K-POPシーンを牽引するRed Velvet、アイリーン&スルギの新たなガールクラッシュ・プロジェクト

文=まつもとたくお
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Red Velvet公式Twitterより

 K-POPシーンを牽引する女性グループとして常に注目を集めるRed Velvet。その中でも人気の高いメンバー、アイリーンとスルギがタッグを組んで2020年7月6日、ミニアルバム『MONSTER』をリリースした。

 高水準のサウンドクオリティーとパフォーマンスを誇るグループから派生したユニットだけに、プレッシャーも大きかったのだろう。本作は当初6月15日の発売を予定していたものの、「音楽的な完成度を高めるために、追加の作業が必要だと判断」(所属事務所・SMエンターテインメントの公式コメントより)してリリース日をずらしたという経緯がある。

 アイリーンは、7日6日付の「MYDAILY」のインタビューでこのように語っている。

<何から何まで、すべてに気を遣いました。レコーディング、振り付け、ミュージックビデオはもちろん、外的な部分まで長く待ってくれたファンの方々のために何をすることができるだろうかと、いろいろと考えました>

 とは言っても、Red Velvetを結成する前から付き合いのある2人である。お互いをよく知る間柄ゆえに作業はスムーズにいったようだ。スルギも<ケミ(ケミストリーの略。相性の良さを指す)においては誰よりも自信がありました><性格は似ていませんが、お互いへの配慮と理解で意見を調整し、よく合わせていくことができました>と、同じインタビューで答えている。

 このコメントにある「性格が似ていない」という点も、アイリーン&スルギの大きな魅力のひとつだ。6月上旬にバラエティー番組に出演した彼女たちは、互いの長所と短所について、<アイリーンは勝負欲が本当に強い。でも耳が良くない>(スルギ)、<スルギも歌詞を正確にわかってない。間違った歌詞もそれらしく歌う>(アイリーン)と冗談めかして語っていたが、『MONSTER』はそんな2人の違いを強調したという印象がかなり強い。

 その最たるものがリードトラックの「Monster」だろう。ダブステップというRed Velvetではあまり使わないジャンルを採用、8人のダンサーを従えたパフォーマンスはどことなくミュージカル風で、イントロから「いつもとは様子が違う」という雰囲気が漂う。

 ところが主役の2人は“いつものアイリーンとスルギ”なのだ。ときに無愛想と誤解されてしまうクールビューティー系のアイリーンと、おっとりしていて優しいイメージだが、ステージに立つと驚くほどアグレッシブな踊りを披露するスルギ。2人の個性は、普段のRed Velvetとは異なるサウンドメイクの中に置くと、その違いが際立ってくる。ここがニューユニットのいちばん面白いところではないだろうか。

 だが、一味違うアプローチを見せる楽曲はこれのみで、他はRed Velvetのレパートリーに加えてもおかしくないようなサウンドが並ぶ。「Diamond」はジャジーなギターのカッティングで引っぱるR&Bナンバーで、「自分が望むままに進もう」と優しく歌う。何よりもスルギのクリーミーなボイスが耳を引く。

 「Feel Good」は収録曲の中で最も地味かもしれない。しかしながら、余白の美を感じさせるトラックと複雑な心情をつづった歌詞、そしてアイリーンの表情豊かなボーカルという組み合わせの妙で一気に聴かせる。サウンドの方向性にフレッシュさはないものの、隙のない音作りはさすが一流のアーティストである。

 前述のインタビューでスルギが<歌い方を合わせてみた>と語っているが、R&Bナンバー「Jelly」はその成果がいちばん表れた作品だと思う。AメロとBメロでは2人の声質の違いを生かしつつも、サビではまるで1人で多重録音をしたかのように美しいハーモニーを響かせる。

 このように様々なスタイルを堪能できるミニアルバム『MONSTER』だが、一通り聴いてもアイリーンとスルギのイメージは変わらないというのが興味深い。彼女たちはどんな曲であっても果敢に挑んでベストの姿を見せる。だからといって自分のキャラクターを意識的に変えることはしない。実はこれはRed Velvetでのエンターテインメントに対する向き合い方とまったく同じなのだ。

 アイリーンとスルギは(もちろん他のメンバーも)、このやり方に相当な自信を持っているのだろう。新しいユニットを組んでも同じことをやれば成功するはず、きっとそう思っているに違いない。どうやら彼女たちの狙いは間違いなかったようで、本作はリリース直後に韓国の主要配信サイトでトップに輝き、世界45地域のiTunesトップアルバムチャートで1位になるなど、好調なセールスを記録している。

 今後、Red Velvetからはいろいろなプロジェクトが誕生すると思われるが、彼女たちの美意識はどんな形になっても変わらないはずだ。アイリーン&スルギの華々しい活躍を見ていると、そんな予想が「確信」となってくる。自信にあふれ、迷いのない2人はK-POPシーンのみならず、“ガールクラッシュ”というムーブメントも先導していくことだろう。

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