幸せホルモン=「オキシトシン」を語る医師対談が、完全にセクハラトーク

文=山田ノジル
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 ほかにも、動物との触れ合いもオキシトシンを分泌させることから「一人暮らしの女性が、動物を飼うケースが多いのかもしれない」と語られてますが、これもなぜ「女性限定」の話(男だって単身ペット飼いますよ)? アロマテラピーも「心地よいタッチと香りの相乗効果で効果的」なうえ、「愛のこもった気持ちで施術するとオキシトシンレベルが上がる」。こちらは「愛」をどうやって測るのか、教えていただきたい。こんな感じの謎トークがてんこもり。もう表現トピックス全般、担当編集様しっかりしてくだせえ……(バタリ)。

子育ての呪いを強化

 さて、男性のおさわりやお座敷遊びは盛大に肯定する一方、女性特有のオキシトシン分泌である子育て・出産には手厳しいのも、本書の特徴と言えるでしょう。「人工的なお産」や「女性が働くこと」をバッサリ否定しています。

・オキシトシンをたくさん出すには、赤ちゃんが生まれた瞬間からかわいいかわいいと自分で抱っこして2際、3際、4歳になってもずっとそばにいてかわいがってあげることが大事。
(3歳児神話すら越えているう~)

・マルトリートメント児(虐待など不適切な養育を受けた子ども)が増えたのは、共働きで母親がそばにいなかったから。
(共働きと虐待をごっちゃにしないでください。あと父親の存在ドコー)

・帝王切開と無痛分娩などは自然なお産と比べるとオキシトシン分泌が不足する。それが結果的に子どもの虐待につながっていると考えられる。「冷たいお母さん」になってしまっている。
(触れ合ったり見つめあったりするだけでも、オキシトシンって分泌されるんじゃないの? 産後に出せばいいのでは?)

・抱き癖がつくから抱かないなどの間違った育児法が、自閉症や発達障害の原因になっているケースが多い。
(育て方が悪いから!ってずいぶん昔のお説ですよね)

・いまの母親たちは十分に愛を受けて育ってないから、脳のオキシトシンが少ない。いままでの子どもへの接し方や子育て法には問題がある。
(いまと昔の母親のオキシトシン量測定したんですか? すごい。)

 オキシトシンは盆踊りやおさわりで簡単に出るんじゃなかったんか。一体どっちなんや……!

縄文時代や江戸時代を礼賛

 トンデモトークは後半になるとさらに加速。

・医学的に見ても一生懸命にお世話している人はオキシトシンレベルが高いので、それだけ免疫力も高くて元気でいられる

・「お坊さんの話によると、病気が治るか治らないかは徳を積んでいるかどうかで決まる。

・池川明医師が著書で語っている「セックスレス妊娠」、実は高橋医師も当事者(夫婦お互い身に覚えがないのに、妻が妊娠出産した)。保江氏も似たような経験をしている。霊魂の働きで胎児が物質化! いまはなんとかして地球を救わなきゃいけない時代なので、魂が自分で受精卵を作り、母親から栄養をもらって生まれてくる。そのような「愛の戦士」を、サタンや闇の勢力がつぶそうとしている。病院で薬漬けにされている発達障害の子どもたちやうつ病の人たちはその犠牲者である。

・過去世(前世)では、保江氏は徳川家康で、高橋医師は天海僧正。今世は縄文や江戸時代のような平和な社会をもう一度設計するお役目があるということ。
(ところで辛酸なめ子さんの『スピリチュアル系のトリセツ』(平凡社)には、保江氏の過去世が「レムリアの女王の付き人」だったとありました。過去世って、たくさんあるんですね)

 そして「共感しあえる人たちとの共同作業が幸せを呼ぶ(オキシトシン分泌が増える)」「他者への共感が血中のオキシトシン濃度を高める」ことから、ふたりで縄文時代や江戸時代のような共同体で生きるオキシトシン文化(って何だ)を復活させ、オキシトシンがいっぱい出せるようなストレスフリーな街づくりをしちゃおう! とまで盛り上がる盛り上がる。そんな共同体、絶対いやだ。それなんてホルガ村(映画『ミッドサマー』に出てくるカルト村)。

高額セミナーという受け皿

 ところでオキシトシンといえば、巷には「タッチセラピスト養成講座」というものが存在します。主催しているのは、「誕生学」で知られるバースコーディネーターの大葉ナナコ氏。マッサージ等で触れ合うことでオキシトシンが分泌され双方が健康になると謳われています。宣伝文句は「一家にひとり、タッチセラピストがいれば、社会はもっと優しい世界になる」。お値段はあまり家計にはお優しくないようで、講座はトータル12万6千円。三砂ちずる氏やたつのゆりこ氏など、女体に幻の機能を盛るのがお得意な有名講師陣が名を連ねていた豪華ですものねえ……と、講座情報を眺めていたら、なんと、この高橋徳医師もいるじゃないですか。いかにも「女性たちの幸せを応援★」という風情の大葉ナナコ様~、講師陣の著作にも、目を光らせたほうがよくありません?

 ああ、最後に同書で学んだ一番大切なポイントを忘れるところでした。「憎しみは何も生まない」「敵も愛する心がオキシトシン濃度を高め霊性も高める」との主張を。ですから当連載でツッコまれたみなさまにおきましては、今後何を言われても、お怒りにならないでくださいね。怒り、憎しみを持つとオキシトシン分泌が減り、幸せになれないそうですよ。私ですか? オキシトシン濃度は知りませんが、トンデモには全力でツッコむのが、私なりの愛情です。

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