東京入管で女性収容者への暴行・ハラスメント コロナ禍で炙り出された被害

文=織田朝日
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Getty Imagesより

 入管収容施設における、長期収容や、収容者への暴力・ハラスメントは、多くのメディアに取り上げられ、社会問題となって久しい。しかし、状況は一向に改善しない。

 6月15日には、入管長期収容の解消策を検討してきた専門部会の提言が発表されたが、強制退去に応じない外国人への刑事罰導入など厳格化が目立ち、人権状況が改善される見通しは立っていない。

 現場では現在進行形でひどい人権侵害が起きている。入管施設の中ではなにが起きているのか? 収容者の支援を行っている織田朝日氏によるレポートをお届けする。

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女性収容者にだけ仮放免が出ない

 2018年2月28日、元入国管理局長の和田雅樹氏が「送還の見込みがなくても原則、送還が可能となるまで収容を継続する」ことを各地方入管に指示してから、非正規滞在者の外国人に対する長期収容が増えていった。東京オリンピックの決定をきっかけとした入管の、外国人追い出し作戦とも言える。

 帰国のできる人は、やむなく帰国した。しかし帰れば生命の危険が待っている難民や、日本に家族がいるなど、事情のある人は帰ることができず、いつ出られるか分からなくても解放されるまで何年でも待つしかなかった。

 ところが、今年になって思いもよらない転機が被収容者たちに訪れる。新型コロナウイルスだ。まさに三密状態にある収容施設では、今のままなら被収容者どころか現場の職員たちにも感染の危険が及ぶため、ついに入管も被収容者たちを解放することに踏み出した。4月からの仮放免が相次ぎ、多くの人々が外に出られることになったのである。

デモを起こした女性収容者に男性職員が暴行

 しかし、東京入管にいる女性被収容者たちの仮放免はなぜか、なかなか認められない。帰ることができず何年も収容されている女性収容者たちは強い不満を募らせた。

 4月25日、女性たちはフリータイムの時間が終わっても部屋に帰らず、「私たちを自由にして」と書いたTシャツやプラカードを掲げ、ボスと話し合いをしたいと職員に訴えた。女性たちは、決して騒いだり暴れたりすることなく、静かにボスとの話し合いの機会を待ったのだが、暴力的に排除されてしまった。ヘルメットをかぶり、盾を持った男性職員たちが女性ブロックに乗り込んできたのである。女性たちは、複数の男性職員によって首を絞められたり、床に叩きつけられたり、力ずくで部屋に押し込められるなどの暴行を受け、泣き叫んだ。

 デモの途中、コンゴの女性は血圧が上がって苦しくなり、一度部屋に戻り、服を脱いで下着姿になっていた。その時、部屋に男性職員が乗り込んできた。女性は恐ろしくなり、部屋にあるポットのお湯を床にかけ「近づかないで!」と叫んだ。それでも聞いてくれる様子はなかったので、近づいたら自分でお湯をかぶると言ったが、男性職員たちに取り押さえられ、下着姿のまま懲罰房に連行された。部屋に戻れと言っているくせに、部屋にいるコンゴの女性をわざわざ引きずり出し懲罰房まで連れて行くのはまったく不可解といえる。彼女は難民であるために日本に帰れず2年以上も収容されているが、男性たちに下着姿を見られたうえに、後から女性職員に「ビデオであなたの裸を皆(職員)で見た。セクシーだったよ」と言われ、何重にも屈辱を受けた。彼女は未だ思い出すたびにパニックを起こすという。

 ネパールの女性も酷い暴行を受けた。デモに最後まで残ったとして懲罰房に連行されたとき、男性職員に上半身と足を捕まれ、そのまま部屋にぶん投げられたのだ。

 懲罰房は、窓のない3畳くらいの何もない部屋。時計がないので時間もわからない。天井には監視カメラが設置されている。トイレは床に穴が開いているだけの状態で、自分で流せるレバーはない。懲罰房のトイレは職員にお願いをしないと流してもらえない。前に入れられた人の排泄した尿が流れていないまま残っていて、激しい悪臭が漂っていた。気が狂いそうになったネパール人女性は「出して! もう逆らいません、二度とやりませんから出してください!」と必死に嘆願し、15分ほどで出してもらえたという。

 ネパール人女性はその日以来、激しいフラッシュバックに襲われるようになり、手首を切る自傷行為を2回もしている。朝になるとなぜこんなことしてしまったのだろうと後悔するらしいが、何の道具で傷つけたのかはまったく覚えていないと語る。

 他にも懲罰房に入れられた女性は、食事時間になっても職員に食事をお願いするまで持ってきてもらえないという嫌がらせも受けたという。

仮放免をめぐる不可解な決定

 デモ以降、仮放免が出たのにも関わらず止められてしまった人が3人ほどいる。彼女らはケガをさせられる前に部屋に戻ったのでそれほど抵抗の意思を見せたわけでもない。にも関わらず、仮放免を却下するのではなく「いったん止める」と言われるのは異例中の異例だ。担当弁護士たちには「違反行為があったから」とだけ告げられている。

 その後、弁護士たちはいつ解放してくれるのかと何度も催促したが待たされ続け、すでに2カ月以上も宙に浮いた状態になっている。3人とも2年以上の収容で、1人は難民申請者。2人には日本人の配偶者もいる。やっと解放されると喜んだ矢先に、仮放免を止められることは、まさに天国から地獄へ突き落されると言ってもいいだろう。弁護士たちは「これは不当である!」と憤りを見せる。

 3人のうちの1人、中国籍の女性はこのように語る。

「私たちは決して暴れたわけではありません。仮放免に不公平さを感じ、なぜこんなに収容が長いのか聞きたかっただけです。仮放免を却下されたのなら、また申し込むことはできます。でも、ただ止められただけなら、私たちはいったい何をしたらいいのでしょうか。担当(職員)さんは、待てと言います。だけどいつまで? 1年? 死んでしまいます」

 また、南アジアから来た難民申請者の女性もこのように話していた。

「私の夫も仮放免者です。しかし、娘は日本生まれで中学生になりました。国の情勢は悪いし、娘はもう日本以外では暮らせません。私は日本に来て20年以上、まじめに生きてきました。やっと解放されると思ったのに止められ、娘は泣き叫んでばかり。頭がおかしくなってしまった。仮放免の基準が分かりません、それが辛い。私たち3人がストップされてから、仮放免が決まって外に出られた人が何人かいます。なぜ私たちだけ?」

 また、収容4年以上になるインドネシア女性は、仮放免が決まったものの、保証金100万円を請求され、払うことができず仮放免を却下されてしまった。

 現在、収容施設に残されている女性たちは約50名と聞く。解放の基準は非常にバラバラだ。本人たちも苦しいが、彼女らを待っている家族たちの苦しみもまた大きい。女性たちを同じ人間と見ていない入管のやり方に、怒りを禁じ得ない。

(織田朝日)

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