エコバッグよりレジ袋の方がエコ? プラスチック業界に広がる波紋

文=吉野かぁこ
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GettyImagesより

「レジ袋は有料ですが、お付けしますか?」

 今、スーパーやコンビニで何か買うたびに生じるこのやり取りを、「面倒だ……」と感じている人も少なくないのではないだろうか。

 海洋プラスチックゴミ問題や、地球温暖化などへの対策として、7月1日からプラスチック製買物袋(通称:レジ袋)の有料化がスタートした。始まってまだ1カ月と経たないが、「店員がレジにかかりっきりになった」「会話が増え、飛沫感染のリスクが上がる」「レジ袋のかわりにゴミ袋を買う人が増えるので、プラスチック削減にはならない」など、否定的な意見が多く上がっている。

 レジ袋削減の取り組みは、本当に環境問題の解決になるのだろうか?

 プラスチック業界の老舗月刊誌『プラスチックス』編集長の増山由美子さんは、この取り組みに懐疑的だ。「プラスチックは撫でてさすって工芸品のように愛でる」という、プラスチック愛にあふれた増山さんに話を聞いた。

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増山由美子 月刊誌『プラスチックス』編集長
東京生まれの埼玉育ち。幼稚園教諭を経て工業系出版社へ転職。ロボットや半導体専門誌を経験した後、2010年に日本プラスチック工業連盟誌『プラスチックス』編集長へ。プラスチック占いの結果は、「要領が良くいつも肌がつるつる」なテフロン。

適切に処理すればプラスチックは悪者にならない

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1950年創刊。現場技術者や研究者に向けて、プラスチック産業の最新情報を提供する月刊『プラスチックス』(日本工業出版)

増山「今話題になっているトピックは、『海洋プラスチックゴミを減らせ』だと思います。確かに、環境省の平成29年度報告書によると海ごみの調査でも、木材21%、ガラス・陶器3%、プラスチック22%などとなっています。プラスチックが含まれる漁具29%などを含めると、プラスチックが一番多いという結果となりました。

 しかし製品としてはペットボトルや発泡スチロール、網などの漁具が主なもので、レジ袋は統計に現れないほどわずかです。また海岸への漂着物に限定された調査だったので、海底に沈んでいる重い金属などは発見されていない可能性があります。

 そもそも海洋プラスチックゴミは、人間が不法投棄さえしなければ発生しない問題なので、プラスチックが悪者にされてしまうのは、悲しいことです。半分冗談ですが、業界内では『小学校の道徳教育に、ごみの捨て方を加えてくれたら、プラスチックの環境問題はほぼなくなるのではないか』という声もあるくらいです」

 しかしプラスチックには「燃やすと有毒」というイメージもある。廃棄の段階で環境への影響はないのだろうか。

増山「90年代に起こったダイオキシン問題をきっかけに、ゴミ処理場における焼却炉の性能は格段に上がりました。焼却温度をダイオキシン類が分解される800℃以上に向上させたため、現在ダイオキシンはほとんど発生していません。環境にはほぼ問題がないといっていいレベルです。

 廃プラスチックのリサイクル率も2018年に84%に達し、そのうち23%がフリース素材やボールペンの本体などの生活必需品に生まれ変わっています。また、焼却で発生する熱は、発電などに活用されています」

 そこまで環境に配慮し、無駄のない再生ルートが確立されているのであれば、経済産業省がこのタイミングでレジ袋有料化に乗り出した理由がますますわからなくなる。プラスチック業界の“中の人”として、増山さんはどのようにとらえているのだろうか。

増山「プラスチックの削減は、直接的かつ効果的な環境保全には、決してつながらないと考えています。レジ袋は、“日常的でキャッチーなアイコン”として槍玉に挙げられたに過ぎません。生活者としては、レジ袋の削減に躍起になるよりも、あくまで環境問題を考えるきっかけとして捉えたほうがよいのではないでしょうか」

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