大田区3歳女児死亡事件と10年前の二児放置死事件。「鬼母」を責めるまま変わらなかった社会

文=中崎亜衣
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GettyImagesより

 今月7日、自宅に3歳の長女を8日間に渡って放置し死亡させたとして、24歳の母親が保護責任者遺棄致死容疑で逮捕された。元居酒屋店員で母親の梯沙希容疑者は、6月5日から13日までの8日間、東京都大田区の自宅マンションに長女を残して交際相手のいる鹿児島に旅行。13日に母親が自宅に戻ると、長女は飢餓と脱水症状で心肺停止しており、搬送先の病院で死亡が確認された。

 長女と2人で生活していたという梯容疑者は、当初は保育園を利用し乳幼児健診も受診していた。Instagramにも母娘のツーショット写真が多く投稿され、娘をかわいがっている様子が見受けられたという。しかし、昨年3月に保育園を退所してからは、長女を自宅に置いたまま居酒屋に出勤するようになり、3歳児健診も未受診だった。パチンコや飲み会で家を空けることもあったという。

 梯容疑者は今年5月にも長女を4日間自宅に残して鹿児島を訪れていた。また、この母親自身、子ども時代に虐待を受け、児童相談所に保護された経験があるという。

 幼い子どもの命が奪われてしまった非常に痛ましいこの事件。梯容疑者を「鬼母」だと糾弾する記事も多く出ている。

 だが、幼い子どもが母親のネグレクトで亡くなるという壮絶な事件は、今からちょうど10年前の2010年にも置きていた。大阪二児置き去り死事件だ。

 大阪二児置き去り死事件では、風俗店勤務の当時23歳の母親が、会社の寮である大阪府大阪市のマンションの一室に、3歳の長女と1歳9カ月の長男を50日に渡って放置、死亡させたとして逮捕された。母親には2013年3月、最高裁で懲役30年が言い渡されている。
 
 結婚していた頃、母親は子どもたちをかわいがり、布おむつを使うなどこだわりを持って熱心に育児を行っていたという。しかし自身の浮気が原因で離婚し、ひとりで子どもたちを育てるようになると、社会との接点は途切れた。養育費の取り決めもなく、周囲からのサポートも得られなかった母親は、自らSOSを発信することもできないまま、事件は起きた。児相に電話したこともあったが、うまくいかなかったという。

 この母親もまた、かつてネグレクトを受け、解離・離人感の症状があったが、治療や支援を受ける機会にも恵まれなかった。そして大阪二児置き去り死事件の発覚当時、マスメディアやネット上は加害者である母親を「鬼母」だと断罪した。

 この10年で私たちの社会は良くも悪くもさほど変化していないということなのだろうか。7月9日放送の『とくダネ!』(フジテレビ系)では、コメンテーターの古市憲寿氏が、大田区の事件で母親を「鬼母」呼ばわりする声への疑問を呈していた。

<母親が責められるのはわかるんですけど、その前に父親がって思う>
<離婚しているとはいえ、父親は父親であって、父親が母親に対してDVをしていたって報道もありますけど、そもそもの原因で考えると男にも原因があるのではと思う>
<一番かわいそうなのは子どもですが、母親だけを責めていいのか>

 こうした事件の背景にあるのはいつだって、“母親の身勝手さ”だけではない。父親の存在、日本における離婚制度の問題、ハイリスク家庭の育児へのサポート不備、そして生活費を稼ぎながら育児することが困難な社会の状況……広範にわたる課題をどう解消していくかまで議論しなければ、何も変わってはいかないだろう。

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