全米各地で大暴れ「カレン」とは一体、何者?~白人女性の特権意識

文=堂本かおる
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 ここ最近、アメリカのSNSには連日のように「カレン」が登場する。スーパーマーケットなどで怒り、怒鳴り、モノを投げ付けるなどする白人女性の映像がアップされ、「また、カレンか!」「今度はサンディエゴか」などとコメントが付く。

 この映像はハリウッドにあるトレイダー・ジョーズというスーパーマーケットで撮影されたとある。店員にマスクを着けるよう注意された白人女性客が激怒しているシーンだ。撮影者の男性は「これがカレンだ」とコメントしている。この映像には続編があり、そちらでは女性は「私は呼吸器障害があり、医師からマスクを禁じられている」と叫んでいる。

 こちらはテキサス州ダラス。「店長が女性にマスクを着用しなければならないと言った」とある。女性は商品を床に投げ付けながら「ダム・アス・マザーファッカー」などカースワードを連発後、「どーでもいいんだよ! I don’t give a fuck!」と捨て台詞を残して去っている。

カレンの歴史

 上記のように、公共の場で「私には~をする/しない権利がある」と、常軌を逸した言動で主張する中年の白人女性を総称して「カレン」と呼ぶ。2例ともマスクについてである理由は後述する。

 筆者が「カレン」を初めて知ったのは2年前、2018年の春だ。アフリカン・アメリカンがパーティやBBQに持ち寄る料理のひとつ、ポテトサラダにレーズンを入れるのは白人女性だ、というジョークがあった。作家/評論家のゴールディ・テイラー(黒人女性)が、その架空の白人女性を「カレン」と呼んでいた。

 このネタはNBC『サタデーナイトライブ(SNL)』で取り上げられた。当時、大ヒット中だった映画『ブラックパンサー』で主役を演じたチャドウィック・ボウズマンが「黒人だけのゲーム番組」というコントに参加。『ブラックパンサー』のティ・チャラ王の口調で「あぁ、カレン、とんでもない!しょうもない薄味のポテトサラダは自分で食っておけ!」と言い、爆笑となった。

 後にチャドウィック・ボウズマンはあるトーク番組に出演し、黒人社会におけるポテトサラダの位置付けを語った。親族の集まりや教会での食事の際、 手作りのポテトサラダを持参できるのは料理の腕前に定評のある者だけ。まずいポテトサラダには誰も手を付けない。それを知らない白人女性が薄味、レーズン入りなどヘルシーに作り変えたものを持参する滑稽さを解説した。ボウズマンは笑いながら面白おかしく語ったが、当時の「カレン」とはつまり、黒人文化を理解せず、自身の白人文化を押し付ける人物の総称だった。

警察に通報するカレン

 とは言え、笑えるジョークだった「ポテトサラダ・カレン」の直後、実社会で黒人を告発する「カレン」が続出した。

 カリフォルニア州オークランドの公園で黒人一家がBBQを楽しんでいた際、白人女性が「市が定めたBBQのルールに違反している」として警察に通報した。BBQ参加者が撮影した女性の映像がSNSにアップされ、激しい批判が巻き起こった。映像を見た人々が思ったことは「BBQをしていたのが白人なら通報されたか?」だった。

 3週間後、同じ公園で盛大なBBQパーティが開催された。数百人もの参加者が集まり、BBQと音楽を楽しんだ。「黒人がBBQを楽しむ(BBQing While Black)」と冠したこのイヴェントを企画した主催者は、「あの映像を観て、コミュニティで一体となるようインスパイアされた」と語っている。

 当時、全米各地でコーヒーを注文しなかった黒人男性がスターバックスを追い出される、黒人客がデパートで万引きを疑われる、大学で居眠りをしていた黒人の学生が白人学生に非難される、などの事件が続いていたのだった。

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全米各地で大暴れ「カレン」とは一体、何者?~白人女性の特権意識の画像2 ウェジー 2018.05.17

 続いてサンフランシスコの住宅街の歩道でミネラルウォーターを売っていた8歳の黒人少女が、やはり白人女性によって通報された。この時の様子は少女の母親によって撮影され、SNSに投稿された。この件はBBQ以上に激しく批判され、通報した女性は自身の会社のCEOを退くこととなった。

 ちなみに当時は事件ごとに区別する意味もあり、上記のふたりは「BBQベッキー」「パーミット(水を売る許可)・パティ」と呼ばれた。カレン、ベッキー、パティのどれも該当女性の本名に基づくものではなく、一般的に白人女性に多いとされる名前だ。アメリカはファーストネームで呼び合う社会であることから、良きにつけ悪しきにつけファーストネームがフィーチャーされる。現在はどの件もすべて「カレン」と呼ばれる。例えば「サンディエゴ・カレン」などというように。

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