過小評価することは避けて下さい。

 被害者がどれほど傷ついているのかは、第三者がジャッジできるものではありません。そもそも、職場で性暴力が起こること自体がおかしいのであって、レイプなら100%アウトだけれども、言葉のセクハラなら許してあげなくてはならない、なんてことは決してないのです。会社によって懲戒処分の基準は決まっているため、行為によって加害者の処分が異なることはあっても、被害者が我慢しなければいけないというわけではありません。
 また、職場など日常生活を送っている場で被害に遭えば、被害者は「また嫌なことをされるのでは」と、常に緊張状態に置かれることになります。加害者の気分次第でいつセクハラが行われるかわからないので、被害者側からすればずっと警戒をしなければならないのです。だからこそ、「今度こそセクハラを上手くかわさないと」と構えてしまったり、うまくかわせなかったことで自分を責めてしまうこともあるのです。

ーー被害を受けると、加害者がもう絶対にセクハラをすることはない、とわからない限り、ずっと緊張していなければならず、ストレス状態に置かれるということですね。

周藤:二次被害防止のためにもうひとつ重要なことがあります。もし、相談された側が加害者とも知り合いであったとしても、被害者の相談してくれた内容を疑わないことです。
 ハラスメントをする人は、自分の権力や立場を利用して自分より弱い立場の人をコントロールしようとする特徴が見られます。自分と同等や立場が上の人には従順であったり、人当たりが良かったりして、被害者にだけ違う顔を見せている場合もあります。たとえ「あの人がそんなことするなんて信じられない」と思っても、まずは話を聴く姿勢を持ち、その上で受け止められないのでしたら、「よく知っている人なので自分も混乱している」と正直に話し、「他の人や専門機関に相談してほしい」と伝えることも必要です。
 ただし、どんな場合であっても、本人の許可なく相談内容を他人に話すことは、絶対に控えてください。

【性暴力やセクハラ被害を打ち明けられた時に望ましい対応】
・まずは相談してくれたことを歓迎する
・相談した人のペースで話をじっくり聴く
・被害者がどうしたいかを尊重し、どうしたいかわからない場合は「一緒に相談先を探してみる?」などと提案する
・被害者は自分を責めてしまうことがあるので、「あなたは悪くないよ」と声をかけ続ける

【性暴力やセクハラ被害を打ち明けられた時にしてはいけないこと】
・被害の度合いをジャッジする
・被害者の行動を責めたり、説教したりする
・被害者の対応策を勝手に決める(会社に訴えた方がよい、警察に行くべきだなど)
・「自分はこうして乗り越えてきた」などと一方的に話す
・相談内容を本人の許可なく他の人に話す

相談された側が全て受け止める必要はない

ーー相談されても、「全部自分で受け止めなくては」「解決してあげなくては」とは思わなくてもいいんですね。

周藤:特に、相談する側と相談される側が同じ職場の場合だと、味方をしてあげたくても、職場の立場やパワーバランスから難しいこともあります。精神的な支えになってあげたいと思っても、無理をしたり、頑張りすぎたりしないでください。「電話は~時までならできるよ」「メッセージをもらうのは構わないけれど、返信はすぐにできないときもあるよ」など、自分が対応できる範囲を伝えるのもいいですね。力になりたいけれども一人で抱えきれないと感じたら、必ず相談をしてくれた人に許可を得たうえで、相談者の個人情報がわからない形で外部の相談窓口(※)に相談する方法もあります。

ーー周囲にも、できることと、できないことがあるという認識が必要ですね。

周藤:性暴力やセクハラの問題は簡単に解決できるものではありません。相談した側が、「この人は全てを受け止めてくれる」と思って頼りきりになり、相談された側のキャパを超えてしまい、関係が悪くなってしまうこともあり得ます。二次被害の防止、そして相談された側が潰れてしまわないためにも、専門家がいるのです。


 ただ、専門家として相談を受ける立場から見ますと、周囲が被害者に寄り添って「あなたは悪くないよ」と声をかけ続けることは、回復につながっていると感じます。カウンセリングや心理療法・法的な相談・警察への相談など専門家にしか対応できないこともありますが、側で味方になったり、必要な専門機関に繋いだりするというのは重要な役割です。

ーー相談機関につなぐ場合、どのような選択肢がありますか。

周藤:会社内で起きた被害でしたら、会社の相談窓口がある場合はまずそこに相談することを考えてみてください。会社に適切な対応をしてもらえなかったと聞くこともありますが、きちんと相談窓口が機能している会社も、もちろんあります。会社の相談窓口=頼りにならないと決めつけるのではなく、情報提示や相談実績などを見て、きちんと対応してくれそうなら相談するのも有効だと思います。裁判になった場合でも、まず会社の相談窓口に相談したけれど対応してもらえなかったので法的措置に訴えた、という方が、妥当な対応をしてきたと理解されやすい場合があります。


 全国に窓口が設けられている「性暴力被害者ワンストップ支援センター」は、各地で対応できる範囲が異なるのですが、一度問い合わせてみるのも有効です。私が関わっている京都のワンストップ支援センターでは、性暴力の問題は、種類は問わず相談をお受けしています。

 公的な機関ですと、都道府県労働局の雇用環境均等室にもセクハラ相談窓口が設けられており、労働組合が強いところでは、労働組合が職場環境改善のために動いてくれる場合もあります。
 また、これは全国各地にあるわけではないのですが、フェミニズムの視点で女性による女性のためのカウンセリングを行っている、フェミニストカウンセリングルームでは、裁判になった際の被害者心理の意見書を書いています。ウィメンズカウンセリング京都では、東京の方からご相談を受けることもあります。

 もし弁護士さんに相談されたい場合は、各弁護士会で女性のための電話相談を行っていることがあるので、ホームページを確認してみてください。法テラスでは条件はあるものの、無料相談や弁護士費用立て替えの制度が使えることもあります。ワンストップ支援センターで連携している弁護士を紹介してもらえることもありますが、どこまで対応できるかは都道府県によって異なりますので、遠慮はせず問い合わせしてみてください。

(※)性暴力問題の主な相談先

全国の性暴力被害者ワンストップ支援センター(内閣府HPより)
ウィメンズカウンセリング京都

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