子供のころはたくさん使ったのに、大人になって手許から消えた文房具ってありますよね。
仕事や家庭で使わない筆記具の筆頭は、やはり色鉛筆ではないでしょうか。お子様がいらっしゃったり趣味で絵を描かれたりすれば別ですが、そうでない場合はなかなか出番のない文房具です。
ゼロから絵を描くのは確かに難しいものですが、最近は大人向けにも塗り絵の本が多く販売されています。コロリアージュと名がつく大人の塗り絵はもう流行して10年以上が経過していますが、現在も広く愛される趣味のひとつです。
コロリアージュは子供用の塗り絵とは異なり、細かく線で区切られた線画の狭い隙間を丁寧に塗っていくことで絵を完成させることが多いので、自然と使用する色鉛筆も先端が細くやや硬いタッチのものが好まれるようです。細い部分を塗ることで集中が生まれ、無心になり、結果としてストレス解消に繋がる効果もあるそうです。
コロリアージュは写実的な絵画と異なり、パキッとした色で塗っても問題ありません。またリアルを追求しないのであれば、色数もそこまで多く使わなくとも気楽にできます。最小限度として、12色程度のバリエーションがあれば混色(色鉛筆を重ねて塗る技法)も含めひととおり塗り絵を楽しむことができるでしょう。
要は「美しく完成させよう」というより「無心になって塗って楽しもう」という気持ちが重要なのです。
その際、慣れない方は色鉛筆を削ることすら面倒になり、集中を削がれる結果になることもあると思います。
「大人の色鉛筆13」は、そんなコロリアージュ初心者で鉛筆を削ることが面倒だ、と思われる方に最適の製品です。
製造販売している北星鉛筆は、東京の下町で鉛筆を作り続けている専業メーカーです。大人になっても鉛筆の良さを忘れて欲しくないという想いから、ノック式の鉛筆「大人の鉛筆」を2011年に上梓しました。大人の鉛筆は鉛筆とほぼ同寸の木軸で、尾栓をノックすることで鉛筆と同じ2ミリ芯を繰り出します。削る必要がなく、また本体が短くならないというメリットが受け、累計100万本を超えるヒット商品となりました。
この大人の鉛筆をベースに、芯を鉛筆芯から色鉛筆芯に替えたのが、今回ご紹介する大人の色鉛筆13です。
色鉛筆の芯は、基本的に焼き固めをしていません。タルク(滑石)や蝋でできている色芯は黒鉛と粘土を焼き固めた鉛筆芯のように硬くないので、大人の鉛筆で採用された金属チャックで芯をがっちりと保持する方法が採れません。今回の大人の色鉛筆は、外観こそ大人の鉛筆と変わりませんが、色鉛筆芯がチャックパーツで削れたりしないよう専用の先端機構を搭載しています。また内部機構そのものも改良を加え、本体を落下させた際に中で色鉛筆芯が折れることを防ぐ設計にもなっています。
ただ外観上、大人の色鉛筆13は大人の鉛筆とほとんど変わりはありません。ノック基部の色表示、空押しによるメーカー表記、はずせない先端金属パーツが差異部分です。
色芯は赤、桃、薄橙、橙、黄、黄緑、緑、水色、青、紫、茶、黒とブレンダー(色彩調整)としての白。ノギスで測ると芯径実測は直径2.2ミリでした。
描き心地は滑らかで、力を入れてもグズグズと崩れたり芯が引っ込んだりすることはなく、滑らかなままで色が濃くなります。大人の色鉛筆13は国産の色鉛筆芯を使用しており、現在では絶滅寸前である国産色鉛筆の生き残りを模索した野心的な製品でもあります。
色鉛筆の色合いは、メーカーによってまったくと言っていいほど異なります。製品を購入した際には、まず色見本を自分で作ってみるといいでしょう。大人の色鉛筆13には、色見本を作るための用紙も同梱されています。
色鉛筆の多くが丸軸なのは、かつて色芯が黒鉛芯に較べ柔らかいので六角形にすると芯と軸の表面に距離差が出、芯を充分に保護できないと考えられていたからです。技術が上がり、今では色鉛筆も六角形のものが数多く販売されています。大人の色鉛筆13は六角形の木軸ですが、現在では色鉛筆としても違和感のないデザインだと言えます。
本製品はケースにも特徴があります。プラケースは右サイドへの引き出し式で、中で揺れても芯がケースに当たらないように、ペン先方向のクリアランスが充分に確保されています。
また説明書はケース内部にベロ状に折り込まれた本体一体型で、表紙も同様に内側に折り込まれています。ベロ状のパーツをいったん外に出し、色見本シートを挟んだり、自分で描いた絵を表紙として収納して再びベロを折り込むと表紙ロゴや説明書が隠れ、「自分だけの色鉛筆ケースに仕立て上げる」ことができます。
描き心地だけでなく、ケースにまで大人向けの配慮をされた本製品。北星鉛筆創業70周年記念ということで、随所に工夫と気合いが入っております。こころが少し疲れたら、是非ゆったりと塗り絵を楽しんでみてください。