セクハラの再生産を懸念、近鉄でも乗り換え案内AIロボ

文=雪代すみれ
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GettyImagesより

 奈良県の近鉄大和西大寺駅に配置されたAIロボットに批判の声が集まっている。

 7月1日、近鉄大和西大寺(やまとさいだいじ)駅に、乗換や駅構内、駅周辺の観光情報などを多言語で案内するAIロボットの「アリサ」と「リン」が導入された。同日の毎日新聞の記事よると、女性人型ロボットの「アリサ」は<「22歳の新入社員」との設定で、「かわいいですね」と褒めると「えへへ」と頰を赤らめる>とのこと。記事には、アリサが男性とまるでカップルのように、一緒に手でハートを作るポーズで写真撮影に応じている様子も掲載された。

 これについてネット上では「ステレオタイプの強化だ」「22歳女性新入社員や受け答えの設定が気持ち悪い」「業務中に知らない人に『かわいいですね』と言われて『えへへ』と頬を赤らめるなんて実際にはあり得ない」など批判の声が噴出している。

 今年3月には高輪ゲートウェイ駅で同様の炎上があったばかり。高輪ゲートウェイ駅に設置された女性AI「さくら」も、好みのタイプを聞かれて<明るくて、話題が豊富な方は素敵だなって思います!>と答えたり、スリーサイズを聞かれ<ごめんなさい、よく聞こえなかったことにしておきますね>と、はぐらかす反応に批判が続出した。(その後回答は修正された)。

高輪ゲートウェイ駅のAI女性駅員は「年齢」「住所」「好きなタイプ」まで答える。「クールジャパン」のジェンダーバイアス

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セクハラの再生産を懸念、近鉄でも乗り換え案内AIロボの画像3 ウェジー 2020.03.17

 どちらも鉄道会社であり、乗り換えや駅構内、駅周辺の案内といった設置目的も同じため、<高輪ゲートウェイが炎上したばかりなのに><他社の炎上事例から学んでいない>という意見も見られる。

 筆者はこのAIアリサの設定を知ったときに、自分がされたセクハラを思い出して暗鬱な気持ちになった。筆者も新入社員のときに、仕事中に容姿を褒められて「えへへ」とは言わなくとも、その場の雰囲気を悪くしないために、眉間に皺を寄せ不快感を示したい気持ちを抑え、笑顔でやり過ごしてしまったことがある。

 容姿への言及に限らず、自分より立場の強い相手からの不快なセクハラ言動は、はっきりNOと言いにくい。AIロボットの「アリサ」に批判の声が集まったのは、「女性新入社員22歳」という設定のAIに対して、女性の多くが経験したことがあるようなセクハラが再生産されているためではないか。

 過去にはAmazonで開発されたAI採用ツールが女性の応募者を差別していたり、カーネギーメロン大学の研究によって、<求人の自動広告が女性ユーザーに対して男性ユーザーより有意に給料の安い職を提示している>ことが明らかになった。私たちの生活の中にあるデータの偏りやステレオタイプ、バイアスをAIが学習し、再生産してしまうことがある。AIが差別を再生産しないためにも、人間社会にある偏見やステレオタイプを私たちが議論していく必要があるのではないか。

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