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コロナ禍の外出自粛により、オンラインでのやり取りが増える中、性的搾取やグルーミング(ことば巧みに信用させ、性的画像等を送るよう脅されること)など、子どもたちや若者がネット上の性犯罪被害に巻き込まれることが危惧されています。
ネット上の性犯罪というと「リベンジポルノ(性的画像被害)」を思い浮かべる人も多いと思いますが、令和元年度の犯罪白書によると、平成30年の「性的画像被害に係る事案に関する相談等件数」は1,347件。被害者と加害者の関係は交際相手(元交際相手を含む)が61.6%と最も多いことがわかっています。
こうした被害の相談を受け付けているのが「ポルノ被害と性暴力を考える会(PAPS:ぱっぷす、以下ぱっぷす)」です。ぱっぷすでは「性的搾取を私たちの世代で終止符を打つ」を掲げ、リベンジポルノや盗撮画像のネット上の拡散といったデジタル性暴力や、AV出演強要のような性的搾取にまつわる被害相談と対応に取り組んでいます。
今回はぱっぷすでできる相談や、インターネット上に載ってしまった自身の性的な画像・動画の削除手続きの方法について伺いました。
相談は無料で1人ひとりに合った解決方法を提案
ーーぱっぷすではどのような内容の相談を受けているのでしょうか。
大きく分けて3つあります。
1つ目は「アダルトビデオ出演」に関する被害相談です。18歳以上の方や、地方から上京したばかりで情報格差のある20歳前後の方が言葉巧みに言いくるめられ、望まない形でのビデオ出演に巻き込まれてしまう問題があります。
2つ目は「デジタル性暴力」の相談です。リベンジポルノや児童ポルノ、盗撮に関する相談をお受けしています。最近では自撮りに関する相談もあります。中学生から成人された方まで、断れない関係性を築いたうえで、自身の性的な写真や動画を送るよう脅され送ってしまい、それをもとに脅されてさらに過激な写真や動画を要求されたり、性的な関係を要求されたりということが起きています。
3つ目は「性産業に従事する方の生活支援」です。性産業を辞めたいけれども、性産業に関わるほど生活困窮に陥ってしまう方も少なからずいらっしゃいます。性産業の事業者は若い人ほどなかなか辞めさせないようにする傾向もあり、「親に言うよ」と脅したり、生活と天秤にかけさせて辞めにくくさせるという問題もあります。辞めるための支援や、週5日朝から休み時間を入れると9時間の勤務時間などで体力が持たないために性産業に依存してしまう方に対して、昼職への就労移行支援、昼職で生活していけるためのライフスタイルの提案や施設の紹介などを行っています。
ぱっぷすではお話をお伺いし他の窓口に繋げるだけでなく、事業者への交渉や性的画像の削除依頼など総合的な支援を行っています。
ーーぱっぷすのHPでは、実際に被害に遭い、ぱっぷすへ相談した方の手記が紹介されています。アダルトビデオ出演強要問題は18歳・19歳の女性が巻き込まれやすいというイメージがあったのですが、もっと若年層の女性たちも巻き込まれてしまうケースもあるのでしょうか。
事業者は女性たちが16歳・17歳の頃からリクルーティングを行い、言葉巧みに操り、支配従属の関係を作ったうえで、18歳になったタイミングでアダルトビデオへ出演させるよう狙っています。なので18歳未満なので危険な目に遭わないというわけではないのです。
ーーぱっぷすへはどのように相談すればいいのでしょうか。
まず、お電話(050-3177-5432)・メール(soudan@paps-jp.org)・LINE( @paps )・HP( https://paps.jp )のお問い合わせフォームのいずれかから、ご連絡をいただきます。男性でもご相談いただけて、年齢や国籍も問いませんし、匿名でも大丈夫なのでご安心ください。お電話やメールでのご案内もできますが、可能な限り直接お会いしお話をお伺いしています。ご連絡をいただいた後、面談の日程や場所を相談して決めます。ぱっぷすは寄付金で運営費を賄っているため、相談にはいっさいお金がかかりません。
ーーぱっぷすへの相談は無料でも、弁護士さんへの相談などの場合はお金が必要でしょうか。
弁護士さんへの相談も依頼も、収入状況によって経済的に余裕がない方のための無料で法律相談を受けることができ、依頼するときは弁護士費用の立替を行う国の制度があります。また、費用をかけなくてもできることはありますので、あまり構えずに相談をしていただいて、相談者に一番適した解決方法を具体的に一緒に考えています。郵送費など費用がかかる場合には必ず事前に説明を行いますので、安心してください。
画像・動画の削除要請は流出パターンによって異なる
ーーネット上で画像や動画が拡散されてしまった場合、具体的にどのような過程で削除要請をするのでしょうか。
動画や画像の流出には、大きく分けて4つのパターンがあります。1つ目は性行為中の撮影に応じてしまったケース、2つ目は自撮り写真を送ってしまった、3つ目はSkypeなどのテレビ電話や動画チャットで相手の人とコミュニケーションをしているときに性的な映像を送ってしまうケース。4つ目は盗撮です。
これらのケースの対処法は主に2つあり、既に拡散されてしまった場合は、リベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)に基づく送信防止措置(削除要請)を行います。画像や動画を送ってしまったり撮られてしまったけれども、拡散はされていないというケースであれば、拡散しないよう交渉を行ったり、拡散した場合の警告文を通知したりします。リベンジポルノ防止法に抵触しないケースでも、場合によっては著作権侵害や肖像権侵害で削除要請ができたりもします。
ーー盗撮されてしまった場合は、どのような対処法があるのでしょうか。
今はスマホで簡単に撮影できてしまうため、知らないうちに盗撮されていて、ネット上にアップされてしまうのではと心配しているという相談も来ます。また、アダルトチャットで自分の裸や自慰行為を相手から要求され、その様子が本人に気づかれないように録画されていて、それがアダルト動画投稿サイトにアップロードされていたというケースがあります。それぞれのケースで対処できることがありますので、一緒に解決法を考えていきます。
ーー先ほどリベンジポルノ防止法のお話がありましたが、性的な画像や動画でもリベンジポルノに抵触しないケースはあるのでしょうか。
リベンジポルノ防止法の「私事性的画像記録」には要件があります。「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(いわゆるリベンジポルノ防止法)」の第二条から引用しますと、
一 性交又は性交類似行為に係る人の姿態
二 他人が人の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下この号及び次号において同じ。)を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの
以上の3つが要件です。この要件にあてはまらないとリベンジポルノ防止法には抵触しないのですが、著作権侵害や肖像権侵害などで削除要請を行うケースもあります。ケースバイケースで、どの法律を根拠に削除要請を行うかも含めてご相談いただけたらと思います。
ーー新型コロナウイルスの影響でオンラインでのコミュニケーションが増えましたが、相談の状況に変化はありますか。
通常は月に12~15件の新規相談がお受けできる限界なのですが、4月は24件の新規相談がありました。新型コロナウイルスの影響を受ける前に比べて増えています。ステイホームによって、自宅で過ごす人が多くなり、アダルト動画投稿プラットフォームへの利用者が増えたことも影響しているのではないかと考えています。
最近では居所を失った方や、昼職をやっているけれども、新型コロナウイルスの影響を受けて性産業しか選択がないのではないかと悩んでいる方、性産業に従事しているけれども、外出自粛の影響を受け、生活が苦しくなっている方などに住まいの提供など生活環境の支援などを行っています。
ーー最後に、ネット上の性犯罪被害や性産業にかかわる悩みを抱えている方にメッセージをいただけますか。
性被害の話はなかなか人に相談しにくいと思います。相談に来られる方の中には、動画が拡散されて、ずっと長い時間、一人で悩みを抱えていた方もいらっしゃいました。家族や知り合いには話せなくても、第三者であるぱっぷすだからこそ相談しやすい面もあるのではないでしょうか。
デジタル性暴力は拡散や配信の仕組みの知識など、解決のためには専門性が必要となってきます。ぱっぷすは今までさまざまなデジタル性暴力のご相談をお受けしていますので、ざっくばらんにご相談いただければと思います。
特定非営利活動法人 ポルノ被害と性暴力を考える会(PAPS:ぱっぷす)
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