『特捜9』で「セクハラ被害者の支援をする女性の痴漢でっちあげ」、物議醸す内容

文=wezzy編集部
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『特捜9 Season3』(テレビ朝日系)番組ホームページより

 井ノ原快彦が主演するドラマ『特捜9 Season3』(テレビ朝日系)が「痴漢冤罪」に関する描写で物議を醸している。

 問題となった7月8日放送の第8話「Wの殺人」のあらすじはこうだ。ドラマはまず、マンションの一室で桜川梨花(小林涼子)が首を吊って亡くなっているのが見つかるシーンからはじまる。

 梨花は学生時代に見知らぬ男から性的暴行を受けたことをきっかけに、ハラスメントに苦しむ女性を支援するNPO団体で活動し、殺害直前はNPOの役員を務めていた人物だ。

 しかし、彼女のやり方には問題が多かった。梨花はNPOに相談を寄せた女性の被害を告発するため、相談者の勤める旅行会社にスパイとして入社し、加害者である社長を自分から誘惑してハラスメントを引き出そうとしたのである。

 梨花は約10年前にも、痴漢に苦しむ友人を助けるため自ら電車内で男に近づき、1日で3人も逮捕に導いて新聞記事になったことがあった。

 梨花を殺したのは、そのとき逮捕され、最後まで無実を訴えるも有罪となったことに絶望して自殺した男の父親だ。偶然、梨花と会った父親は<本当は冤罪だったんじゃないのか?>と息子の痴漢事件の真相を問う。対する彼女の返答は自己正当化に終始しており、父親は彼女の殺害を決意する。

<仮にそうだったとしてなにが悪いんですか。私は痴漢で苦しむ人を救うためにやったんです。そのことで冤罪が生まれていたとしても痴漢という犯罪がなくなるのであればそれでいい。間違ったことをしたと思いません>

 フィクションではあるものの、セクハラ被害者支援に関わる女性スタッフを偏見に満ちた目で描き、「痴漢被害をでっちあげる女性」とした描写に、ネット上では「なぜこんな、すでにネット上に蔓延する偏見をさらに広めるようなドラマに?」と疑問や批判の声をあげる視聴者が多く出ている。

米倉涼子主演『リーガルV』にも同様の描写

 「痴漢冤罪」を物語の“ネタ”にした例は他にもある。2018年10月クールに放送した米倉涼子主演ドラマ『リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~』(テレビ朝日系)だ。

 『リーガルV』は、米倉演じる主人公の弁護士が、無罪を勝ち取るため困難な案件に立ち向かうストーリー。その第一話は「痴漢冤罪」がテーマで、痴漢被害をでっちあげる女性への嫌悪感を強調した描写があった。

 痴漢に関する問題をフィクションで取り上げる際、「痴漢そのもの」よりも「痴漢冤罪」がネタとなるケースは少なくない。確かに、ある日突然無実の罪をでっちあげられて家族や仕事などすべてを失ってしまうことは恐怖以外の何物でもない。毎日使う交通機関が舞台であり、いつ誰がそうした状況に追い込まれてもおかしくないことから、痴漢冤罪は物語に組み込むことが容易な、分かりやすい題材なのだろう。

 しかし、そもそも痴漢冤罪のような問題が起こる背景には、日本の通勤電車で痴漢被害を受け泣き寝入りせざるを得ない女性が後を絶たないこと、つまり痴漢加害者が厳しく取り締まられていないという状況がある。痴漢の意図的なでっちあげと痴漢被害と、その数を比較した時、両者は同じだけ起きていると言えるのだろうか?

 痴漢冤罪が起きてしまった場合も、悪意によるでっちあげと言えるケースばかりではない。捜査の過程で犯人ではない男性を誤認逮捕してしまった場合、批判すべきは痴漢被害を受けた女性ではなく、ずさんな捜査で間違った人物を逮捕し有罪にしてしまった警察や検察であるはずだが、女性への攻撃的な文言がネット上には蔓延っている。

 そうした現状を把握していれば、仮に“痴漢冤罪”というテーマをドラマで扱うとしても、『特捜9』や『リーガルV』のような描き方にはならないのではないか。偏見に満ちた描き方は、痴漢被害そのものを軽視する傾向につながり、さらには、被害を訴えても金目当ての行為と疑われることを恐れて泣き寝入りする被害者も生み出しかねない。

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