東京女子医大「看護師は使い捨ての駒か」ボーナスカット、看護師400人が退職希望 医療機関の経営悪化へ政府の対応は

文=宮西瀬名
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GettyImagesより

 東京女子医科大学病院が、経営悪化を理由に看護師職などへの夏季賞与の支給をカット。この決定に不満を覚えた看護師職の約400人が退職の意思を示し、波紋を呼んでいる。

 東京女子医大組合連合が発行している「組合だより」には、団体交渉をした同組合と大学当局の弁護士の生々しいやり取りが掲載された。以下、一部を抜粋する。

組合「中小病院も赤字で苦しんでいる。それでも職員のことを考えて借りてでも何とか一時金を支給している病院もある」
大学当局「女子医大も借りてでも支給せよということですか? そんな不健全な経営は間違っているし、やるつもりもない」

組合「看護師の退職希望者の予想数が400名を超えると聞いたが、そのことに対してどう考えているのか」
大学当局「深刻だとは思うが、足りなければ補充するしかない。現在はベッド稼働率が落ちているので、仮に400名が辞めても何とか回るのでは、最終的にベッド数に見合った看護師を補充すれば良いこと。申し訳ないが、これは完全に経営の問題であり、組合に心配してもらうことではない。 組合員の労働条件の問題ではないので交渉の議題ではない。今後の患者数の今後の患者数の推移を見ながら、足りなければ補充すれば良いことだ」

 大学側弁護士の「足りなければ補充するしかない」という発言に、ネット上では「看護師を使い捨ての駒としてしか見ていないのでは」と批判する動きが強まっている。

 新型コロナウィルスの感染拡大を受け、多くの病院が感染防止のためにベッドの稼働率を低下させている。患者も通院を控えるなどの理由から、医療機関が経営悪化に陥る懸念は当初から指摘されていたことだ。現場で必死に働いている医療従事者たちが、そのしわ寄せを受けている。

支援はクラウドファンディング頼みなのか

 新型コロナウィルスの影響により経営悪化に陥っているのは、東京女子医大病院だけではない。神奈川県病院協会などの調査では、新型コロナウィルスの感染患者を受け入れた約8割の病院が4月の経営状況が赤字になったという。また、千葉日報によると、千葉大学医学部附属病院の横手幸太郎院長はコロナ第2波について「全く油断できない状況」と見据え、病院への支援拡充を訴えている。

 医療機関への支援が急務であることは間違いなく、迅速な対応が求められる。患者や医師、看護師など214人が新型コロナウイルスに感染を出した永寿総合病院を支援するために民間で発足した「永寿総合病院を応援する会」は、クラウドファンディングをスタート。現在、目標金額2000万円を大きく上回る約3800万円の寄付金が集まっている。

 一方で政府の動きは鈍い。2日に開かれた参院厚生労働委員会にて、日本共産党の小池晃書記局長は東京女子医大の件に触れ、「当面の資金ショートやボーナスカットを回避する緊急措置が必要だ」と指摘。だが加藤勝信厚労相は「2次補正予算では貸付原資として1兆2700億円を確保し、しっかり融資が行われるようにする」と、あくまで“融資”の拡充を示唆するにとどまっている。

 さらに、「全ての医療機関の減収を3割と仮定し、そのうち8割を補償すること」などの案を盛り込んだ自民党・医療系議員団本部の第2次補正予算試算案に小池氏が与野党どちらも賛成していると持ちかけるも、加藤厚労相は「まずは2次補正予算としてもらったお金を交付する」と対応しており、進展に至っていないようだ。

 経営面の問題だけではない。日本赤十字社医療センターの調べでは、新型コロナウィルスの患者の対応にあたった医療従事者の3割がうつ状態にあることがわかった。市民の健康を守るべく懸命に働いている医療従事者たちに、十分なケアとサポートが必要だ。

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