高校普通科に学際融合学科・地域探究学科を追加? なにもかもがめちゃくちゃな日本の教育政策

文=畠山勝太
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GettyImagesより

 2022年の春から高校普通科を再編し、普通科に加えて学際融合学科・地域探究学科を設ける案がまとまったという思わず腰を抜かしそうな報道が出ました(読売新聞「【独自】高校普通科、3科に再編…「学際融合」「地域探究」の2学科新設容認」)。

 なぜ私が腰を抜かしそうになったのか、理由が二つあります。一つは、教育政策の優先順位を大きく間違えていること。もう一つは、ジェンダーメインストリーミングという政策立案上の基本が考慮された形跡が全く見られないためです。

高校に入学した子供の学習意欲が落ちるという課題

 読売新聞を読むと、SDGsなどの現代的な課題に対応するために「学際融合学科」、地域社会の課題に対応するために「地域探究学科」が設置されることが読み取れます。前者は大学や国際機関との連携、後者は地元自治体や企業との連携が想定されているようです。

 この記事だけだと、なぜこのような普通科の再編に取り組まなければならないのか見えづらいですが、文部科学大臣の記者会見でその理由が分かります(動画の10分辺りから)。

 大臣の答弁をまとめると、21世紀出生児縦断調査のデータを見ると、高校に入学すると子供達の学習意欲がガタ落ちしてしまうという問題があるため、これに対応する必要がある。この問題に対処するべく、子供達の多様な学習ニーズに応えるために、普通科の再編に取り組むのだ、ということのようです。確かに、日本の高校生の学習意欲が低いことは、国際比較からも指摘されていますし、このようにデータに基づいて教育課題を把握することは素晴らしいことです。

2022年というタイミングの問題

 新型コロナにより、世界中の80%近くの子供が学校に行けなくなるなど、教育分野もこの感染症の影響を強く受けてしまっています。この影響を緩和すべく9月入学の議論が出てきたことは、記憶に新しいところだと思います(先の大臣会見を見ると、あれだけ批判されていたにもかかわらず、いまだに議論の俎上にあることに驚かれるとは思いますが……)。

 この新型コロナの影響による9月入学の案は、入試を迎える代と幼児教育の代のどちらが優先されるべきかという選択を迫られる議論であることを解説したことがありますが(現代ビジネス「大迷走する「9月入学」議論、幼児教育政策から見た「3つの悪影響」」)、9月入学案は結局のところ先送りとなり、幼児教育の世代が優先された形となりました。これ自体は正しい判断だったと考えます。

 入試に関して言えば、今年入学試験を迎える学年が一番大きな影響を受けるのでしょうが、今もなお平常通りに授業が出来ていないわけで、向こう数年の間に受験を迎える学年もこの影響を受け続けることになるでしょう。9月入学の議論で優先されなかったからこそ、政治的にも、教育現場的にも、この問題への対応に全力でリソースが割かれることが最優先課題となります。

 しかし、この状況で再来年から高校普通科再編を実施しようとしたら、教育現場はどうなるでしょうか? 新型コロナの影響を受けた学年がキャッチアップできるように注がれなければならないリソースのいくぶんかが再編対応に取られてしまうことは必定です。仮に、この高校普通科再編か望ましいものであっても、少なくとも2022年というタイミングは望ましいものではないと言えます。

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