幸せホルモン=「オキシトシン」を語る医師対談が、完全にセクハラトーク

文=山田ノジル
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GettyImagesより

 ここ10年ほどで「オキシトシン」というホルモンが、「自然なお産」推しの医師や助産師のあいだで注目を集めています。通称「愛情ホルモン」と説明されることの多いそれは、出産時に陣痛の痛みを和らげたり母乳を分泌させるなどの働きがありますが、ほかにも多くの健康効果が知られるようになり、幅広く「オキシトシン活用術!」と応用されるようになってきました(先日、NHK「あさイチ」でもやってたな)。

 こういったブームの源流にいるのは、おそらくフランスの産婦人科医ミシェル・オダン。過去に当連載で「自然で愛のある出産なら、オーガズムを得られる」という主張の「オーガズミックバース」を取材したドキュメンタリー映画を紹介していますが、そこで根拠にされたお説の大元もオダン医師のオキシトシン論でしょう。

病院でのお産を否定しまくる自然派出産礼賛の映画が矛盾だらけ

「自然で愛のある出産なら、オーガズムを得られる」「出産が官能的なものだと、母が知ることは大切」ーー医療介入のない自然分娩がいかに素晴らしいかを前面に…

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幸せホルモン=「オキシトシン」を語る医師対談が、完全にセクハラトークの画像2 ウェジー 2018.07.03

 オダン医師の主張を根拠にして、出産にまつわるオキシトシン分泌を母子の絆&母乳育児の要と礼賛すされると、だいたいそれとセットに帝王切開や無痛分娩などの「人工的なお産」をディスる流れが出てきがちです。そのあたりを、オダン医師の代表作『バース・リボーン』あたりからひもとこう……と思っていたのですが、たまたま知人からトンデモ度の高いオキシトシン本が回ってきてしまいました。もう手元に置いておきたくないおぞましさでしたので、今回はそれから先にご紹介させていただきましょう(オダン氏の著作についてはまた後日)。

 私がこれは「オキシトシン語りの北極だ!」と感じたのは、『薬もサプリももう要らない! 最強免疫力の愛情ホルモン「オキシトシン」は自分で増やせる‼』(明窓出版)です。

 この本は、前回の『anemone(アネモネ)』(ビオ・マガジン)レビューにも登場した、理論物理学者の保江(やすえ)邦夫氏と、統合医療クリニック徳院長である高橋徳(とく)医師の対談本。保江氏はスピリチュアルな世界にも精通しており、そのぶっ飛びぶりはある意味有名な人物です(総理夫人との交流ですっかり有名になったカルト医・ドクタードルフィンとの共著があるのもさすが)。天才すぎるゆえか、凡人に理解できないお説を繰り出すことは覚悟しておりました。しかしこう来るとは……。前時代的なミソジニートーク、平たく言えばセクハラトークがちりばめられていたのです。しかも巻末の編集後記を見ると、どうも担当編集は女性のよう。マジかあ……!

お座敷遊びでオキシトシンUP!

 抗ストレス作用、自律神経の調整、痛みの軽減という働きを発揮するホルモン=オキシトシン。実際の神秘体験や伝統宗教におけるさまざまなシーンを例に、「これもオキシトシンによる働きじゃないのか」と盛り上がるおふたりのトークは知的好奇心に満ちています。しかし、悪ノリが過ぎている。

 はじめに軽く(?)ジャブをかますのは、保江氏。男性がお座敷遊びに興じるのは、芸妓たちと楽しく過ごすことでオキシトシンがたくさん分泌されるからではないのか? という仮説を放ちます。それを補足するように、高橋医師は、オキシトシンはスキンシップ、みんなで楽しく食事、お酒、カラオケ、共同作業でも出やすくなる……と随所で説明。たとえば盆踊りなんかは、共同作業で楽しく過ごすとオキシトシンが出るので、一体感や達成感が生まれ、さらには絆や団結力にもつながるんだとか。おまけに、一般的な治療を「医者はデータばかり見ていて、患者の顔を見ず薬を処方するだけ」とどこかで聞いたような感想を述べ、「これくらいなら放っておいても治る、と言ってあげたほうがオキシトシンが出るし免疫力も上がる」とのこと。わたくし個人的に、絶対この類の医者にかかりたくないんですが……!

 すると負けじと保江氏は、こんな話を披露します。知り合いのドクターが、入院患者の回復率が悪かった山梨県の病院に勤務することになったので、院長や婦長に内緒で「この病院は、どの看護師さんのお尻を触ってもいいんだよ」と告げたそう。すると患者の回復率がアップ! 現在そのドクターは都内でアンチエイジング専門の医療を行っているが、クリニックの女性スタッフは黒いミニスーツ、看護師さんも全員ミニのユニフォーム!

「もう、それだけで治りますよね(笑)」、だそうですが、笑ってる場合じゃないのでは。なんという前時代的なセクハラトーク。いま私は、キャバクラで「センセ~すごぉ~い(棒)」と持ちあげられながらのおっさんトークを聞かされているのでしょうか(キャバクラに行ったことないので、偏見だったらスミマセン)。

 オキシトシンは、セクハラの免罪符になる魔法のホルモン? しかもなぜ、男性のオキシトシン分泌を促すために、女性がサービスしなくてはいけないのか。こっちは読んでるだけでイラついて、オキシトシンが枯渇しそうです。今回の都知事選に立候補したトランスヒューマニスト党の後藤輝樹が政見放送で叫んでいた「愛と射精が地球を救います!」のほうが、単刀直入でよっぽど好感が持てました。

セックス外来やりますか!

 セックスについても語り合っています。女性と男性ではオキシトシンの出方が違う。男性が女性に思いやりを持って時間をかけてアプローチしていくことが、オキシトシンレベルを上げつつ、同じピークを迎えることにつながる。オキシトシンをたくさん出すには男女のふれあいが一番いいが、相手が「気持ちいい」と感じるようなふれ方をするのがコツである。

「オキシトシン」と言い換えてるだけで、古くから語られてきているオーガズムのメカニズムと何ら変わりがありませんがな。ちなみにこれに対する担当編集者の感想は「アダム徳永」。「女性が輝くには男が必要と言っているようなもので、おっさんが大好きなお説ですよね!」。ほんこれ。

 さらにご丁寧に、昨年くらいにブームとなった「膣ケア」にも触れられていました。

少子化、孤独死、セックスレスの原因をすべて女性器に求める“膣系女子”の弊害

「膣をケアすることこそ、女性の健康の秘訣!」と風呂敷を壮大に広げていく「膣ケアブームの火付け役となった物件『ちつのトリセツ』のトンデモポイントはこれまで…

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幸せホルモン=「オキシトシン」を語る医師対談が、完全にセクハラトークの画像2 ウェジー 2019.02.12

 本来の膣ケアは「膣も老化するからマッサージや保湿でケアをすると女性の不調が改善されますよ」という趣旨のものですが、何をどう聞いたのか「聞くところによると、セックスパートナーがいなくても、最近は、女性が自分の膣ケアをすることでオキシトシンを出す方法も広がっているそうです」「膣ケアをすすめている女性たちに理由を聞くと、男のセックスが下手だから」と紹介。セルフプレジャーのこと言ってるのか、巷の膣ケアのことを言ってるのかさっぱりわからない。

 そして「膣ケアをしている女性が増えたということは、いまの若い男性は女性に対する思いやりを学ぶ機会がないのでは(要約)」と展開していき……。

保江氏「オキシトシンの危機にもつながるのでぜひ徳先生に一肌脱いでいただかないと(笑)」
高橋医師「セックス外来やりますか(笑)!」

 いやいやこんな前時代的な殿方が、セックスの何を指導するんでしょう。アダルトコンテンツ界のトンデモ率は相当なものと聞いていますが(特にテクニック面)、そこに先生方が参戦されては、また別の百鬼夜行が爆誕しそうです。

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